なぜ、また同じことを繰り返してしまうのか
カウンセリングルームに入ってきた彼女は、少し疲れた表情をしていた。座るなり、小さくため息をついた。
クライエント「またなんです...また同じタイプの人を好きになって、疲れ果ててしまって」
彼女は俯き加減に言葉を続けた。
クライエント「前の人とも、その前の人とも...結局、私が何とかしてあげようとして、でも全然変わってくれなくて。今回もそう。彼、仕事は不安定だし、お金の管理もできないし...でも、放っておけなくて」
ダイキ「放っておけない、というのはどんな感じですか?」
クライエント「...なんだろう。心配になっちゃうんです。このままじゃダメになっちゃうって。私が支えなきゃって」
彼女の声には、焦りと不安が混じっていた。
ダイキ「彼のことが心配で、支えなきゃいけないと感じる。その気持ちが湧いてくるとき、ご自身の中では何が起こっているんでしょうね」
クライエント「......わかりません。でも、ほっとけないんです。もしかしたら、私がちゃんとサポートすれば、彼は変われるんじゃないかって」
そう言いながら、彼女は手を握りしめた。
もう一つの気づき
ダイキ「少し、昔のことを振り返ってみてもいいですか? 子どもの頃、誰かの世話をしたり、助けたりすることって、ありましたか?」
クライエントは少し考え込んだ。
クライエント「......ありました。家では、私が弟の面倒を見なきゃいけなくて。両親は忙しかったから」
ダイキ「弟さんの面倒を?」
クライエント「はい。宿題を見たり、ご飯の準備を手伝ったり...親に褒められるのって、ちゃんと弟の世話ができたときだけでした」
そこで彼女は少し笑った。でもその笑顔には、寂しさが混じっているように見えた。
クライエント「『お姉ちゃんなんだから』って、いつも言われてて。私が我慢して、みんなが安心できるように...それが当たり前になってました」
ダイキ「誰かの世話をすることで、安心や居場所を得ていた、ということかもしれませんね」
クライエントは静かに頷いた。
ダイキ「その頃、あなた自身は、誰かに甘えたり、助けてもらったりすることはありましたか?」
彼女の表情が曇った。
クライエント「......なかったです。お姉ちゃんだから、しっかりしなきゃいけないって。弱音を吐いたら、『お姉ちゃんなのに情けない』って言われて」
ダイキ「つらかったとき、誰に話していましたか?」
クライエント「...誰にも話せませんでした。話したら、迷惑かけるって思ってたから」
そう言いながら、彼女の目に涙が浮かんだ。
ダイキ「話しても、誰も聞いてくれなかったんですね」
クライエント「......はい」
ダイキ「では、あなたが弟さんの世話をしているとき、どんな気持ちでしたか?」
クライエントは少し考えてから、小さな声で答えた。
クライエント「...嬉しかった、かも」
ダイキ「嬉しかった?」
クライエント「弟が私に『ありがとう』って言ってくれたり、私のこと頼りにしてくれたりすると...なんか、自分が必要とされてるって感じられて。それが嬉しかったんです」
ダイキ「なるほど。つまり、世話をすることで、初めて自分の存在を認めてもらえたんですね」
クライエント「...そうなのかもしれません」
しばらく沈黙が続いた。クライエントは窓の外を見つめながら、何かを思い出しているようだった。
ダイキ「もう一つ、聞いてもいいですか? あなたが弟さんの世話をしているとき、親御さんはどんな反応をしていましたか?」
クライエント「......褒めてくれました。『お姉ちゃんは偉いね』『助かるわ』って」
ダイキ「そのとき、どんな気持ちでしたか?」
クライエント「...嬉しかったです。でも、同時に...」
彼女は言葉を詰まらせた。
ダイキ「同時に?」
クライエント「......寂しかった、かも。本当は、私も甘えたかった。私も、誰かに『大丈夫?』って聞いてほしかった。でも、それを言ったら、親はがっかりするんじゃないかって」
そう言って、彼女は泣き出した。
ダイキ「ずっと我慢してきたんですね」
クライエント「...はい。ずっと、我慢してました」
ダイキは静かに待った。彼女の涙が落ち着くまで、何も言わずにいた。
しばらくして、彼女は顔を上げた。
クライエント「私、今でも同じことをしてるんですね。彼の世話をすることで、必要とされようとして。でも、本当は...本当は、私が誰かに甘えたいんです」
ダイキ「甘えたい、という気持ち。それは、とても自然なことです」
クライエント「でも...甘えるのが怖いんです。甘えたら、嫌われるんじゃないかって」
ダイキ「そうですね。子どもの頃、甘えることが許されなかった。だから、大人になった今も、甘えることができない」
クライエントは大きく頷いた。
