「商品を納品したのに、取引先がいつまでも検収を終わらせない」
「納品後に不良品が見つかった場合、どちらが責任を負うの?」
「代金の支払時期や条件を明確にしておきたい」
このようなお悩みはありませんか?
企業間の継続的な売買取引では、発注方法や商品の仕様だけでなく、納品、検収、代金の支払条件、契約不適合責任についても明確にしておくことが重要です。
これらの条件が曖昧なままでは、次のようなトラブルにつながる可能性があります。
輸送中に商品が破損し、責任の所在を巡って揉める
検収が終わらず、代金の支払時期が確定しない
納品された商品の品質が契約内容と異なる
納品後しばらくして不良品が見つかる
支払条件について双方の認識が食い違う
こうしたトラブルを防ぐためには、商品の納品から代金の支払いまでの流れを、契約書で明確にしておくことが重要です。
前編では、基本契約と個別契約の関係、発注・受注の方法、商品の仕様・品質基準について解説しました。
今回は中編として、次の4つのポイントを解説します。
4.納期・納品方法・危険負担を定める
取引基本契約書では、納期や納品方法だけでなく、商品が滅失・破損した場合の危険負担についても確認する必要があります。
例えば、次のようなケースです。
「商品を発送したが、輸送中に破損した」
「納品前に倉庫で火災が発生し、商品が滅失した」
「買主の都合で商品を受け取れなかった」
このような場合に、どちらがどのような責任を負うのかを整理しておく必要があります。
契約書では、次の事項を定めることが考えられます。
納期
納品場所
納品方法
運送費の負担
納期遅延時の通知義務
納期変更の手続
危険負担の移転時期
所有権の移転時期
危険負担とは?
危険負担とは、契約当事者双方の責めに帰することができない事由によって商品が滅失・損傷した場合などに、代金支払義務等をどのように取り扱うかという問題です。
例えば、商品が引き渡される前に、当事者の責めに帰することができない原因で滅失した場合と、引渡し後に滅失した場合では、民法上の取扱いが異なります。
また、商品の破損が売主や運送業者の責めに帰すべき事由による場合には、債務不履行責任等も問題となり得ます。
実務上のポイント
危険負担の移転時期は、納品時、引渡時、検収完了時など、取引の内容に応じて検討する必要があります。
また、所有権の移転時期と危険負担の移転時期は、必ずしも一致させる必要はありません。
実際の物流や検査の流れに合わせて、適切な条件を設定することが重要です。
5.検査・検収の方法と期間を定める
取引基本契約書で特に重要なのが、納品された商品の検査・検収に関する条項です。
例えば、次のようなトラブルが考えられます。
「商品を納品したのに、買主がいつまでも検査を終わらせない」
「検査基準が曖昧で、何度も不合格とされる」
「納品から数か月後に不良品だと言われた」
こうした問題を防ぐため、契約書では次の事項を定めておくことが重要です。
検査期間
検査方法
合格基準
検査結果の通知方法
不合格の場合の対応
再検査の方法
検収完了の時期
検査期間を定めないとどうなる?
例えば、売主が商品を納品したにもかかわらず、買主が長期間検査を行わない場合、代金の支払時期や商品の取扱いについてトラブルになる可能性があります。
そのため、納品後一定期間内に検査を行うことや、検査結果を通知する方法を定めることが考えられます。
また、一定期間内に不合格の通知がなかった場合、検収に合格したものとみなす条項を設ける方法もあります。
ただし、みなし検収の効果や適用範囲については、取引内容や適用法令を踏まえて検討する必要があります。
検収が完了すれば、売主の責任はなくなる?
検収が完了したからといって、売主の責任が当然にすべて消滅するわけではありません。
例えば、納品時の検査では発見できなかった不具合が、後日判明する場合があります。
そのため、検収条項と契約不適合責任条項の内容を整合させる必要があります。
また、商人間の売買では、商法526条に基づく検査・通知義務が問題となる場合があります。
実務上のポイント
検査期間と合格基準を明確にすることが重要です。
売主・買主のいずれの立場でも、検収完了の条件と、その後の契約不適合への対応を整理しておきましょう。
6.代金・支払条件を明確にする
継続的な取引では、代金の支払条件も重要です。
例えば、次のような事項を定めます。
商品の単価
代金の算定方法
請求書の発行方法
締日・支払日
支払方法
振込手数料の負担
消費税の取扱い
支払遅延時の対応
価格改定の手続
「月末締め翌月末払い」だけで十分?
