これは、ひっかけ問題だと言っていい。
私も危うく引っかかるところだった。
英語字幕を付けた人も、ばっちり引っかかっている。
だけど、これ、私がこのひっかけ問題にギリギリ引っかからなかったのは・・・依頼者さんの情報が事前に手元にあったから、ですね。
どうもありがとう。
こういうことなんです。
Flucht・・・Die Flucht ohne Ende
ドイツ系作家のヨーゼフ・ロートの「果てしなき逃走」。タイトルは知ってるけど、読んだことない。
基本的に戦争モノ嫌い。。。だけど、ドイツ文学としては結構有名な作品です。
このタイトルからも分かるように、Fluchtは、逃走、逃亡という意味があります。
このタイタニックの状況です。普通に聞けば、そりゃ、Fluchtの意味は疑問の余地なく「逃げる」、「避難する」と解釈したくなる。
実際、英語字幕でもescapeと訳されている。
それで、私も途中までは疑問なく、Fluchtは逃走、逃げるという解釈で翻訳を進めていた。
だが、なんかあれ?と気にかかったのは、依頼者さんの事前情報にあったこと。
タイタニックで避難する際に、富豪の男性の中には、紳士的な行動をして、最後まで船に残った人たちがいる、という話。
実際、エマさんの雇い主の大富豪、グッゲンハイム氏は、紳士として最後まで船に残り、一緒に沈んでしまったらしいです。
この文に出てくるアスター氏とは、アストリアホテルで有名な富豪。
そして、彼もこの沈没事故で犠牲になっている。
英語の字幕では、「アスター氏が部屋から逃げていくところを私たちは見ました」となっているが・・・
逃げてないんじゃね?という疑問が、無意識の中でくすぶっていたんです。
実際、アスターさんは、避難ボートに乗れてなかったんです。
妊娠中の奥さんを避難ボートに乗せた。「妻の体調が気になるので同行したい」と申し出たが「女性が先だから」と断られてしまったんですね。
なんか違う・・・ここは違う。
そういう違和感。
船から避難しなかった人に対して、この言葉を使うか?
「アスター氏が部屋からでて来くるところでした」という表現なら、理解できるんですけど。
この部分、何度も繰り返し、繰り返し繰り返し繰り返し・・・・
1日暇をみてはずっと聞いてた。
そして、ある時、スコンと何かが外れるんです。ガコンっと何かが崩れるんです。カチっと何かが切り替わるんです。
うぉ・・・うぉーたー!!(ヘレン・ケラー)
という脳内革命、破壊、瞬時に再構築される瞬間です!!
Zimmer Flucht(部屋から逃走)と二語じゃなくて、もしかして。。。
Zimmerfluchtって単語一語なんじゃ?と気づいたんです。
そもそもで、Fluchtが「逃走・避難」という意味だとしたら、文法的にもおかしい。
どんなに繰り返し聞いても、Zimmer Flucht von Mr.Astorと聞こえる。
もし、部屋から逃げるという意味だったら、Flucht von Mr.Astors Zimmer(アスター氏の部屋から逃走)となるか、
Zimmer(部屋)の前にaus(英語で言ったらfromとか)など「~から外へ」といった前置詞が必要なるはず。
話し言葉で文法通りじゃないにしても、前置詞使わないなんて考えにくい。
大慌てで、Zimmerfluchtをネットで検索。
そして、、、えぇ~!!と驚いたんです。
顔ニヤニヤしながら「マジっすか!」ってつぶやくんです。
いや~、あの瞬間は思い返しても、スカッとする、気持ちの良さでしたねぇ。
こんな瞬間味わわせてくれてありがとう!
ふふ。
一緒にスカッとしてほしいところだけど、つ・づ・く!