「休んでるはずなのに疲れる」:自律神経が乱れてた私の話

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コラム

思っていたのと違う休息期間


部屋のドアが開き、アヤが静かに入ってきた。椅子に座る動作がどこかぎこちない。

ダイキ「今日はどうでしたか?」

アヤは少し間を置いてから、小さく息を吐いた。

アヤ「なんか......体調がずっと悪くて」

そう言って、両手を見下ろす。手のひらには薄く汗が浮かんでいた。

アヤ「手がいつも冷たくて。でも緊張すると汗が出るんです。人と話すときとか、顔がすごく赤くなって......」

ダイキ「それは、いつ頃から?」

アヤ「退職してから、ですね。働いてた時も少しあったんですけど、ここまでひどくなかったんです」

彼女は困惑した表情を浮かべた。

アヤ「おかしいですよね。休んでるはずなのに、働いてた時より体調が悪いんです」

「警戒」している体


ダイキ「休んでいるはずなのに、体調が悪い。それは確かに戸惑いますね」

アヤ「はい......。毎日8時間くらい寝てるんです。でも、なんか、体がずっと緊張してる感じがするんです」

ダイキ「体が緊張している感じ?」

アヤ「そうです。夜もなかなか寝付けなくて。布団に入っても、頭がさえちゃって」

アヤは言葉を選ぶように、ゆっくりと話を続けた。

アヤ「特に、人と会う予定がある前の日とか。全然眠れないんです。で、当日は手がめちゃくちゃ冷たくなって、でも顔だけ熱くなって......」

彼女の声が少し震えた。

ダイキ「それは、しんどいですね」

アヤ「何がしんどいって、自分でコントロールできないことなんです。『緊張しないで』って思っても、体が勝手に反応しちゃう」

働いていた頃の生活


ダイキ「少し、働いていた頃のことを聞いてもいいですか?」

アヤ「はい」

ダイキ「どんな仕事をされていたんですか?」

アヤ「事務の仕事です。毎日、朝早く出て、夜遅く帰る感じでした」

アヤは視線を落とした。

アヤ「正直、めちゃくちゃ忙しかったです。朝は6時半に家を出て、帰るのは夜の9時過ぎ。土日も、なんだかんだで仕事のメールをチェックしたり......」

ダイキ「休む時間は?」

アヤ「ほとんど無かったですね。休日も、疲れすぎて動けなくて。ずっと寝てるか、ぼーっとしてるか」

彼女は小さく笑った。自嘲的な笑いだった。

アヤ「でも、その時は体調がそこまで悪くなかったんです。冷え性も多汗も、今ほどじゃなかった」

なぜ「休んでいる」のに不調なのか

ダイキ「働いている時より、休んでいる今の方が体調が悪い。それはなぜだと思いますか?」

アヤは少し考えてから答えた。

アヤ「......わからないんです。休めば良くなると思ってたから」

ダイキ「休めば良くなる、と」

アヤ「はい。でも、逆に悪化してる気がして。何か、自分がおかしいのかなって」

ダイキは静かに頷いた。

ダイキ「アヤさん、体が『緊張』しているって、さっき言いましたよね」

アヤ「はい」

ダイキ「それ、すごく大事なことだと思うんです」

アヤは少し驚いた表情を見せた。

ダイキ「働いている時は、毎日同じリズムで動いてましたよね。朝早く起きて、夜遅く帰る。ものすごく忙しいけど、ある意味、予測可能な生活だった」

アヤ「......そうですね」

ダイキ「でも今は?」

アヤは考え込んだ。

アヤ「......予測できないことばかりです。これからどうするか、仕事をどうするか、お金のこと......」

彼女の声が小さくなった。

アヤ「全部、不確定なんです」

体は「危険」を感じ取っている


ダイキ「体って、不思議なもので。物理的な疲労だけじゃなくて、『不確実性』にも反応するんです」

アヤ「不確実性......?」

ダイキ「はい。予測できない状況って、体にとっては『危険』なんです。だから、警戒態勢に入る」

アヤはハッとした表情を見せた。

ダイキ「働いている時は確かに疲れていたけど、毎日のパターンは決まっていた。でも今は、毎日が『どうなるかわからない』状態」

アヤ「......」

ダイキ「体は、その不確実性を『脅威』として感じ取っている。だから、緊張が続いている」

アヤはゆっくりと息を吐いた。

アヤ「そっか......。だから、休んでるはずなのに、体が休めてないんだ」

自律神経が乱れるメカニズム


