「最後に心から笑ったのはいつ?」と聞かれて答えられなかった人へ

記事
コラム

ある日、自分が笑っていないことに気づく


最後に心から笑ったのは、いつだろう。

この質問に即答できる人は、たぶんこの記事を読んでいないかもしれない。即答できなかった人——ようこそ。あなたは1人じゃない。

Aさん(30代後半・ある都市部で事務の仕事を長年続けている男性)は、ある日曜日の夕方、ソファに座ってぼんやりとスマートフォンを眺めていた。SNSのタイムラインを何度もスクロールしているのに、何も面白くない。テレビをつけてもつまらない。かといって、何かをする気力もない。

「あれ、俺って最近、笑ってなくない?」

ふと、そう思った。考えてみると、仕事に行って、帰って、ご飯を食べて、寝る。休日は疲れを取るために寝る。友人と会うこともめっきり減った。趣味……趣味ってなんだっけ? 昔は何をして楽しんでいたんだっけ?

この感覚——生活から「楽しさ」が消えている感覚——は、決して珍しいものではない。忙しさに追われ、責任が増え、日々のルーティンに埋もれているうちに、いつの間にか笑いや楽しさが生活から蒸発してしまう。深刻な病気というほどではないが、何か大事なものが欠けている感じ。味気ない、という表現がぴったりくる。

こうした状態に対して、世の中のアドバイスは大きく2つだ。「新しい趣味を始めましょう」と「旅行に行きましょう」。しかし、趣味を始める気力がないから困っているのだし、旅行は一時的な気分転換にしかならないことが多い。

ここで、心理学が提示するまったく違う視点がある。それは「新しいことを始める」のではなく、「今あるものの見方を変える」というアプローチだ。

第1章:笑いが消えるメカニズム


人間には「目的志向状態」と「活動志向状態」という2つの心のモードがある。

目的志向状態とは、ゴールに向かって効率的に行動するモードだ。仕事中、締め切りに追われているとき、やるべきことリストを消化しているとき——私たちの多くは、このモードで日常の大半を過ごしている。

一方、活動志向状態とは、行為そのものを楽しむモードだ。子どもの頃の遊び、何の目的もなくぶらぶら歩く散歩、友人との意味のないおしゃべり——これが活動志向状態だ。

心理学の研究によると、ユーモアや笑いは「活動志向状態」から生まれる。つまり、「何かのために」ではなく「ただ楽しいから」という状態にいるときに、人は面白さを感じやすくなる。

問題は、現代社会が目的志向状態を過度に要求することだ。仕事はもちろん、休日の過ごし方さえ「生産的であるべき」というプレッシャーがある。「休日何してた?」と聞かれたとき、「何もしてない」と答えることに罪悪感を覚える人は少なくないだろう。

この「常に何かの目的に向かっていなければならない」という圧力が、活動志向状態——そして笑い——を圧殺する。忙しいから笑えないのではなく、心が常に「目的モード」にあるから笑えないのだ。

第2章:「遊び心」を取り戻した人たちの物語


Bさん(40代・ある地方でサービス業に長く携わった後、離職した女性)は、十数年間、休むことなく働き続けていた。接客の仕事は好きだったが、体力的にも精神的にも限界が来て、ある日思い切って仕事を辞めた。

最初の数週間は、とにかく寝た。疲労の蓄積がすさまじかった。でも、体力が回復してくると、今度は「何をすればいいかわからない」という問題にぶつかった。仕事以外に、自分が何を楽しいと思うのかがわからない。

「仕事を辞めたら自由に楽しめると思ってたんです。でも、いざ自由になったら何も思いつかない。趣味を探そうとしても、何もピンとこない。自分ってこんなにつまらない人間だったんだって、ちょっとショックでした」

転機は些細なことだった。散歩中に、道端で猫がとんでもない体勢で寝ているのを見つけた。あまりの格好のよさに、つい写真を撮った。そしてSNSに「本日の野良猫コレクション」と投稿した。ちょっとした冗談のつもりだったが、思いのほか反応があった。

それから毎日、散歩のたびに面白いものを探すようになった。変な看板、形がおかしい雲、道路の模様——どれも「何の役にも立たない」ものばかりだ。でも、それを見つけるたびに小さな笑いが生まれた。