ダイキ「でも、本当は、あなたも誰かに支えてもらいたい。だからこそ、相手の世話を焼くことで、『私もあなたを支えたんだから、あなたも私を支えてよ』という無言のメッセージを送っているのかもしれませんね」
クライエント「......そうなんです。でも、彼は全然わかってくれなくて」
ダイキ「それは、ちゃんと言葉にしていないからかもしれません」
クライエント「言葉に...?」
ダイキ「あなたは、『世話をする』ことで愛情を表現しようとする。でも、相手には、あなたが本当に何を求めているのか、伝わっていないんです」
クライエントは驚いたように顔を上げた。
クライエント「...そうか。私、ちゃんと伝えてなかったんですね。『私も支えてほしい』って」
ダイキ「そうです。そして、それは恥ずかしいことでも、悪いことでもありません」
「世話をする私」が恋愛でも発動する
ダイキ「今の彼との関係でも、同じようなパターンがあるように感じますか?」
クライエント「...そうかもしれません。彼が困ってると、私が何とかしなきゃって、すごく焦るんです。お金を貸したこともあるし、仕事を見つけるのを手伝ったり...」
ダイキ「それをしているとき、どんな気持ちですか?」
クライエント「......不安、です。もし私がやらなかったら、彼はもっとダメになるんじゃないかって。でも同時に、私が必要とされてる感じもあって...」
彼女の目に、涙が浮かんだ。
クライエント「なんか、矛盾してますよね。苦しいのに、やめられないんです」
ダイキ「苦しいのに、やめられない。その感覚、とても大切だと思います」
心の仕組みに気づく
しばらく沈黙が続いた。クライエントは俯いたまま、何かを考えているようだった。
ダイキ「もし、彼があなたの助けを必要としなくなったら...どうなると思いますか?」
その質問に、クライエントはハッと顔を上げた。
クライエント「......え?」
ダイキ「彼が自立して、あなたの助けがいらなくなったとき、どんな気持ちになると思います?」
クライエントは答えに詰まった。しばらく考え込んだあと、小さな声で言った。
クライエント「......寂しい、かも」
その言葉を口にした瞬間、彼女の目から涙がこぼれた。
クライエント「なんで...なんで泣いてるんだろう。彼が自立するのって、いいことなのに...」
ダイキ「いいことなのに、寂しい。その気持ち、どこから来ると思いますか?」
クライエント「...わかりません。でも...もしかして、私、彼に必要とされたいだけなのかな。彼が困ってるから好きなんじゃなくて...必要とされることで、私の存在価値を感じてたのかもしれない」
彼女は両手で顔を覆った。
クライエント「そんなの、ひどいですよね。彼のためじゃなくて、自分のために世話してたなんて...」
ダイキ「ひどいこと、ですか?」
クライエント「...だって」
ダイキ「あなたは、子どもの頃から、誰かの世話をすることでしか愛されなかった。それが、今のあなたのパターンになっているだけかもしれません」
クライエントは顔を上げて、ダイキを見た。
ダイキ「人には、誰かを世話したいという気持ちが自然に備わっています。でも、その気持ちが過剰に働いてしまうことがあるんです。自分の不安を埋めるために、必要以上に相手の世話を焼いてしまう。心理学では、これを『世話システムの過活性化』と呼びます」
クライエント「......過活性化」
ダイキ「誰かの役に立ちたい、助けたい。その気持ち自体は素晴らしいものです。でも、それが自分の不安や孤独を埋めるための手段になってしまうと、相手も自分も苦しくなる」
クライエントは静かに頷いた。
愛着と世話の関係
ダイキ「もう少し、詳しくお話ししてもいいですか?」
クライエント「...はい」
ダイキ「人が誰かと親密な関係を築くとき、いくつかの心の仕組みが働きます。その一つが、『世話をする』という仕組み。もう一つが、『愛着』という仕組みです」
クライエント「愛着...」
ダイキ「愛着というのは、大切な人との結びつきを求める気持ちのことです。子どもの頃、親に安心して甘えられた人は、大人になっても安心して人と関われる。でも、親が不安定だったり、自分の気持ちを受け止めてもらえなかった人は、『不安型』という愛着パターンを持ちやすいんです」
クライエント「私も...?」
彼女の声は少し震えていた。
ダイキ「不安型の人は、相手に見捨てられるんじゃないかという不安が強い。だから、相手をつなぎ止めるために、過剰に世話を焼いてしまうことがあります。それが、『世話システムの過活性化』です」
クライエントは、何か腑に落ちたような表情をした。
クライエント「だから...だから私、いつも『放っておけない』人を選んでたんですね。世話が必要な人なら、私を必要としてくれるから」
ダイキ「そうかもしれませんね」
しばらく沈黙が続いた。クライエントは窓の外を眺めながら、何かを整理しているようだった。