ダイキ「冷え性、多汗、赤面。これって全部、自律神経の働きなんです」

アヤ「自律神経......」

ダイキ「自律神経っていうのは、体を『活動モード』にする交感神経と、『リラックスモード』にする副交感神経の二つがあって」

アヤ「はい」

ダイキ「緊張したり、不安を感じたりすると、交感神経が優位になる。すると、心臓がドキドキしたり、汗が出たり、血管が収縮して手足が冷たくなったりする」

アヤ「......全部、私に当てはまります」

ダイキ「逆に、リラックスしている時は副交感神経が優位になって、体が休息モードに入る。でも今のアヤさんは、常に交感神経が優位な状態になっている」

アヤは自分の手のひらを見つめた。

アヤ「どうしたら、副交感神経の方を......リラックスモードにできるんですか?」

ダイキ「それを、これから一緒に考えていきましょう」

まず何から始めるか


ダイキ「アヤさん、今、一日の中でリラックスできている時間ってありますか?」

アヤは少し考えた。

アヤ「......ないかもしれません」

ダイキ「朝起きた時から?」

アヤ「はい。起きた瞬間から、『今日は何しよう』『履歴書書かなきゃ』『このままでいいのかな』って、頭がグルグルして」

ダイキ「夜は?」

アヤ「夜もです。布団に入っても、『明日はどうしよう』『お金大丈夫かな』って......」

彼女は肩を落とした。

アヤ「で、気づいたら朝で」

ダイキ「一日中、体が『緊張』し続けている状態ですね」

アヤ「......そうです」

ダイキ「じゃあ、まず一つ、やってみませんか?」

アヤ「何ですか?」

ダイキ「呼吸を整える、っていうこと」

呼吸を意識する


アヤ「呼吸......ですか?」

ダイキ「はい。呼吸って、自律神経に直接働きかけることができる、唯一の方法なんです」

アヤは興味を示した。

ダイキ「深くゆっくり呼吸をすると、副交感神経が優位になる。体がリラックスモードに切り替わるんです」

アヤ「でも、そんな簡単に......?」

ダイキ「試してみましょうか。今、ここで」

アヤは少し戸惑いながらも頷いた。

ダイキ「じゃあ、まず、ゆっくり息を吐いてみてください。10秒くらいかけて」

アヤは目を閉じて、ゆっくりと息を吐いた。

ダイキ「そうです。で、また10秒くらいかけて、ゆっくり吸う」

アヤは言われた通りにした。最初はぎこちなかったが、徐々にリズムを掴んでいった。

数分後、アヤは目を開けた。

アヤ「......少し、楽になった気がします」

ダイキ「そうですか。それが、副交感神経が優位になった状態です」

アヤ「こんなに簡単なことで?」

ダイキ「はい。体って、思ってるより素直なんです」

でも、続けられるか不安


アヤは少し表情が明るくなったが、すぐに曇った。

アヤ「でも......私、こういうの続けられないんです」

ダイキ「続けられない?」

アヤ「はい。『毎日やろう』って決めても、3日くらいで忘れちゃって」

彼女は自嘲的に笑った。

アヤ「で、また『やっぱり私はダメだな』って落ち込んで」

ダイキ「なるほど。『毎日やる』っていうのが、プレッシャーになってるんですね」

アヤ「......はい」

ダイキ「じゃあ、『毎日やる』って決めなくていいです」

アヤは驚いた顔をした。

アヤ「え?」

ダイキ「『気づいた時にやる』。それだけでいいんです」

アヤ「気づいた時に......」

ダイキ「はい。朝起きた時、ふと緊張を感じた時、夜眠れない時。その時に、10秒の呼吸を2、3回やってみる」

アヤ「それだけでいいんですか?」

ダイキ「それだけで十分です。完璧じゃなくていい。少しずつ、体に『リラックスする』ことを思い出させていく」

生活の中での工夫


ダイキ「呼吸以外にも、体をリラックスさせる方法はいくつかあります」

アヤ「どんなことですか?」

ダイキ「例えば、散歩。外に出て、5分でもいいから歩く」

アヤ「散歩......」

ダイキ「自然の中を歩くと、ストレスが減って、気分が明るくなるっていう研究結果もあるんです」

アヤ「でも、私、あんまり外に出る気になれなくて」

ダイキ「そうですよね。じゃあ、無理に外に出なくてもいい」

アヤ「え?」

ダイキ「ベランダに出て、空を見上げるだけでもいい。5分、外の空気を吸うだけでも」

アヤは少し考えた。

アヤ「それなら......できるかも」

ダイキ「他には、軽いストレッチとか。体を動かすと、緊張がほぐれます」

