OEM契約書では、商品の仕様や品質基準、発注数量、不良品への対応などを明確にすることが重要です。
しかし、それだけでは十分とは限りません。
OEM取引では、自社ブランドや商品のデザイン、製造技術などの知的財産権に加え、模倣品の製造、第三者への横流し、製品事故、契約終了後の在庫処理なども問題となります。
例えば、次のようなトラブルです。
委託先が自社商品と類似する商品を他社に製造・販売してしまう
自社ブランドの商品が無断で第三者に販売される
製品事故が発生した際の責任分担が決まっていない
契約終了後に金型や原材料を返還してもらえない
製造委託先が契約終了後もブランド名を使用している
こうしたトラブルを防ぐためには、商品の製造条件だけでなく、知的財産権や契約終了後の取扱いまで契約書で明確にしておくことが重要です。
前編では、OEM契約書で確認したい8つのポイントのうち、次の4つを解説しました。
商品の仕様・品質基準
発注数量・納期・代金
原材料・資材の支給と管理
検査・検収と不良品対応
今回は後編として、残りの4つのポイントを、契約書作成に強い行政書士が実務的な視点から解説します。
5.商標・デザイン・知的財産権の帰属を明確にする
OEM取引では、ブランドや商品のデザイン、製造技術など、さまざまな知的財産が関係します。
特に注意したいのは、商品の製造を委託したからといって、関連する知的財産権の帰属が自動的に決まるわけではないことです。
例えば、次のような事項について、権利の帰属や利用条件を定めておく必要があります。
ブランド名・ロゴの商標権
商品デザインに関する権利
パッケージデザインの著作権
製造技術やノウハウ
商品の処方・配合に関する情報
金型・設計図面
共同開発した技術や成果物
委託者が注意すべきポイント
委託者としては、自社ブランドや商品デザインを、受託者が無断で第三者に使用しないようにする必要があります。
また、共同開発によって生まれた成果物についても、権利の帰属や利用範囲を明確にしておくことが重要です。
受託者が注意すべきポイント
一方、受託者としては、従前から保有している製造技術やノウハウまで、委託者に移転する内容になっていないか注意が必要です。
例えば、受託者が独自に開発した汎用的な製造技術については、OEM契約締結後も引き続き利用できるようにしておく必要がある場合があります。
実務上のポイント
OEM契約書では、委託者が提供した知的財産、受託者が従前から保有する知的財産、契約に基づいて新たに生じる成果物を区別して定めることが重要です。
また、商標やデザインの使用を認める場合は、使用目的・使用範囲・契約終了後の取扱いも明確にしておきましょう。
6.模倣品の製造・横流しを防止する
OEM取引では、委託者が自社ブランドの商品を受託者に製造してもらいます。
そのため、委託者としては、受託者による無断製造や第三者への販売を防ぐ必要があります。
例えば、次のようなケースです。
受託者が委託者の承諾なく商品を追加製造する
委託者向けに製造した商品を第三者へ販売する
ブランド名やロゴを無断で使用する
商品の処方や設計情報を利用して類似商品を製造する
委託者の営業秘密を第三者に開示する
このようなリスクに備えて、契約書では次の事項を検討します。
無断製造の禁止
契約外での販売・譲渡の禁止
商標・ロゴの目的外使用の禁止
秘密情報の使用目的の制限
製造数量や在庫の管理
再委託の制限
契約終了後の製造・販売の取扱い
競合商品の製造禁止は慎重に検討する
委託者としては、受託者が競合商品を製造すること自体を禁止したいと考える場合もあります。
しかし、競業避止義務を過度に広く設定すると、受託者の事業活動を必要以上に制限する可能性があります。
そのため、対象商品、禁止行為、対象期間、地域などを合理的な範囲で定めることが重要です。
また、独占禁止法等との関係にも注意が必要です。
実務上のポイント
模倣品対策では、単に「競合商品の製造を禁止する」と定めるのではなく、委託者が提供したブランド、設計情報、処方、秘密情報などの無断利用を禁止する条項を設けることが有効です。
必要に応じて、製造数量の記録や在庫管理に関する規定を設けることも考えられます。
7.製造物責任と損害賠償の範囲を定める
OEM取引では、製品事故が発生した場合の責任分担も重要です。
例えば、次のようなケースです。
化粧品の使用によって健康被害が生じた
食品に異物が混入していた
電子機器の欠陥によって事故が発生した
商品の欠陥によって第三者の財産に損害が生じた
このような場合には、製造物責任法(PL法)などの適用が問題となることがあります。
OEM契約書で責任分担を決めれば、それだけで十分?
