「取引先から想定外の損害賠償を請求されたら?」
「取引基本契約が終了した場合、発注済みの商品はどうなる?」
「取引先に開示した営業情報を保護したい」
このようなお悩みはありませんか?
取引基本契約書では、発注方法や納品・検収、代金の支払条件だけでなく、損害賠償、契約期間、契約解除、秘密保持などについても明確にしておく必要があります。
特に、継続的な取引では、取引先との関係が長期間にわたることがあります。
そのため、契約違反が発生した場合や、取引関係を終了する場合のルールをあらかじめ定めておくことが重要です。
例えば、次のようなトラブルが考えられます。
納期遅延によって多額の損害賠償を請求された
基本契約の終了後も個別の発注が残っていた
契約解除の条件について認識が食い違った
取引先に開示した営業情報が第三者に漏えいした
こうしたトラブルを防ぐためには、契約違反や契約終了時のリスクを想定し、契約書で明確にしておくことが重要です。
前編では基本契約と個別契約の関係、発注方法、商品の仕様について、中編では納品・検収・支払条件・契約不適合責任について解説しました。
今回は後編として、残りの3つのポイントを解説します。
8.損害賠償の範囲と責任制限を定める
取引基本契約書では、契約違反によって損害が発生した場合の責任も重要です。
例えば、次のようなケースです。
「納期遅延によって買主の販売機会が失われた」
「不良品によって買主の製造ラインが停止した」
「商品の欠陥によって第三者から損害賠償を請求された」
このような場合、損害賠償の範囲についてトラブルになる可能性があります。
損害賠償の上限を定める
契約書では、損害賠償責任に上限を設けることがあります。
例えば、次のような方法です。
問題となった個別契約の代金を上限とする
一定期間の取引代金を上限とする
あらかじめ定めた金額を上限とする
損害賠償の上限を定めることで、当事者が負担するリスクを一定の範囲で予測しやすくなります。
ただし、すべての損害について一律に低い上限を設けることが適切とは限りません。
逸失利益や間接損害の取扱いにも注意
損害賠償条項では、逸失利益や間接損害などの取扱いを定めることもあります。
例えば、納期遅延によって買主が販売機会を失った場合、その損失をどこまで賠償対象とするのかが問題となることがあります。
ただし、「間接損害」などの表現は、その意味や範囲が必ずしも一義的ではありません。
そのため、賠償対象から除外する損害については、可能な限り明確に定めることが重要です。
実務上のポイント
損害賠償条項では、次の事項を検討しましょう。
賠償対象となる損害の範囲
逸失利益や間接損害の取扱い
損害賠償の上限
故意・重過失の場合の取扱い
第三者への損害に関する責任
契約不適合責任との関係
特に、製造物責任や第三者の生命・身体に関わる損害などについては、責任制限の適用範囲を慎重に検討する必要があります。
損害賠償条項は、取引規模や想定されるリスクに合わせて設計することが重要です。
9.契約期間・更新・解除の条件を明確にする
取引基本契約書では、契約期間や更新方法、契約解除の条件も重要です。
例えば、次のような事項を定めます。
契約期間
自動更新の有無
更新拒絶の通知期限
中途解約の可否
中途解約の通知期間
契約解除事由
契約終了時の費用精算
契約終了後の個別契約の取扱い
基本契約が終了したら、個別契約も終了する?