アヤ「ストレッチ......」

ダイキ「朝起きた時に、ベッドの上で伸びをするだけでもいい。体に『動いてもいいんだよ』って伝える」

アヤはメモを取りながら聞いていた。

夜、眠れない時の対処法


アヤ「あの......夜、眠れない時はどうしたらいいですか?」

ダイキ「夜、眠れない時ですか」

アヤ「はい。布団に入っても、頭がグルグルして。で、スマホを見ちゃって、余計眠れなくなって......」

ダイキ「スマホを見ると、余計に目が覚めますよね」

アヤ「そうなんです。でも、見ちゃうんです」

ダイキ「それは、刺激が欲しいからなんです」

アヤ「刺激......?」

ダイキ「体が疲れていると、逆に刺激的なものを求めてしまう。でも、それがまた警戒状態を強めてしまう」

アヤ「......悪循環ですね」

ダイキ「はい。だから、夜は意識的に刺激を減らす必要があります」

アヤ「どうやって?」

ダイキ「まず、寝る2時間前からはスマホやパソコンを見ない。部屋の照明も暗めにする」

アヤ「2時間前......」

ダイキ「難しかったら、1時間前からでもいいです。少しずつ、体に『もうすぐ休む時間だよ』って教えていく」

アヤ「それで、眠れるようになりますか?」

ダイキ「すぐには変わらないかもしれません。でも、続けていくうちに、体が『夜は休む時間』って学習していきます」

「完璧にやらなきゃ」という思い込み


アヤはしばらく黙っていた。そして、小さく呟いた。

アヤ「......でも、私、ちゃんとやれるかな」

ダイキ「ちゃんと?」

アヤ「はい。呼吸法とか、散歩とか、夜のスマホ禁止とか......全部ちゃんとやらなきゃって思うと、プレッシャーで」

ダイキ「全部、ちゃんとやらなきゃいけない?」

アヤ「......だって、やらないと意味ないですよね」

ダイキ「そんなことないですよ」

アヤは顔を上げた。

ダイキ「全部できなくていい。10のうち、2つできたら上出来です」

アヤ「......2つでいいんですか?」

ダイキ「はい。100点を目指すんじゃなくて、20点を目指す。それで十分」

アヤは驚いた表情を見せた。

ダイキ「アヤさん、今まで『完璧にやらなきゃ』って思ってませんでしたか?」

アヤは少し考えてから、静かに頷いた。

アヤ「......そうかもしれません」

ダイキ「それが、体を緊張させている一つの原因かもしれませんね」

気づきの瞬間


アヤは黙って、自分の手を見つめていた。冷たかった手が、少しだけ温かくなっている気がした。

アヤ「私......ずっと、『ちゃんとしなきゃ』って思ってました」

ダイキ「ちゃんと?」

アヤ「はい。仕事も、人間関係も、全部......。完璧にやらないと、ダメだって」

彼女の声が震えた。

アヤ「でも、どんなに頑張っても、完璧にはできなくて。で、自分を責めて......」

涙が一粒、頬を伝った。

アヤ「休職してからも、『この時間を有効に使わなきゃ』『早く次の仕事見つけなきゃ』って......」

ダイキは静かに頷いた。

アヤ「休んでるはずなのに、全然休めてなかったんです」

ダイキ「そうですね。体は休んでいたかもしれないけど、心は休めていなかった」

アヤ「......はい」

ダイキ「体の症状って、心の状態を映す鏡みたいなものなんです」

アヤは涙を拭いた。

アヤ「冷え性も、多汗も、赤面も......全部、私が自分を追い詰めてたからなんですね」

ダイキ「それに気づけたこと、すごく大きいと思います」

これからの一歩


アヤは深く息を吐いた。さっき教わった呼吸法を、自然とやっていた。

アヤ「先生、これから私、どうしたらいいですか?」

ダイキ「どうしたい、と思いますか?」

アヤは少し考えた。

アヤ「......まず、ちゃんと休みたいです。本当の意味で」

ダイキ「いいですね」

アヤ「完璧じゃなくていい、っていうのを、ちゃんと自分に言い聞かせたいです」

ダイキ「それは、とても大事なことですね」

アヤ「あと......」

彼女は手のひらを見た。

アヤ「この冷え性とか、多汗とか、全部『敵』だと思ってたんです。でも違うんですね」

ダイキ「どういうことですか?」

アヤ「体が、『もう限界だよ』って教えてくれてたんだって。だから、敵じゃなくて......味方なのかも」

ダイキは微笑んだ。

ダイキ「そうですね。体は、いつもあなたの味方です」

