相手方から提示された契約書、そのまま署名しても大丈夫?【後編】不利な条項の修正方法と交渉のポイントを行政書士が解説

相手方から提示された契約書、そのまま署名しても大丈夫?【後編】不利な条項の修正方法と交渉のポイントを行政書士が解説

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法律・税務・士業全般
取引先から提示された契約書を確認したところ、自社に不利と思われる条項が見つかった。

そんなとき、どのように対応すればよいのでしょうか。

「相手方が用意した契約書だから、修正をお願いするのは失礼ではないか」

「修正を求めたことで、取引を断られるのではないか」

「不利な条項だと思うけれど、どのように修正すればよいのか分からない」

このようなお悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、契約書は、当事者双方が合意する取引条件を明確にするためのものです。

相手方が作成した契約書であっても、内容について修正を求めることは可能です。

もちろん、修正を求めたからといって、相手方が必ず応じなければならないわけではありません。

重要なのは、修正したい理由を整理し、双方が納得できる条件を検討することです。

前編では、相手方から提示された契約書で確認したい7つの条項を解説しました。

後編では、不利な条項を見つけた場合の修正方法や、契約条件の調整にあたって注意したいポイントについて解説します。


1.相手方が作成した契約書でも修正を求められる?


結論からいえば、相手方から提示された契約書であっても、契約締結前であれば、原則として修正を提案することができます。

契約は、当事者間の合意によって成立するものです。

したがって、相手方が提示した契約書の内容を、そのまま受け入れなければならないわけではありません。

例えば、次のような条件について、修正を求めることが考えられます。

業務範囲を明確にしたい

追加業務の報酬を定めたい

損害賠償額に上限を設けたい

中途解約時の精算方法を定めたい

著作権の帰属を変更したい

ただし、相手方にも契約条件について希望があるため、すべての修正が認められるとは限りません。

そのため、修正を求める際には、なぜその修正が必要なのかを説明できるようにしておくことが重要です。


2.不利な条項はどのように修正する?具体例を紹介


ここでは、業務委託契約を例に、修正前と修正後の条項を比較してみましょう。

なお、以下は条項の考え方を示す例であり、すべての契約にそのまま使用できるものではありません。

① 業務範囲が広すぎる場合


【修正前】

「乙は、甲の指示に従い、本件業務及びこれに付随する一切の業務を行うものとする。」

この条項では、受託者が対応すべき業務の範囲が不明確です。

【修正後の例】

「乙が実施する業務の内容及び範囲は、別紙仕様書に定めるものとする。甲が当該範囲を超える業務を依頼する場合、甲乙は、業務内容、報酬及び納期について事前に協議し、合意した場合に限り、乙は当該業務を実施するものとする。」

このように修正することで、契約に含まれる業務と追加業務を区別しやすくなります。

重要なのは、単に「追加業務は別途協議する」と定めるだけでなく、合意が成立するまで追加業務を実施する義務が生じないことを明確にすることです。

② 追加費用の取扱いが不明確な場合


【修正前】

「乙は、甲が必要と認める修正について、無償で対応するものとする。」

この条項では、発注者が必要と判断した修正について、受託者が無制限に無償対応を求められる可能性があります。

【修正後の例】

「乙は、成果物が合意された仕様に適合しない場合、当該不適合が乙の責めに帰すべき事由によるときは、契約に定める範囲で無償修補を行うものとする。仕様の追加又は変更に該当する作業については、甲乙が事前に合意した条件に従い、別途有償で対応するものとする。」

このように、契約上対応すべき不適合の修補と、仕様変更による追加作業を区別することが考えられます。

なお、請負契約では民法上の契約不適合責任との整合性にも注意が必要です。

③ 損害賠償責任が広すぎる場合


【修正前】

「乙は、本契約に関連して甲に生じた一切の損害を賠償するものとする。」

この条項では、損害賠償額の上限がありません。

【修正後の例】

「甲及び乙は、本契約に関連して自己の責めに帰すべき事由により相手方に損害を与えた場合、相手方に現実に生じた通常かつ直接の損害に限り、賠償する責任を負う。損害賠償額の累計上限は、本契約に基づく委託料の総額とする。ただし、損害を与えた当事者の故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。」

