「夫の心が離れてるかも」って思うと怖くてたまらない話

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コラム



「気づいてしまった違和感」


ユキさんがカウンセリングルームに入ってきたのは、梅雨明けの蒸し暑い日だった。40代に見える落ち着いた雰囲気の女性だが、どこか疲れた表情を浮かべている。

ユキ「はじめまして...今日はよろしくお願いします」

ダイキ「はじめまして。ダイキです。今日はどんなことでお越しになりましたか?」

ユキさんは少し躊躇してから、ゆっくりと話し始めた。

ユキ「あの...夫のことなんです。最近、なんだか様子がおかしくて」

ダイキ「様子がおかしい、ですか」

ユキ「はい。夫は営業の仕事をしているんですけど、最近、職場の女性と...よく連絡を取り合っているみたいで」

そう言いながら、ユキさんは手元のスマートフォンをぎゅっと握りしめた。

ユキ「別に、体の関係があるわけじゃないと思うんです。仕事の話なんだと夫も言ってますし...でも、私、すごく...苦しいんです」

「何が一番辛いのか」


ダイキ「苦しい、というのは...どんな感じですか?」

ユキさんは少し考えてから答えた。

ユキ「なんて言ったらいいんでしょう...夫が、その女性と笑って話している姿を想像すると...胸が締め付けられるというか」

ダイキ「笑って話している姿を想像すると、辛くなるんですね」

ユキ「はい。もし体の関係だったら...それはそれで許せないと思うんですけど。でも、心が離れていくことの方が...もっと怖いんです」

その言葉を口にした瞬間、ユキさんの目に涙が浮かんだ。

ユキ「おかしいですよね...体の関係の方が許せないはずなのに」

ダイキ「おかしくはないと思いますよ。ユキさんは今、何が一番辛いんでしょうか」

ユキ「...夫が、私以外の誰かと深い話をしていることです。私には言わないようなこと、その人には話しているんじゃないかって」

「子どものこと、未来のこと」


ダイキ「ユキさんには、お子さんはいらっしゃいますか?」

ユキ「はい、2人います。上が小学生で、下がまだ幼稚園で」

ダイキ「お子さんがいる中で、こういう不安を抱えているんですね」

ユキさんは大きくため息をついた。

ユキ「そうなんです。だから余計に...どうしたらいいのか分からなくて」

ダイキ「どうしたらいいか分からない、というのは?」

ユキ「もし夫の心が完全に離れてしまったら...私たち家族はどうなるんだろうって。経済的なことも心配だし、子どもたちのことも」

そこでユキさんは言葉を詰まらせた。

ユキ「私、専業主婦なんです。結婚してからずっと。夫の収入で生活してきたから...もし離婚なんてことになったら」

「なぜこんなに苦しいのか」


ダイキ「ユキさんは今、パートナーの気持ちが離れていくことへの不安と、家族の未来への不安と、両方を感じているんですね」

ユキ「はい...でも、友達に相談したら『まだ何も起きてないんだから気にしすぎ』って言われて」

ダイキ「友達はそう言ったんですね」

ユキ「でも、私にはもう...何かが起きてる気がするんです。夫の心が、少しずつ私から離れていってる気が」

ユキさんは涙を拭いながら続けた。

ユキ「おかしいですよね。体の関係がないなら我慢すべきなのに...私、なんでこんなに苦しいんでしょう」

ダイキ「ユキさん、実は...女性の方が男性よりも、パートナーの『心の浮気』に強く反応することが多いんです」

ユキ「...え?」

「心が離れることの意味」


ダイキ「人は誰でも、パートナーの浮気には動揺します。でも、何に一番動揺するかは、男性と女性で少し違うことがあるんです」

ユキさんは真剣な表情でダイキの話を聞いている。

ダイキ「男性は、パートナーが他の人と体の関係を持つことに強く反応する傾向があります。一方で女性は...」

ユキ「女性は?」

ダイキ「女性は、パートナーが他の人と深い精神的な繋がりを持つことに、より強く動揺する傾向があるんです」

ユキさんは驚いたような顔をした。

ユキ「それって...私だけじゃないんですか?」

ダイキ「いいえ。多くの女性が、ユキさんと同じような不安を感じています」

ユキ「でも...どうしてなんでしょう。体の関係の方が裏切りって感じがするのに」

「本能が教えてくれること」


ダイキ「ユキさん、これは頭で考えて決めていることじゃないんです。もっと深いところ、本能的なところから来ている反応なんです」

ユキ「本能...ですか」

ダイキ「はい。昔々、人類がまだ狩猟採集をしていた時代のことを想像してみてください」