クライエント「でも、それって...結局、本当の意味で愛し合ってるわけじゃないですよね」
ダイキ「『本当の意味で愛し合う』というのは、どういうことだと思いますか?」
クライエント「...わかりません。でも、少なくとも、相手を変えようとしたり、コントロールしようとしたりすることじゃない気がします」
ダイキ「そうですね。本当の愛というのは、相手をありのまま受け入れること。そして、自分自身もありのままでいられること。でも、不安が強いと、それが難しくなってしまうんです」
なぜ「ダメ男」を選んでしまうのか
ダイキ「もう一つ、気になっていることがあるんですが...あなたはいつも、『世話が必要そうな人』を選んでいるとおっしゃいましたよね」
クライエント「...はい」
ダイキ「では、もし、すごく自立していて、経済的にも安定していて、あなたの助けを全く必要としない男性が現れたら、どう感じますか?」
クライエントは少し考え込んだ。
クライエント「......正直に言うと、あんまり魅力を感じないかもしれません」
ダイキ「どうしてでしょう?」
クライエント「なんだろう...物足りない、というか。私がいてもいなくても同じなんじゃないかって思っちゃうかも」
ダイキ「なるほど。つまり、相手が困っていることで、あなたは自分の存在価値を感じていたんですね」
クライエントは驚いたように顔を上げた。
クライエント「......そうなんですね。自分では気づいてなかったけど、そうだったのかもしれません」
ダイキ「これは、決してあなただけの問題じゃないんです。多くの人が、同じようなパターンにはまっています」
彼女は少しほっとしたような表情を見せた。
ダイキ「特に、子どもの頃に『誰かの役に立つこと』でしか愛されなかった経験がある人は、大人になっても同じパターンを繰り返しやすい。心理学では、これを『再演』と呼んだりします」
クライエント「再演...」
ダイキ「子どもの頃のパターンを、無意識のうちに何度も繰り返してしまう。それは、『今度こそうまくいくかもしれない』という、心の中の小さな希望があるからかもしれません」
クライエントは静かに頷いた。
クライエント「でも、結局うまくいかないんですよね」
ダイキ「そうですね。なぜなら、相手を変えようとしている限り、本当の意味での対等な関係は築けないからです」
「助けたい」の裏にある不安
ダイキ「少し角度を変えてお聞きしますが...彼を助けられなかったら、どうなると思いますか?」
クライエント「え...?」
ダイキ「もし、あなたがどんなに頑張っても、彼が変わらなかったら。あるいは、彼があなたの助けを拒否したら。どんな気持ちになると思いますか?」
クライエントは少し考えてから、小さな声で答えた。
クライエント「......怖い、です」
ダイキ「何が怖いんでしょう?」
クライエント「わかりません。でも、すごく怖いんです。彼がダメになっちゃったら、それは私のせいだって思っちゃうかもしれない」
ダイキ「彼がダメになるのは、あなたのせい?」
クライエント「...だって、私が助けなかったから」
ダイキ「では、彼が自分で立ち直ったら?」
クライエント「......それは、それで...嬉しいはず、なんですけど」
彼女の言葉は、どこか歯切れが悪かった。
ダイキ「でも、同時に寂しさも感じるかもしれませんね」
クライエント「...はい」
彼女は涙をこらえながら、続けた。
クライエント「なんか、矛盾してるんです。彼が幸せになってほしい。でも、私がいなくても幸せになれるなら、私っていらないんじゃないかって。そう思うと、すごく怖くて」
ダイキ「その恐怖、よくわかります。あなたは、『誰かの役に立つこと』でしか、自分の価値を感じられなかった。だから、相手が自立してしまうと、自分の存在意義がなくなるように感じてしまうんですね」
クライエントは顔を覆って泣き出した。ダイキは静かに待った。
しばらくして、彼女は顔を上げた。
クライエント「...私、間違ってたんですね。彼のためじゃなくて、自分のために必死になってた」
ダイキ「間違っていた、というより...あなたなりに必死だったんだと思います。自分の存在価値を確認するために、誰かを助け続けるしかなかった」
クライエント「でも、それって...」
ダイキ「それは、とても苦しい生き方ですよね」
クライエントは大きく頷いた。
未来への一歩:自分を大切にする
ダイキ「では、これからどうしたいですか?」
クライエント「...わかりません。でも、このパターンは変えたいです」
ダイキ「どんなふうに変えたいですか?」
クライエント「......世話をしなくても、愛される自分でいたい。ありのままの私で、関係を築きたい」
その言葉は、力強かった。
ダイキ「それは、とても大切な一歩ですね。では、まず何から始めますか?」