このように、賠償対象となる損害の範囲と、賠償額の上限を設ける方法があります。

ただし、損害賠償額の上限をいくらにするかは、契約金額や取引上のリスクなどによって異なります。

また、故意・重過失の場合の取扱いについても、当事者の立場や契約内容を踏まえて検討する必要があります。

なお、上記の「通常かつ直接の損害」という表現だけでは、逸失利益などの取扱いが明確にならない場合があります。必要に応じて、対象外とする損害を具体的に定めることも考えられます。

④ 著作権の帰属が一方的な場合


【修正前】

「本件業務により生じた成果物に関する一切の著作権は、甲に帰属する。」

この条項では、成果物に含まれる既存のプログラムや素材などについても、権利の取扱いが不明確になる場合があります。

【修正後の例】

「本件業務により新たに作成された成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む。)は、委託料の完済をもって乙から甲に移転する。ただし、乙が従前から保有する著作物及び第三者が権利を有する著作物については、この限りでない。」

このように、著作権を移転する対象と、移転しない対象を区別することが考えられます。

ただし、既存著作物について発注者が成果物を利用するために必要な利用許諾や、第三者の権利に関する条件も別途整理する必要があります。

また、著作者人格権は譲渡できないため、不行使に関する取扱いも検討事項になります。

⑤ 中途解約の条件が一方的な場合


【修正前】

「甲は、いつでも本契約を解除することができる。」

この条項では、受託者が業務に着手した後に契約が終了した場合の精算方法が明確ではありません。

【修正後の例】

「甲又は乙は、相手方に対し、30日前までに書面又は内容を保存できる電磁的記録により通知することで、本契約を将来に向かって解約することができる。この場合、甲は、解約日までに乙が実施した業務に相当する報酬及び甲が事前に承諾した支出済み費用を支払うものとする。」

このように、解約通知の期限と精算方法を明確にすることが考えられます。

ただし、契約類型によっては民法上の解除・解約に関する規定が適用されるため、個別の取引に応じた調整が必要です。


3.契約書の修正を求めるときに注意したい5つのポイント


契約書の修正を求める際には、単に自社に有利な条件を主張するだけでは、合意に至らないこともあります。

そこで、次の5つのポイントを意識することが重要です。
契約書修正の5つのポイント.png

① 修正理由を明確にする


例えば、損害賠償額の上限を設けたい場合、単に「上限を設けてほしい」と伝えるだけでは、相手方が納得しないこともあります。

その場合は、契約報酬と想定される損害賠償リスクのバランスなどを説明することが考えられます。

② 修正の優先順位を決める


契約書のすべての条項を自社に有利な内容に変更することは、現実的ではない場合があります。

そこで、次のように整理することが重要です。

必ず修正したい条項

できれば修正したい条項

相手方の条件を受け入れられる条項

特に、損害賠償責任や業務範囲など、事業上のリスクに大きく影響する条項は、優先的に検討する必要があります。

③ 具体的な代替案を提示する


「この条項は受け入れられません」と伝えるだけでは、相手方もどのように修正すればよいか分からない場合があります。

そこで、具体的な修正案を提示することが有効です。

例えば、損害賠償額に上限がない場合には、契約報酬を基準とした上限額を提案する方法があります。

④ 取引全体のバランスを考える


契約条件は、個々の条項だけで判断できるものではありません。

例えば、受託者が広い責任を負う契約であっても、そのリスクを踏まえた報酬が設定されている場合があります。

反対に、報酬が少額であるにもかかわらず、責任が過大に設定されている場合には、条件の見直しを検討する必要があります。

契約書は、一つの条項だけでなく、取引全体のバランスを考えて作成することが重要です。

⑤ 合意した内容を契約書に反映する


修正についてメールや打ち合わせで合意した場合でも、最終的な契約書に反映されていなければ、後から内容について争いになる可能性があります。

そのため、修正後の契約書を確認し、当事者間で合意した内容が正確に反映されているか確認することが重要です。


4.相手方が契約書の修正に応じない場合はどうする?