ここは特に注意したいポイントです。
例えば、基本契約の期間が終了した時点で、すでに発注済みの商品がある場合です。
基本契約が終了したからといって、成立済みの個別契約が当然にすべて終了するとは限りません。
そのため、契約書では、基本契約の終了が個別契約に与える影響を明確にしておく必要があります。
自動更新条項にも注意
継続的な取引では、契約期間の満了後に自動更新する条項を設けることがあります。
例えば、「期間満了の1か月前までに更新拒絶の通知がない場合、同一条件で1年間更新する」といった方法です。
しかし、更新拒絶の通知期限が曖昧だったり、通知方法が定められていなかったりすると、契約が更新されたかどうかを巡ってトラブルになる可能性があります。
実務上のポイント
契約期間・解除条項では、次のような点を検討しましょう。
基本契約終了後も個別契約を存続させるか
個別契約を含めて解除できる条件
未納品の商品への対応
未払代金の精算
秘密保持義務等の存続
契約終了後の取引関係まで見据えて条件を定めることが重要です。
10.秘密保持・反社会的勢力の排除を定める
継続的な取引では、取引先に営業情報や技術情報などを開示する場合があります。
例えば、次のような情報です。
商品の仕入価格
販売先に関する情報
製造技術
商品の仕様書
取引条件
営業上のノウハウ
こうした情報を保護するため、取引基本契約書では秘密保持条項を設けることが一般的です。
秘密保持条項で定める事項
秘密情報の定義
秘密保持義務
目的外使用の禁止
第三者への開示条件
秘密情報から除外する情報
契約終了後の秘密保持義務
秘密情報の返還・廃棄
契約終了後も秘密保持義務を存続させる
取引基本契約が終了した後でも、取引先に開示した営業情報や技術情報を保護する必要がある場合があります。
そのため、契約終了後も秘密保持義務を存続させる条項を設けることが考えられます。
存続期間については、情報の性質や保護の必要性を踏まえて検討することが重要です。
反社会的勢力の排除条項も重要
企業間取引では、反社会的勢力の排除条項を設けることも重要です。
例えば、次のような事項を定めます。
反社会的勢力に該当しないことの表明・保証
反社会的勢力との関係を有しないこと
暴力的要求行為等の禁止
違反した場合の契約解除
解除に伴う損害賠償等の取扱い
実務上のポイント
秘密保持条項や反社会的勢力の排除条項は、一般的なひな形にも含まれることが多い条項です。
しかし、秘密情報の範囲や契約終了後の義務、解除の対象となる契約などは、実際の取引に合わせて確認する必要があります。
取引基本契約書では取適法などの関係法令にも注意
取引基本契約書を作成する際には、当事者間の合意だけでなく、関係法令にも注意する必要があります。
特に、製造委託などの取引では、中小受託取引適正化法(取適法)の適用が問題となる場合があります。
取適法は、2026年1月1日に施行された、従来の下請法を改正した法律です。
適用対象となる取引では、発注内容の明示や代金の支払期日、不当な代金減額、受領拒否などに関する規制があります。
また、フリーランスに業務を委託する場合には、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用が問題となることもあります。
ただし、これらの法律は、すべての取引に一律に適用されるわけではありません。
取引内容、当事者の規模、事業形態などによって適用関係が異なります。
契約書の内容だけでなく、実際の取引がどの法令の適用対象となるのかを確認することが重要です。
後編のまとめ|契約違反・契約終了時のリスクに備える
今回は、取引基本契約書で確認したい10のポイントのうち、最後の3つを解説しました。
8.損害賠償・責任制限
賠償範囲と上限を適切に定める。
9.契約期間・更新・解除
契約終了時の個別契約の取扱いを明確にする。
10.秘密保持・反社会的勢力の排除
重要情報の保護と取引上のリスクに備える。
取引基本契約書は、継続的な取引関係を円滑に進めるための重要な契約書です。
そのため、一般的なひな形をそのまま使用するだけでは、実際の取引内容や商慣習に合わない可能性があります。
大切なのは、ひな形に取引を合わせるのではなく、実際の取引に合わせて契約書を作成することです。
取引基本契約書の作成は行政書士へ
「取引先から提示された契約書の内容を確認したい」
「損害賠償の上限を適切に定めたい」
「契約期間や解除条件を見直したい」
「現在使用している取引基本契約書が、自社の取引内容に合っているか不安」
このようなお悩みはありませんか?
取引基本契約書は、商品の種類、発注方法、納品・検収の流れ、支払条件などによって、必要な条項や適切な契約条件が異なります。
当事務所では、契約書作成に強い行政書士が、取引内容やご希望を丁寧にヒアリングし、実際のビジネスに合わせた取引基本契約書を作成いたします。
売主・買主のいずれの立場からのご依頼にも対応しています。
取引基本契約書の作成をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、取引基本契約に関する一般的な法的事項を解説するものです。具体的な取扱いは、契約内容や適用法令等によって異なります。