ここで注意したいのは、委託者と受託者の間で責任分担を定めても、第三者に対する法律上の責任まで当然に免れるわけではないことです。
製造物責任法上、誰が責任を負うかは、製造・加工・輸入の主体や表示内容など、法律上の要件によって判断されます。
そのため、OEM契約書では、第三者に対する責任とは別に、当事者間の費用負担や求償関係を整理しておく必要があります。
例えば、次のような事項です。
製品事故が発生した場合の通知義務
原因調査への協力
製品回収・リコールへの対応
回収費用の負担
第三者からの請求への対応
製造工程に起因する欠陥の責任
委託者が指定した仕様に起因する欠陥の責任
損害賠償の範囲と上限
PL保険等への加入
損害賠償の上限にも注意
OEM契約書では、損害賠償責任の上限を定めることがあります。
例えば、一定期間の取引代金を上限とする方法などが考えられます。
ただし、製品事故では、商品代金を大きく上回る損害が発生する可能性があります。
そのため、すべての損害について一律に低い上限を設けることが適切とは限りません。
故意・重過失、第三者の生命・身体に関する損害、製品回収費用などについて、責任制限の適用範囲を個別に検討することが重要です。
実務上のポイント
製造物責任については、委託者と受託者のどちらか一方にすべての責任を負わせるのではなく、欠陥の原因、各当事者の管理範囲、適用法令などを踏まえて責任分担を設計することが重要です。
8.契約終了時の金型・原材料・在庫の取扱いを定める
OEM契約では、契約終了時にもトラブルが発生することがあります。
特に問題となりやすいのが、金型、原材料、包装資材、完成品などの取扱いです。
例えば、次のようなケースです。
「委託者が費用を負担した金型を返還してもらえない」
「製造途中の商品が残っている」
「大量に仕入れた原材料の費用負担が決まっていない」
「契約終了後も受託者が委託者ブランドの商品を製造している」
こうした問題を防ぐため、契約書では次の事項を定めておくことが重要です。
契約期間と更新方法
中途解約の条件
契約解除事由
金型・治具・設備の所有権
金型等の返還方法と費用負担
未使用原材料・包装資材の取扱い
製造途中の商品・完成品の取扱い
在庫の買取り・処分条件
商標・ブランドの使用終了
秘密情報の返還・廃棄
契約終了後の秘密保持義務
金型の所有権に注意
OEM製造では、委託者が金型の製作費用を負担する場合があります。
しかし、費用を負担したからといって、所有権や返還条件が常に明確になるわけではありません。
そのため、金型の所有権、保管場所、使用範囲、維持管理費用、契約終了時の返還方法などを明確にしておくことが重要です。
実務上のポイント
契約終了時に残った原材料や在庫については、誰が費用を負担するのか、どのように処分するのかをあらかじめ定めておくことが望ましいでしょう。
特に、委託者専用の包装資材やラベルなどは、他の取引に転用できないこともあるため注意が必要です。
OEM契約書では「再委託」の取扱いにも注意
OEM契約書では、再委託についても確認しておきたいところです。
OEM製造では、受託者が製造工程の一部を別の工場などに委託する場合があります。
しかし、委託者が知らない第三者に製造を任せることで、品質管理や秘密情報の管理に問題が生じる可能性があります。
そのため、契約書では次のような事項を検討します。
再委託を認めるか
再委託に事前承諾を必要とするか
再委託先に求める品質管理基準
秘密保持義務の遵守
再委託先の行為に対する受託者の責任
再々委託の可否
例えば、委託者の事前の書面承諾を必要とし、承諾を得た場合でも受託者が契約上の責任を負う仕組みが考えられます。
ただし、製造工程や受託者の事業体制によって適切な条件は異なります。
後編のまとめ|OEM契約書はブランドと事業を守るための重要な契約書
今回は、OEM契約書で確認しておきたい8つのポイントのうち、後半の4つを解説しました。
知的財産権の帰属:商標、デザイン、製造技術などの権利を誰が保有するのか
模倣品・横流しの防止:無断製造や第三者への販売をどのように防ぐのか
製造物責任・損害賠償:製品事故が発生した場合に誰がどこまで責任を負うのか
契約終了時の取扱い:金型、原材料、在庫、秘密情報などをどのように処理するのか
OEM契約は、単に商品を製造して納品するだけの取引ではありません。
自社ブランドや知的財産を守り、製品事故や契約終了時のリスクに備えるためにも、契約条件を適切に整理することが重要です。
契約書は、ひな形に取引を合わせるのではなく、実際の取引に合わせて作成することが大切です。
OEM契約書の作成は、契約書作成に強い行政書士へ
「自社ブランドの商品をOEM製造したい」
「模倣品や横流しを防ぐ契約書を作成したい」
「製造物責任や損害賠償の範囲を明確にしたい」
「契約終了後の金型や在庫の取扱いを整理したい」
このようなお悩みはありませんか?
OEM契約書は、商品の種類、製造工程、原材料の供給方法、知的財産権の帰属などによって、必要な条項や適切な契約条件が異なります。
当事務所では、契約書作成に強い行政書士が、取引内容やご希望を丁寧にヒアリングし、実際のOEM取引に合わせた契約書を作成いたします。
化粧品、食品、アパレル、雑貨など、さまざまな商品に関するOEM契約書の作成についてご相談いただけます。
製造を委託する企業様、製造を受託する企業様のいずれからのご依頼にも対応しています。
「OEM契約書を作りたいけれど、何を決めればよいかわからない」という段階でも構いません。
契約書の作成をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、OEM契約に関する一般的な法的事項を解説するものです。具体的な契約条件や法的な取扱いは、取引内容、契約類型、適用法令等によって異なります。