具体的な実践プラン


ダイキ「じゃあ、これから具体的に何をするか、一緒に考えましょうか」

アヤ「はい」

ダイキ「まず、呼吸法。これは気づいた時に、一日2、3回やってみる」

アヤ「はい。それならできそうです」

ダイキ「次に、朝起きた時のストレッチ。ベッドの上で、背伸びを10秒」

アヤ「10秒なら......」

ダイキ「それから、1日1回、ベランダに出て外の空気を吸う。5分だけ」

アヤ「はい」

ダイキ「夜は、寝る1時間前からスマホを見ない。できそうですか?」

アヤ「......頑張ってみます」

ダイキ「無理しなくていいですよ。できない日があっても、自分を責めない」

アヤ「......はい」

ダイキ「あと、大事なのは、『できたこと』を記録すること」

アヤ「記録?」

ダイキ「はい。できなかったことじゃなくて、できたことを。『今日は呼吸法を1回やれた』とか」

アヤ「それって......意味あるんですか?」

ダイキ「ものすごく意味があります。人は、できなかったことばかりに目がいきがちなんです。でも、できたことに目を向けると、少しずつ自信がついてくる」

アヤはゆっくりと頷いた。

未来へ


アヤ「先生、正直......不安です」

ダイキ「何が不安ですか?」

アヤ「これから、ちゃんと良くなるのかなって」

ダイキ「良くなる、っていうのは、どういう状態ですか?」

アヤは少し考えた。

アヤ「......体の症状が全部なくなることじゃない、のかも」

ダイキ「どういうことですか?」

アヤ「症状があっても、それを『敵』だと思わなくなること。体の声を聞けるようになること」

ダイキ「素晴らしいですね」

アヤ「あと......完璧じゃない自分を、許せるようになりたいです」

彼女の目には、涙ではなく、静かな決意が浮かんでいた。

アヤ「時間がかかってもいい。ゆっくりでいい。そう思えるようになりたいんです」

ダイキ「それは、もう一歩踏み出していますよ」

アヤ「え?」

ダイキ「さっき、『時間がかかってもいい』って言いましたよね。それって、自分を許し始めている証拠です」

アヤは驚いた顔をした。そして、少しだけ笑った。

アヤ「......そっか」

セッションの終わりに


セッションが終わり、アヤは立ち上がった。

アヤ「今日、来てよかったです」

ダイキ「そう言ってもらえると嬉しいです」

アヤ「体の症状が、敵じゃなくて味方だって気づけたこと。それが一番大きかったです」

ダイキ「その気づきを、大切にしてくださいね」

アヤ「はい。あと......完璧じゃなくていいって、何度も言ってもらえて」

彼女は深呼吸をした。教わった呼吸法で。

アヤ「少し、楽になりました」

ダイキ「それは良かったです。また、困ったことがあったら、いつでも来てください」

アヤ「はい。ありがとうございました」

彼女がドアを開けて出て行く後ろ姿は、来た時よりも少しだけ軽やかだった。

手はまだ少し冷たいかもしれない。緊張した時には汗が出るかもしれない。顔が赤くなることもあるだろう。

でも、それらは全部、体からのメッセージだ。

「もう、無理しなくていいよ」 「ゆっくりでいいよ」 「完璧じゃなくていいよ」

そう言ってくれている、体からの優しい声なのだから。

まとめ


アヤのケースは、多くのキャリアブレイク中の人が経験する「休んでいるはずなのに体調が悪化する」という矛盾を象徴しています。

働いている時は、確かに疲れていました。でも、毎日のルーチンがあり、予測可能な生活でした。

一方、キャリアブレイク中は、物理的には休んでいても、「これからどうなるのか」という不確実性が、体を常に警戒状態にさせていました。

冷え性、多汗、赤面。これらの自律神経症状は、体が発している「もう限界だよ」というサインでした。

大切なのは、これらの症状を「敵」として戦うのではなく、「味方」として受け入れること。

そして、完璧を目指すのではなく、小さな一歩を積み重ねること。

気づいた時に呼吸法をやる

朝、ベッドの上で10秒の背伸び

1日1回、外の空気を吸う

夜は刺激を減らす

できたことを記録する

どれも、完璧にやる必要はありません。

10のうち2つできれば、それで十分。

体は、あなたの味方です。

そのメッセージに、耳を傾けてみてください。


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