相手方から提示された契約書、そのまま署名しても大丈夫?【前編】不利な条項の見分け方を行政書士が解説

相手方から提示された契約書、そのまま署名しても大丈夫?【前編】不利な条項の見分け方を行政書士が解説

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法律・税務・士業全般
取引先から契約書を提示されたとき、内容を十分に確認せず、そのまま署名していませんか?

「相手方が用意した契約書だから問題ないだろう」

「一般的な契約書のようなので、特に修正する必要はなさそう」

「契約書の内容について、どこを確認すればよいのか分からない」

このように考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、相手方から提示された契約書には、相手方の希望する取引条件が反映されていることがあります。

もちろん、相手方が作成した契約書だからといって、必ずしも不公平な内容になっているわけではありません。

重要なのは、契約書の内容が、自社の立場や実際の取引条件に合っているかを確認することです。

今回は、契約書作成を取り扱う行政書士の立場から、相手方から提示された契約書を確認する際のポイントについて、前編・後編に分けて解説します。

前編では、特に注意したい7つの条項を取り上げます。


1.相手方が作成した契約書は、そのまま署名してもよい?


結論からいえば、相手方が作成した契約書であっても、内容に問題がなければ、そのまま締結することは可能です。

契約書をどちらが作成したかによって、当然に有利・不利が決まるわけではありません。

ただし、契約書を作成する側は、自社の業務内容や取引上のリスクを踏まえて、条件を設定することができます。

例えば、業務委託契約であれば、発注者側が作成する契約書には、次のような条件が盛り込まれることがあります。

発注者が業務内容の変更を求めやすい

受託者の損害賠償責任が広く定められている

成果物の著作権が発注者に帰属する

発注者が契約を中途解約しやすい

受託者の追加報酬について明確な定めがない

これらの条件が、すべて不当というわけではありません。

取引内容や報酬額、当事者間の役割によっては、合理的な場合もあります。

しかし、内容を十分に理解せずに契約を締結すると、後から想定していなかった義務や責任を負う可能性があります。

そのため、契約書を提示された場合は、署名する前に内容を確認することが重要です。


2.契約書に署名する前に確認したい7つの条項


相手方から提示された契約書では、特に次の7つの事項を確認しておきたいところです。
契約確認事項チェックリスト.png
以下、それぞれ具体的に解説します。


3.業務範囲が広すぎないか


業務委託契約で最初に確認したいのが、業務範囲です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「乙は、甲の指示に従い、本件業務及びこれに付随する一切の業務を行うものとする。」

この条項では、「付随する一切の業務」がどこまで含まれるのかが明確ではありません。

受託者は、当初予定していなかった作業についても、契約上の義務として対応を求められる可能性があります。

例えば、Webサイト制作を受託した場合、当初の制作業務だけでなく、公開後の修正や更新作業まで含まれるのかが問題になることがあります。

このような場合は、業務範囲を仕様書や見積書などで明確にし、追加業務の取扱いについても定めておくことが考えられます。

確認したいポイント

契約に含まれる業務は何か

契約に含まれない業務は何か

追加業務を依頼された場合の手続き

追加報酬が発生する条件

特に受託者側では、業務範囲が無制限に広がらないように注意が必要です。


4.報酬や追加費用の条件が不明確ではないか


次に確認したいのが、報酬に関する条項です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「乙は、甲から合理的な範囲で業務内容の変更を求められた場合、これに対応するものとする。」

この条項だけでは、業務内容の変更に伴う追加報酬について明確ではありません。

受託者としては、当初の報酬に含まれない作業を求められる可能性があります。

そこで、追加業務が発生する場合には、事前に業務内容、報酬及び納期について合意する仕組みを設けることが考えられます。

また、通常の報酬についても、次の事項を確認する必要があります。

報酬額は税込・税別のどちらか

支払期限はいつか

支払条件は何か

振込手数料は誰が負担するか

追加費用はどのように精算するか

なお、取引によっては、フリーランス法や中小受託取引適正化法など、取引条件の明示や支払期日等に関する法令が適用される場合があります。

契約書の内容だけでなく、適用法令との整合性にも注意が必要です。


5.納期・検収の条件が一方的ではないか


Webサイト制作やシステム開発など、成果物を納品する契約では、納期や検収に関する条項が重要です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「乙は、甲が成果物を承認するまで、無償で修正を行うものとする。」

この条項では、修正の回数や範囲、検収の期限が明確ではありません。

そのため、発注者から修正を繰り返し求められ、検収が長期間終了しない可能性があります。

受託者側では、次のような事項を確認しておきたいところです。

検収期間は何営業日か

不合格の場合の通知方法

無償修正の対象となる不適合の範囲

修正後の再検収方法

検収期間内に通知がない場合の取扱い

例えば、一定期間内に不合格の通知がなかった場合、検収に合格したものとみなす条項を設ける方法もあります。

ただし、みなし検収条項の有無だけでなく、契約不適合責任との関係も整理する必要があります。

検収が完了した後も、契約上の責任が一切なくなるとは限らないためです。


6.損害賠償責任が広すぎないか


契約書を確認する際、特に注意したいのが損害賠償条項です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「乙は、本契約に関連して甲に損害を与えた場合、その一切の損害を賠償するものとする。」

