業務委託契約書は発注者側と受注者側でどう違う?立場別に確認したい7つの条項【前編】|業務範囲・報酬・検収・仕様変更を行政書士が解説

業務委託契約書は発注者側と受注者側でどう違う?立場別に確認したい7つの条項【前編】|業務範囲・報酬・検収・仕様変更を行政書士が解説

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法律・税務・士業全般
業務委託契約書を作成する際、「発注者側と受注者側で契約書の内容は変わるのだろうか?」と疑問に思ったことはありませんか?

インターネット上には、さまざまな業務委託契約書の雛形が公開されています。

しかし、同じ業務委託契約であっても、発注者と受注者では、契約書で重視すべき事項が異なります。

例えば、次のような違いがあります。

発注者は、依頼した業務を確実に実施してもらいたい

受注者は、契約にない業務まで無償で求められることを防ぎたい

発注者は、成果物の品質を十分に確認したい

受注者は、検収が長引いて報酬の支払いが遅れることを防ぎたい

発注者は、必要に応じて仕様変更を依頼したい

受注者は、仕様変更による追加報酬や納期の調整を明確にしたい

このように、同じ条項であっても、当事者の立場によって重視するポイントは異なります。

そのため、業務委託契約書を作成する際には、一般的な雛形をそのまま利用するのではなく、自社の立場や取引内容に合わせて契約条件を検討することが重要です。

本記事では、契約書作成に強い行政書士が、発注者側・受注者側それぞれの立場から、業務委託契約書で確認したい7つの条項を解説します。

前編では、次の4つを取り上げます。

業務範囲に関する条項

報酬・支払条件に関する条項

検収に関する条項

仕様変更・追加業務に関する条項


1.業務範囲に関する条項|どこまでの業務を依頼・受託するのか


業務委託契約書において、最初に明確にしておきたいのが業務範囲です。

業務範囲が曖昧な場合、発注者と受注者の間で「どこまで対応することになっていたのか」という認識の違いが生じる可能性があります。

発注者側が確認したいポイント


発注者としては、必要な業務を確実に実施してもらえるよう、委託する業務の内容を明確にすることが重要です。

例えば、Webサイト制作を委託する場合には、次のような事項を検討する必要があります。

制作するページ数

デザインの内容

スマートフォン対応の有無

問い合わせフォームの設置

原稿や画像の作成・提供

公開作業の有無

公開後の修正対応

単に「Webサイト制作業務一式」と記載するだけでは、具体的な業務内容が明確にならない場合があります。

そのため、発注者としては、仕様書や業務内容一覧などを利用し、必要な業務が契約の対象に含まれているかを確認することが重要です。

受注者側が確認したいポイント


一方、受注者としては、契約で合意していない業務まで無制限に求められることを防ぐ必要があります。

例えば、Webサイト制作を受託したところ、発注者から次のような依頼を受ける場合があります。

「ページを追加してほしい」

「写真の撮影もお願いしたい」

「公開後の更新作業も対応してほしい」

これらが当初の契約に含まれていない場合、追加業務に当たる可能性があります。

しかし、業務範囲が曖昧だと、発注者から「当然含まれていると思っていた」と主張されることがあります。

そのため、受注者としては、業務の対象だけでなく、対象外となる業務についても明確にしておくことが重要です。

実務上のポイント


業務範囲については、契約書本文だけですべてを定めるのではなく、仕様書や個別契約などを利用する方法もあります。

また、業務内容を変更する場合の手続についても、あらかじめ定めておくことが重要です。

発注者は「必要な業務が含まれているか」、受注者は「業務範囲が無制限に広がらないか」という視点で確認しましょう。


2.報酬・支払条件に関する条項|いつ、いくら支払うのか


報酬・支払条件は、業務委託契約において特に重要な事項の一つです。

報酬額だけでなく、支払時期や支払条件が曖昧な場合、取引開始後にトラブルが生じる可能性があります。

発注者側が確認したいポイント


発注者としては、どのような業務に対して、いくら支払うのかを明確にすることが重要です。

例えば、次のような事項を確認する必要があります。

報酬額

消費税の取扱い

報酬に含まれる業務の範囲

支払時期

支払方法

追加費用が発生する条件

交通費や外注費などの経費負担

特に注意したいのが、追加費用の発生条件です。

例えば、月額30万円の業務委託契約を締結した場合でも、契約書に経費負担や追加業務の取扱いが定められていなければ、想定外の費用が発生する可能性があります。

そのため、発注者としては、報酬額だけでなく、追加費用が発生する場合の条件や承認手続についても確認することが重要です。

受注者側が確認したいポイント


一方、受注者としては、業務を実施したにもかかわらず、報酬の支払いを受けられない事態を防ぐことが重要です。

例えば、次のような事項を確認する必要があります。

報酬の支払期限

支払条件

請求書の提出方法

振込手数料の負担

支払遅延時の取扱い

追加業務に対する報酬

契約終了時の未払い報酬の精算

特に、報酬の支払いを検収完了と結び付ける場合には注意が必要です。

検収期間や検収手続が明確でなければ、受注者が想定した時期に報酬を受け取れない可能性があります。

フリーランス法・取適法にも注意


業務委託契約では、契約内容によってフリーランス法や中小受託取引適正化法(取適法)などが適用される場合があります。

これらの法律が適用される取引では、報酬・代金の支払期日などについて法令上の規制が設けられています。

例えば、一定の取引では、原則として給付を受領した日などを起算点として、60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定める必要があります。