Bさんが取り戻したのは、まさに「活動志向状態」だ。目的のない散歩が、面白いものを探す遊びに変わった。遊びの中で、笑いが自然に生まれた。新しい趣味を始めたわけでも、旅行に行ったわけでもない。日常の「見方」が変わっただけだ。

Cさん(30代前半・都市部でIT関連の仕事をしていた男性)は、仕事を離れた後、何もする気が起きない日々を過ごしていた。部屋にいて、動画を見て、寝る。その繰り返し。

あるとき、以前の同僚が参加していたオンラインの集まりに顔を出してみた。参加者はみんな、仕事から離れている人たちだった。深刻な話もあったけれど、不思議とそこには笑いがあった。誰かの失敗談、日常のちょっとしたぼやき、意味のない雑談——そうしたものに、Cさんは久しぶりに声を上げて笑った。

「あっ、自分も笑えるんだ」——そう思えたことが、Cさんにとっては大きかった。笑えないのは自分が壊れているからではなく、笑える場所にいなかっただけだった。

実験的な研究でも、ユーモアがポジティブな感情を高め、退屈さの影響を受けにくくすることが示されている。つまり、笑うことは単なる「反応」ではなく、積極的に生活の質を向上させる「行為」なのだ。

第3章:日常を「面白く」する3つの習慣


1つ目:「面白い探し」をする

これは非常にシンプルだが、効果は絶大だ。通勤途中でも、家の中でも、スーパーの買い物中でも、「何か面白いものはないか」という視点で周りを見渡してみる。

面白いものを「見つける」のではなく「探す」ことがポイントだ。探す姿勢自体が、心を活動志向状態にシフトさせる。最初は何も見つからなくても問題ない。探しているうちに、だんだんと「これちょっと面白いかも」と思えるものが増えてくる。注意点として、これを「義務」にしないこと。「今日も面白いもの見つけなきゃ」と思った瞬間、目的志向に戻ってしまう。あくまで遊びとして、気楽に。

2つ目:「意味のない時間」を許す

生産性の呪いから解放されること。何もしない時間、何の役にも立たないことをする時間を、意識的に自分に許可する。ぼーっとする、窓の外を眺める、鼻歌を歌う。

これは怠惰ではない。心を活動志向状態に戻すために必要なリハビリだ。目的志向状態に慣れすぎた心は、すぐには遊べない。「意味のない時間」を過ごすことに慣れる必要がある。「暇=悪いこと」という固定観念に気づくことが、最初の一歩だ。

3つ目:誰かと「くだらない話」をする

笑いは、1人で起きることもあるが、人と一緒にいるときのほうが圧倒的に起きやすい。友人、家族、オンラインのコミュニティ——誰でもいい。「くだらない話」をする相手を持つことが大切だ。

「くだらない話」とは、仕事の話でも、悩み相談でもない。本当にどうでもいい話だ。「スーパーで見た変な客」「朝起きたら猫に顔を踏まれていた」「味噌汁の具を入れ忘れた」。そういう話は、一見価値がないように見えて、実は笑いの宝庫だ。そして笑いの中で、「生活って、まあまあ面白いかも」という感覚が少しずつ戻ってくる。

結論:笑いは「見つけるもの」ではなく「育てるもの」


生活から笑いが消えたとき、多くの人は「面白いことがないからだ」と考える。面白い趣味がない、面白い友人がいない、面白い出来事が起きない。

しかし、実は順番が逆だ。面白いことがないから笑えないのではなく、笑える心の状態にないから面白いことが見つからないのだ。

心理学が教えてくれるのは、ユーモアの感覚は「遊び」に根ざしているということ。そして遊びとは、目的を手放し、今この瞬間を味わう状態だということ。

新しい趣味を見つける必要はない。旅行に行く必要もない。まずは、目の前の日常を「遊びの目」で見てみてほしい。それだけで、世界は少しだけ面白くなる。そして、面白さに気づけたとき、あなたはきっと笑っている。


🌿 一人で抱え込まないでください
「退職すべきか、休み続けていいのか」――そのモヤモヤ、キャリアとメンタル両面からいっしょに考えます。
産業カウンセラー・キャリアコンサルタントが、あなたのペースで丁寧にお聴きします。
分岐点.png


🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
「記事を読んで、もう少し深く話してみたい」と感じたら、ぜひココナラのサービスをのぞいてみてください。



サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す ココナラコンテンツマーケット ノウハウ記事・テンプレート・デザイン素材はこちら