この条項では、損害賠償額の上限が定められていません。

そのため、取引報酬を超える損害賠償を請求される可能性があります。

例えば、報酬30万円のシステム開発業務であっても、不具合によって発注者に大きな損害が発生した場合、報酬額を超える賠償が問題となることがあります。

もちろん、実際にどの範囲の損害賠償責任が認められるかは、民法、契約内容、因果関係などによって判断されます。

しかし、契約書に責任制限がない場合、受託者としては賠償額の最大値を予測しにくくなります。

そこで、次のような事項を検討することが重要です。

賠償対象となる損害の範囲

損害賠償額の上限

逸失利益や間接損害の取扱い

故意・重過失がある場合の取扱い

秘密保持義務違反などの例外

なお、事業者間契約では責任制限条項が原則として認められる一方、条項の内容や具体的事情によっては、有効性や適用範囲が問題となることがあります。

損害賠償条項は、契約金額だけでなく、実際に想定されるリスクを踏まえて確認する必要があります。


7.著作権の帰属が適切か


Webサイト制作、デザイン制作、システム開発などでは、成果物の著作権に関する条項も重要です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「本件業務により生じた成果物に関する一切の著作権は、甲に帰属する。」

このような条項がある場合、受託者は、制作した成果物について、契約で定められた範囲の権利を発注者に帰属させることになります。

ただし、著作権法第27条及び第28条の権利は、譲渡契約で特掲されていない場合、譲渡人に留保されたものと推定されます。

また、著作者人格権は譲渡できないため、その不行使に関する取扱いも検討する必要があります。

受託者側では、特に次の点を確認しておきたいところです。

著作権を譲渡するのか、利用を許諾するのか

著作権を譲渡する場合、その時期はいつか

既存のプログラムや素材の権利はどう扱うか

受託者が実績紹介などに利用できるか

著作者人格権の取扱い

発注者側でも、成果物を予定どおり利用・改変できる権利が確保されているか確認する必要があります。

著作権は、制作費を支払っただけで当然に移転するものではありません。


8.中途解約の条件が一方的ではないか


契約書には、契約期間中の中途解約について定められていることがあります。

例えば、次のような条項です。

【条項例】

「甲は、理由のいかんを問わず、いつでも本契約を解除することができる。」

この条項では、発注者が一方的に契約を終了できる内容になっています。

受託者が既に業務に着手している場合、報酬や支出済み費用の精算について問題が生じる可能性があります。

そのため、次の事項を確認することが重要です。

中途解約できる条件

解約通知の期限

着手済み業務の報酬

支出済み費用の精算

制作途中の成果物の取扱い

なお、請負契約や委任・準委任契約などでは、契約類型に応じて民法上の解除・解約に関する規定が適用される場合があります。

契約条項と法律上の規定の関係も確認する必要があります。


9.契約期間・自動更新の条件が適切か


継続的な業務委託契約では、契約期間や自動更新条項にも注意が必要です。

例えば、次のような条項があったとします。

【条項例】

「本契約の期間は1年間とし、期間満了の3か月前までに甲乙いずれからも書面による解約の申し出がない場合、さらに1年間更新する。」

この場合、契約期間の満了直前になって契約を終了したいと考えても、更新拒絶の通知期限を過ぎている可能性があります。

また、自動更新条項があるからといって、契約期間中の中途解約が当然に認められるわけではありません。

そこで、次の事項を確認しておきたいところです。

契約期間

自動更新の有無

更新後の契約期間

更新拒絶の通知期限

中途解約の条件

継続的な契約では、契約を開始する条件だけでなく、終了する条件も重要です。


10.まとめ|相手方が作成した契約書こそ、内容の確認が重要


相手方から提示された契約書は、必ずしも不利な内容になっているわけではありません。

しかし、相手方の希望する条件が反映されている可能性があるため、そのまま署名する前に内容を確認することが重要です。

特に、次の7つの事項は確認しておきたいところです。

業務範囲

報酬・追加費用

納期・検収

損害賠償

著作権

中途解約

契約期間・自動更新

契約書は、署名して終わりではありません。

実際の取引で問題が生じたときに、当事者の権利や義務を判断する重要な資料になります。

後編では、相手方から提示された契約書に不利な条項があった場合、どのように修正を求めればよいのか、具体的な条項例を交えて解説します。


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※本記事は一般的な法制度・契約実務の解説です。個別の契約条項の効力や対応方法は、具体的な事情によって異なります。
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