契約書で検収完了後の支払いを定めたとしても、法令上の支払期限を自由に延長できるわけではありません。

適用の有無は取引内容や当事者の要件などによって異なるため、個別の確認が必要です。

実務上のポイント


報酬条項では、単に金額を定めるだけでなく、支払条件や追加費用の発生条件まで整理することが重要です。

発注者は「費用の範囲と発生条件」、受注者は「報酬を確実に受け取るための条件」を重視しましょう。


3.検収に関する条項|成果物の品質確認と報酬支払いの関係


システム開発やWebサイト制作など、成果物の納品を伴う業務委託契約では、検収条項が重要になります。

検収とは、納品された成果物が契約で定めた仕様や基準に適合しているかを確認する手続です。

検収条項が曖昧な場合、成果物の合否や修正対応、報酬の支払いを巡ってトラブルになる可能性があります。

発注者側が確認したいポイント


発注者としては、納品された成果物が契約内容に適合しているかを十分に確認できる仕組みを設けることが重要です。

例えば、次のような事項を検討する必要があります。

検収の対象

検収基準

検収期間

不合格の場合の通知方法

不具合があった場合の修正対応

再検収の方法


例えば、システム開発契約では、納品されたシステムが仕様書に定めた機能を備えているかを確認する必要があります。

そのため、発注者としては、検収基準を明確にし、必要な確認を行える期間を確保することが重要です。

受注者側が確認したいポイント


一方、受注者としては、検収が長期間終了しないことによる不利益を防ぐ必要があります。

例えば、成果物を納品したにもかかわらず、発注者から合否の連絡がなく、検収が完了しない場合です。

報酬の支払いが検収完了を条件としている契約では、検収が長引くことで、報酬の支払いにも影響が生じる可能性があります。

そのため、受注者としては、次のような事項を確認することが重要です。

検収期間が明確になっているか

不合格の理由を具体的に通知する仕組みがあるか

検収基準が客観的に定められているか

一定期間内に通知がない場合のみなし検収を設けるか

修正対応の範囲が明確になっているか

みなし検収条項の重要性


みなし検収とは、一定期間内に発注者から不合格の通知がない場合に、検収に合格したものとみなす仕組みです。

例えば、納品後14日以内に具体的な不適合の通知がない場合には、検収に合格したものとみなす方法が考えられます。

ただし、みなし検収条項を設ければ、すべての不具合に関する責任がなくなるわけではありません。

検収後の契約不適合責任などについては、別途整理する必要があります。

また、法令上の支払期限が適用される取引では、みなし検収や検収期間の定めによって支払期限を延長できるわけではありません。

実務上のポイント


検収条項では、品質確認と取引の円滑な進行の両方を考慮することが重要です。

発注者は「十分な品質確認ができるか」、受注者は「検収が不当に長期化しないか」という視点で確認しましょう。


4.仕様変更・追加業務に関する条項|変更への柔軟性と追加報酬


業務委託契約では、契約締結後に業務内容の変更や追加業務が必要になることがあります。

特に、システム開発やWebサイト制作などでは、業務の進行中に仕様変更が発生することも珍しくありません。

しかし、仕様変更や追加業務の取扱いが曖昧な場合、追加報酬や納期を巡ってトラブルになる可能性があります。

発注者側が確認したいポイント


発注者としては、事業上の必要性に応じて、業務内容の変更を依頼できる仕組みを設けておくことが重要です。

例えば、Webサイト制作の途中で、問い合わせフォームの機能を追加したい場合です。

このような場合、仕様変更の手続が明確になっていなければ、変更に対応してもらえるかどうかや、追加費用がいくらになるのかが分からないことがあります。

そのため、発注者としては、次のような事項を確認することが重要です。

仕様変更を依頼する方法