例えば、「月末締め翌月末払い」と定めた場合でも、何を基準に締めるのかによって支払対象が異なることがあります。
発注日を基準とするのか
納品日を基準とするのか
検収完了日を基準とするのか
こうした点が曖昧だと、請求金額や支払時期について認識が食い違う可能性があります。
原材料価格の高騰にも注意
継続取引では、原材料価格、物流費、人件費などが変動することがあります。
そのため、価格改定の協議方法や、新しい単価の適用時期などを定めておくことも考えられます。
実務上のポイント
支払条件は、請求書の発行から入金までの実際の業務フローに合わせて定めることが重要です。
なお、取引の内容や当事者の規模などによっては、中小受託取引適正化法(取適法)等の適用が問題となる場合があります。
適用対象となる取引では、代金の支払期日や支払遅延、不当な代金減額などに関する法令上の規制にも注意が必要です。
7.契約不適合責任の範囲を明確にする
取引基本契約書では、納品された商品が契約内容に適合しない場合の責任についても定めておく必要があります。
これを契約不適合責任といいます。
例えば、次のようなケースです。
商品の数量が不足していた
納品された商品が仕様書と異なっていた
商品に品質上の問題があった
契約で定めた性能を満たしていなかった
このような場合、民法上、一定の要件のもとで、買主には追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などが認められることがあります。
契約書では何を定めるべき?
例えば、次の事項です。
契約不適合の判断基準
不適合が発見された場合の通知方法
通知期間
修補・代替品納入・不足分納入の方法
代金減額の条件
返品・返金の条件
対応費用の負担
損害賠償との関係
責任を負う期間
検収後に不具合が発見された場合は?
納品時の検査では発見できなかった不具合が、後日判明する場合があります。
そのため、検収完了後の契約不適合について、どのような条件で対応するのかを定めておくことが重要です。
ただし、民法や商法の通知期間に関する規定、売主の認識等による例外、その他の強行法規との関係には注意が必要です。
実務上のポイント
契約不適合責任については、単に「売主が責任を負う」と定めるのではなく、どのような不適合について、いつまで、どのような対応を行うのかを具体的に定めることが重要です。
売主・買主のいずれの立場でも、検査条項と契約不適合責任条項の内容を整合させておきましょう。
中編のまとめ|納品から支払までのルールを明確にする
今回は、取引基本契約書で確認したい10のポイントのうち、次の4つを解説しました。
4.納期・納品・危険負担
納品条件と商品の滅失・破損時の取扱いを定める。
5.検査・検収
検査期間、合格基準、不合格時の対応を明確にする。
6.代金・支払条件
締日、支払日、価格改定の方法を定める。
7.契約不適合責任
不良品等への対応方法と責任範囲を明確にする。
継続的な売買取引では、商品の納品から代金の支払いまでに、さまざまな手続が発生します。
そのため、実際の業務フローに合わせて契約条件を定めることが重要です。
次回の後編では、損害賠償、契約期間・解除、秘密保持・反社会的勢力の排除について解説します。
取引基本契約書の作成は行政書士へ
「納品や検収のルールを明確にしたい」
「不良品が発生した場合の責任分担を定めたい」
「代金の支払条件を整理したい」
このようなお悩みはありませんか?
取引基本契約書は、商品の種類、納品・検収の方法、支払条件などによって、必要な条項や適切な契約条件が異なります。
当事務所では、契約書作成に強い行政書士が、取引内容やご希望を丁寧にヒアリングし、実際の取引に合わせた取引基本契約書を作成いたします。
売主・買主のいずれの立場からのご依頼にも対応しています。
取引基本契約書の作成をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、取引基本契約に関する一般的な法的事項を解説するものです。具体的な取扱いは、契約内容や適用法令等によって異なります。