新しい武器が必要だと、彼女が言った意味を、彼は次の日に知ることになります。
サーカスで使っている玉乗りのボールは、分厚いゴムでできていました。
それはちょっとやそっとでは破けることのない丈夫なゴムでしたが、
成長した彼の棘や爪は、それらを容易に引き裂いてしまうのです。
敗れてしまったボールの残骸と共に、彼はしばらくぼうっと床に座り込んでいました。
彼はサーカス以外を知りません。
玉乗り以外を知りません。
彼はずっとそれでいいと思っていました。
でもきっと、もうこのままではいけないのです。
急に、自分の体がずっしりと重たくなったような気がしました。
翼を持つ赤い彼は、たった今はじめて、自分がなにものなのかを考えようとしていました。