「取引先から取引基本契約書を渡されたけれど、そのまま締結しても大丈夫?」
「継続的に商品を仕入れることになったけれど、契約書には何を記載すればいい?」
「発注書を送った時点で、契約は成立するの?」
このようなお悩みはありませんか?
企業間で継続的な取引を行う場合、取引基本契約書を締結することがあります。
取引基本契約書とは、商品の売買や製造委託など、継続的な取引に共通する条件をあらかじめ定めておくための契約書です。
製造業、卸売業、商社、小売業など、さまざまな業種で利用されています。
しかし、取引基本契約書では、発注方法、商品の仕様、納品、検収、代金の支払条件、契約不適合責任など、多くの事項を取り決める必要があります。
これらの条件が曖昧なまま取引を開始すると、次のようなトラブルにつながる可能性があります。
発注したつもりが、相手方は受注していなかった
発注書と基本契約書の内容が異なっていた
納品された商品の仕様が想定と違っていた
発注後のキャンセルを巡ってトラブルになった
こうしたトラブルを防ぐためには、実際の取引内容に合わせて、取引基本契約書の条件を明確にしておくことが重要です。
今回は、契約書作成に強い行政書士が、取引基本契約書で確認しておきたい10のポイントのうち、前編として「基本契約と個別契約の関係」「発注・受注の方法」「商品の仕様・品質基準」の3つを解説します。
1.基本契約と個別契約の関係を明確にする
取引基本契約書で最初に確認したいのが、基本契約と個別契約の関係です。
継続的な売買取引では、取引基本契約書で共通条件を定め、実際の商品の発注ごとに個別契約を成立させる方法がよく利用されます。
例えば、次のような仕組みです。
基本契約で定める事項
発注・受注の方法
納品・検査の方法
代金の支払条件
契約不適合責任
損害賠償
秘密保持
契約解除
個別契約で定める事項
商品名・品番
数量
単価
納期
納品場所
その他個別の取引条件
このように役割を分けることで、発注のたびにすべての契約条件を協議する必要がなくなります。
基本契約と個別契約の内容が異なる場合は?
例えば、基本契約では納品後7日以内に検査すると定めているのに、個別の発注書では納品後14日以内と記載されている場合です。
どちらの条件が優先されるのか明確でなければ、トラブルになる可能性があります。
そのため、契約書では、基本契約と個別契約の優先関係を明確にしておくことが重要です。
例えば、原則として基本契約を優先し、当事者が個別契約で明示的に異なる合意をした場合には、その合意を優先する方法などが考えられます。
実務上のポイント
基本契約と個別契約をどのように組み合わせるのかを明確にすることが、継続取引の基本です。
特に、発注書や注文請書などの書類を使用する場合は、それぞれの書類と取引基本契約書との関係も整理しておきましょう。
2.発注・受注の方法と個別契約の成立時期を定める
取引基本契約書では、商品の発注方法や個別契約が成立するタイミングも重要です。
例えば、次のようなトラブルが考えられます。
「発注書を送ったのに、相手方は受注していないと言っている」
「メールで注文した商品について、納期の認識が異なっている」
「発注後にキャンセルしたところ、費用を請求された」
こうしたトラブルを防ぐためには、発注・受注のルールを明確にしておく必要があります。
契約書では、次の事項を定めることが考えられます。
発注方法
発注書の記載事項
受注の承諾方法
個別契約の成立時期
発注内容の変更方法
発注後のキャンセル条件
受注拒否ができる条件
発注書を送れば契約は成立する?
発注書を送付しただけで、必ず個別契約が成立するとは限りません。
契約の成立時期は、当事者間の合意内容や取引の状況によって異なります。
例えば、次のような方法が考えられます。
売主が注文請書を発行した時点で成立する
売主が電子メールで承諾した時点で成立する
一定期間内に拒絶の通知がない場合に成立する旨を合意する
ただし、最後の方法については、当事者間の合意内容や取引実態を踏まえ、適切に設計する必要があります。
発注後の変更・キャンセルにも注意
継続取引では、発注後に数量や納期を変更したい場合があります。
しかし、すでに商品の製造や調達が開始されている場合、変更やキャンセルによって売主に費用が発生する可能性があります。
そのため、発注後の変更やキャンセルについても、事前承諾の要否や費用負担を定めておくことが考えられます。
実務上のポイント
**「いつ、どのような方法で個別契約が成立するのか」**を明確にすることが重要です。
また、発注書、注文請書、電子メールなど、実際に使用する発注方法に合わせて契約条項を作成しましょう。
3.商品・製品の仕様と品質基準を明確にする
継続的な売買取引では、納品する商品の仕様や品質基準も重要です。
例えば、次のような事項です。
商品名・品番
サイズ・重量・容量
材質・成分
色・形状
製品規格
包装・梱包方法
品質基準
検査基準
適用される法令・規格
これらが曖昧なままでは、納品された商品が買主の想定と異なる場合があります。
仕様書や製品規格書を活用する
商品の仕様をすべて取引基本契約書の本文に記載する必要はありません。
詳細な仕様については、仕様書、製品規格書、品質基準書などの別紙や個別契約で定める方法が考えられます。
その際には、次の事項も明確にしておくことが重要です。
仕様書の確定方法
仕様変更の手続
仕様変更に伴う価格改定
仕様変更が納期に与える影響
仕様書と契約書の優先関係
仕様変更による追加費用にも注意
例えば、買主が発注後に商品の材質やサイズの変更を求めた場合です。
変更によって原材料費や製造費が増加する可能性があります。
このような場合に、売主が追加費用を請求できるのか、納期を変更できるのかを明確にしておくことが重要です。
実務上のポイント
**「どのような商品を納品すれば契約上の義務を果たしたことになるのか」**を明確にしておくことが重要です。
特に、製造業や部品供給取引などでは、品質基準を具体的に定めておくことがトラブル防止につながります。
前編のまとめ|契約の基本構造と発注条件を明確にする
今回は、取引基本契約書で確認したい10のポイントのうち、最初の3つを解説しました。
1.基本契約と個別契約の関係
共通条件と個別条件の優先関係を明確にする。
2.発注・受注の方法
個別契約の成立時期と発注手続を定める。
3.商品・製品の仕様
仕様書や品質基準を明確にする。
これらは、継続的な取引を円滑に進めるための基本となる事項です。
特に、発注方法や商品の仕様が曖昧な場合、取引開始後に双方の認識が食い違う可能性があります。
大切なのは、実際の取引の流れに合わせて契約条件を定めることです。
次回の中編では、次の4つのポイントを解説します。
納期・納品方法・危険負担
検査・検収
代金・支払条件
契約不適合責任
取引基本契約書の作成は行政書士へ
「継続取引を始めるため、取引基本契約書を作成したい」
「取引先から提示された契約書の内容を確認したい」
「発注方法や商品の仕様を明確にしたい」
このようなお悩みはありませんか?
取引基本契約書は、商品の種類、発注方法、納品・検収の流れ、支払条件などによって、必要な条項や適切な契約条件が異なります。
当事務所では、契約書作成に強い行政書士が、取引内容やご希望を丁寧にヒアリングし、実際のビジネスに合わせた取引基本契約書を作成いたします。
売主・買主のいずれの立場からのご依頼にも対応しています。
取引基本契約書の作成をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、取引基本契約に関する一般的な法的事項を解説するものです。具体的な取扱いは、契約内容や適用法令等によって異なります。