受注者による見積りの提出

追加費用の承認手続

納期への影響

変更内容の確定方法

特に、追加費用については、発注者の事前承諾を必要とする仕組みを設けることが考えられます。

受注者側が確認したいポイント


一方、受注者としては、契約で予定していなかった業務を無償で求められることを防ぐ必要があります。

例えば、発注者から次のような依頼を受ける場合です。

「少しだけ機能を追加してほしい」

「デザインを全面的に変更してほしい」

「当初の予定よりページ数を増やしてほしい」

これらが当初の契約内容に含まれていない場合、追加業務として報酬や納期を調整する必要が生じることがあります。

そのため、受注者としては、次のような事項を明確にしておくことが重要です。

当初の業務範囲

追加業務の判断基準

追加報酬の算定方法

仕様変更に伴う納期の変更

変更内容の合意方法

仕様変更と不具合修正は区別する

特に注意したいのが、仕様変更と不具合修正の違いです。

例えば、契約で定めた機能が正常に動作しない場合には、契約内容に適合させるための修正が問題になります。

一方、契約締結後に新しい機能を追加する場合には、仕様変更や追加業務として取り扱うことが考えられます。

両者を区別しておかなければ、追加報酬の対象となるかどうかを巡って争いになる可能性があります。

実務上のポイント


仕様変更・追加業務条項では、変更の依頼方法、承認手続、追加報酬、納期変更などを明確にすることが重要です。

発注者は「必要な変更を適切な条件で依頼できるか」、受注者は「追加業務に対する報酬や納期を確保できるか」という視点で確認しましょう。


まとめ|同じ条項でも発注者と受注者では重視するポイントが異なる


前編では、業務委託契約書について、次の4つの条項を発注者側・受注者側それぞれの立場から解説しました。

業務範囲に関する条項

報酬・支払条件に関する条項

検収に関する条項

仕様変更・追加業務に関する条項

発注者としては、必要な業務を適切な条件で実施してもらい、成果物の品質や費用を管理することが重要です。

一方、受注者としては、業務範囲の無制限な拡大を防ぎ、報酬の支払いや追加業務の取扱いを明確にすることが重要です。

このように、同じ業務委託契約であっても、契約当事者の立場によって重視する事項は異なります。

そのため、一般的な雛形をそのまま使用するのではなく、自社の立場や取引内容に合わせて契約条件を検討することが重要です。

契約書は、単に一般的な条項を並べるのではなく、実際の取引における役割やリスクに合わせて作成することが重要です。

後編では、著作権、損害賠償、中途解約について、発注者側・受注者側それぞれの立場から解説します。


業務委託契約書の作成は行政書士へ


ファビスト行政書士事務所では、個人事業主・フリーランス・中小企業の皆様を対象に、各種ビジネス契約書の作成をサポートしています。

「発注者側の立場で業務委託契約書を作成したい」

「受注者側にとって不利な条件を整理したい」

「報酬や検収、追加業務の条件を明確にしたい」

「一般的な雛形ではなく、自社の取引に合った契約書を作成したい」

このようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

当事務所では、ヒアリングを通じて、事業内容や取引条件を確認しながら契約書を作成しています。

また、完成までの修正回数を制限せず、原則として追加料金のない明確な料金体系で対応しています。

契約書作成に強い行政書士が、発注者・受注者それぞれの立場や取引内容に合わせた、実務で機能する契約書の作成をサポートいたします。

※本記事は一般的な契約実務について解説したものです。個別の契約における法的な取扱いは、契約の法的性質、具体的な事実関係、契約内容、適用法令等によって異なります。

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