ユキさんは少し首を傾げながらも、話を聞いている。

ダイキ「その時代、女性は妊娠して、子どもを産んで、育てる。その間、パートナーの男性からの支援が必要だった」

ユキ「...はい」

ダイキ「もしパートナーの男性が、他の女性に心を移してしまったら...」

ユキ「その男性の支援が、別の女性のところに行ってしまう」

ダイキ「そうです。食べ物や保護、そういった大切な資源が、自分と子どもに向かなくなるかもしれない」

ユキさんはハッとした表情を浮かべた。

ユキ「だから...心が離れることが怖いんですね」

ダイキ「そう。体だけの関係なら、心はまだこちらにあるかもしれない。でも心まで持っていかれたら...」

ユキ「全部、失うかもしれない」

「今の状況と重なるもの」


しばらく沈黙が流れた。ユキさんは自分の感情を整理しているようだった。

ユキ「なるほど...だから私、こんなに不安だったんですね」

ダイキ「ユキさんは今、専業主婦で、お子さんも小さい。パートナーの支援が必要な状況ですよね」

ユキ「はい...経済的にも、子育ても、夫に頼っている部分が大きくて」

ダイキ「その状況で、パートナーの心が離れていくかもしれないという不安は...」

ユキ「本当に...生きていけなくなるかもしれないっていう恐怖なんです」

ユキさんの声は震えていた。

ユキ「頭では、現代だから、離婚しても生活保護とかあるし、なんとかなるって分かってるんです。でも体が、心が、そうは感じてくれなくて」

ダイキ「それが本能の声なんだと思います」

「気づきから始まる一歩」


ユキ「でも...これが分かったからって、どうすればいいんでしょう」

ダイキ「どうすればいいと思いますか?」

ユキ「うーん...」

ユキさんは少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。

ユキ「まず、夫と話してみようかな。私がどう感じているか、ちゃんと伝えてみる」

ダイキ「どんな風に伝えますか?」

ユキ「『あなたが他の女性と親しくしているように見えて、私は不安なの』って。責めるんじゃなくて、私の気持ちを伝える」

ダイキ「いいですね」

ユキ「そして...自分のことも考えたいです。夫に依存しすぎている自分を」

「未来への一歩」


ダイキ「自分のことを考える、というのは?」

ユキ「たとえば、資格を取るとか、パートを始めるとか。何か、自分で稼ぐ力を少しでも持ちたいって思いました」

ユキさんの表情が、少し明るくなった。

ユキ「そうしたら、この不安も少しは軽くなるかもしれないし」

ダイキ「そうですね。ユキさん自身が力をつけることで、本能的な不安も和らぐかもしれません」

ユキ「はい。今日、ここに来て良かったです」

ダイキ「どんなところが良かったですか?」

ユキ「自分の気持ちが、おかしくないって分かったこと。それと...ただ苦しむだけじゃなくて、できることがあるって気づけたこと」

「それぞれの道」


カウンセリングの終わりに、ユキさんはこう言った。

ユキ「先生、男性は体の浮気に反応するって言いましたよね」

ダイキ「はい」

ユキ「じゃあ、男性と女性では...求めているものが違うってことですか?」

ダイキ「違う、というより...それぞれが大切にしているものが少し違うのかもしれません」

ユキ「そっか...だから、お互いに分かり合うのが難しいんですね」

ダイキ「でも、分かろうとすることはできます。今日のユキさんのように」

ユキさんは微笑んだ。

ユキ「はい。帰ったら、夫とちゃんと話してみます」

おわりに


人間の感情は複雑です。でも、その複雑さの裏には、私たちが生き延びるために進化させてきた仕組みがあります。

女性がパートナーの情緒的な裏切りに強く反応するのは、子育てにおいてパートナーの資源や支援を失うリスクを本能的に感じ取っているから。これは、責められるべきことでも、恥ずかしいことでもありません。

大切なのは、自分の感情を理解し、それと向き合うこと。そして、パートナーとの対話を通じて、お互いの気持ちを理解し合おうとすることです。

もしあなたも同じような不安を抱えているなら、それはあなたが弱いからではありません。それは、あなたが人間だからです。

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🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
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