相手方に修正を求めても、必ず応じてもらえるとは限りません。

特に、大企業が使用する標準契約書や、多数の取引先に共通して適用する契約書では、個別の修正に応じない場合もあります。

そのような場合には、次のような対応が考えられます。

① 修正が必要な理由を改めて説明する


相手方が修正の必要性を理解していない場合もあります。

② 別の条件でリスクを調整する


例えば、損害賠償条項の修正が難しい場合、業務範囲や報酬、保険などの条件を含めて検討することが考えられます。

③ 別紙や個別契約で条件を定める


基本契約書の修正が難しい場合でも、個別契約書や仕様書などで具体的な条件を定められることがあります。

ただし、基本契約と個別契約の優先順位を明確にしておく必要があります。

④ 契約締結そのものを再検討する


重大なリスクが残る場合には、取引を開始するかどうかを慎重に判断する必要があります。

なお、取引条件の押し付けが独占禁止法、取適法、フリーランス法などの問題となる場合もあるため、適用法令の確認も重要です。


5.契約書の修正は行政書士に依頼できる?


行政書士は、行政書士法に基づき、権利義務に関する書類である契約書の作成を業務として取り扱うことができます。

そのため、契約締結前の段階で、取引条件を整理し、それを契約書に反映するための文案を作成することが可能です。

例えば、次のような業務が考えられます。

取引内容のヒアリング

契約条件の整理

契約条項の作成・修正

別紙仕様書などの作成

契約書全体の整合性の確認

ただし、行政書士が取り扱える業務には法律上の範囲があります。

既に紛争が発生している案件や、相手方との法律上の紛争について代理交渉する業務などは、弁護士への相談が必要となる場合があります。

契約書作成を行政書士に依頼する場合には、契約締結前の書類作成と、紛争対応を区別することが重要です。


6.よくある質問


Q1.相手方から提示された契約書を修正してもらうことは失礼ではありませんか?


契約書の修正を求めること自体が、直ちに失礼に当たるわけではありません。

契約書は双方の合意によって成立するものであり、内容について確認や修正を求めることは通常の取引実務でも行われています。

ただし、修正理由を丁寧に説明することが重要です。

Q2.契約書の修正を求めたことで、取引を断られることはありますか?


可能性はあります。

相手方にも取引条件について希望があるため、修正内容によっては合意に至らない場合があります。

そのため、修正の優先順位を決め、双方が受け入れられる条件を検討することが重要です。

Q3.契約書の一部だけを修正することはできますか?


可能です。

契約書全体を作り直す必要はなく、特定の条項について修正する方法もあります。

ただし、一部の条項を修正した結果、他の条項との間に矛盾が生じることもあるため、契約書全体の整合性を確認する必要があります。

Q4.契約書に署名した後でも修正できますか?


当事者双方が合意すれば、契約締結後でも契約内容を変更することは可能です。

例えば、変更契約書や覚書を作成する方法があります。

ただし、一方の当事者が希望するだけで、当然に契約内容を変更できるわけではありません。

Q5.契約書の修正を依頼する場合、何を準備すればよいですか?


一般的には、次の資料があると取引条件を整理しやすくなります。

相手方から提示された契約書

見積書・発注書

業務内容が分かる資料

仕様書などの関連資料

修正したい条件や希望内容

また、どのような点に不安があるのかを整理しておくと、契約書の作成・修正を進めやすくなります。


7.まとめ|不利な条項は、そのまま受け入れる必要はない


相手方から提示された契約書に不利な条項があった場合でも、そのまま受け入れなければならないわけではありません。

契約締結前であれば、修正を提案し、当事者間で条件を調整することが可能です。

ただし、すべての修正が認められるとは限りません。

そのため、次の点を意識することが重要です。

修正が必要な理由を明確にする

修正の優先順位を決める

具体的な代替案を提示する

取引全体のバランスを考える

合意した内容を契約書に反映する

契約書は、相手方が用意したものをそのまま署名するための書類ではありません。

当事者双方が取引条件を理解し、合意した内容を明確にするためのものです。

契約締結後に「こんな条件だとは思わなかった」とならないよう、署名前に内容を確認することが大切です。


契約書の作成・修正はファビスト行政書士事務所へ


ファビスト行政書士事務所では、個人事業主・フリーランス・中小企業の皆様を対象に、実際の取引内容に合わせた契約書の作成・修正を承っています。

契約書を新たに作成したい方や、取引条件を整理したうえで契約書の内容を見直したい方は、お気軽にご相談ください。

ファビスト行政書士事務所

※本記事は一般的な法制度・契約実務の解説です。個別の契約条項の効力や対応方法は、具体的な事情によって異なります。
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