クライエント「...まず、彼との距離を少し取ってみようと思います。彼が困ってても、すぐに助けない。本当に助けが必要なのか、それとも私が勝手に心配してるだけなのか、ちゃんと見極めたいです」
ダイキ「それは勇気がいることですね」
クライエント「怖いです。でも...やってみます」
彼女は、初めて笑顔を見せた。
ダイキ「具体的には、どんなことをしないようにしますか?」
クライエント「......お金を貸すのは、もうやめます。それから、彼が仕事のことで愚痴を言っても、すぐに解決策を提案しない。ただ、話を聞くだけにしてみます」
ダイキ「いいですね。それをやってみて、もし彼が怒ったり、離れていったりしたら、どうしますか?」
クライエントは少し考え込んだ。
クライエント「......それは、それでいいのかもしれません。本当に私のことを大切に思ってくれてるなら、お金を貸さなくても、問題を解決してあげなくても、一緒にいてくれるはずだから」
ダイキ「そうですね。もし彼が離れていったとしたら、それは『あなた』が必要だったんじゃなくて、『あなたの助け』が必要だっただけかもしれません」
クライエント「...そうかもしれないですね」
彼女の表情は、少し寂しそうだったが、同時に決意も感じられた。
自分の気持ちを大切にする練習
ダイキ「もう一つ、大切なことがあります。自分自身を大切にすること」
クライエント「自分を...大切にする?」
ダイキ「はい。誰かの世話をする前に、まず自分の気持ちに目を向ける。『私、今どう感じてる?』って、自分に問いかけてみてください」
クライエント「...それが難しいんです。いつも、相手のことばかり考えてしまって」
ダイキ「では、練習してみましょう。今、この瞬間、あなたはどんな気持ちですか?」
クライエントは少し戸惑いながらも、自分の内側に意識を向けた。
クライエント「......少し、ほっとしてます。自分のパターンがわかって、安心したというか」
ダイキ「ほっとしてる。それは大切な感覚ですね。他には?」
クライエント「...でも、同時に不安もあります。これから、どうすればいいのか。本当に変われるのか」
ダイキ「不安もある。その両方を感じている、ということですね」
クライエント「はい」
ダイキ「それでいいんです。気持ちは一つじゃない。いろんな感情が同時に存在していて、それを認めることが大切です」
クライエントは何度か頷いた。
ダイキ「これから、日常生活の中で、何かしようとするとき、まず『私は今、どう感じてる?』って自分に聞いてみてください。彼を助けようとするとき、『本当に彼のため? それとも、私の不安を埋めるため?』って」
クライエント「......難しそうです」
ダイキ「最初は難しいと思います。でも、少しずつ練習していけば、自分の本当の気持ちに気づけるようになります」
パターンを変えるために必要なこと
ダイキ「最後に、もう一つお伝えしたいことがあります」
クライエント「...はい」
ダイキ「あなたが今まで繰り返してきたパターンは、一朝一夕には変わりません。長い時間をかけて身についたものだからです」
クライエント「...そうですよね」
ダイキ「だから、焦らないこと。少しずつ、小さな変化を積み重ねていくことが大切です」
クライエント「小さな変化...」
ダイキ「例えば、彼が困っていても、一度立ち止まって深呼吸する。『これは本当に必要なこと?』って自分に問いかける。それだけでもいいんです」
クライエント「深呼吸して、自分に問いかける...」
ダイキ「そうです。そして、もし失敗しても、自分を責めないこと。『ああ、また同じことしちゃった』って気づけたら、それだけで大きな進歩です」
クライエントは少し安心したような表情を見せた。
クライエント「ありがとうございます。なんだか、少し希望が見えてきました」
ダイキ「それは、あなた自身が向き合おうとしたからです。今日、ここで話したことを、忘れないでいてくださいね」
クライエント「はい。忘れません」
3ヶ月後
それから3ヶ月が経ち、彼女は再びカウンセリングルームを訪れた。
ダイキ「お久しぶりです。お元気でしたか?」
クライエント「はい。いろいろありましたけど...なんとかやってます」
彼女の表情は、以前よりもずっと明るく見えた。
ダイキ「彼とは、どうですか?」
クライエント「......別れました」
ダイキ「そうなんですね」
クライエント「はい。距離を取るようにしたら、彼、すごく怒ったんです。『冷たくなった』『前みたいに優しくない』って。それで、私、ハッとしたんです」
ダイキ「何に気づいたんですか?」
クライエント「彼は、私のことを『女性』として見てたんじゃなくて、『都合のいい存在』として見てたんだなって。だから、私が変わった途端、怒ったんだって」
ダイキ「なるほど」
クライエント「最初はすごく悲しかったです。でも...今は、すっきりしてます。これでよかったんだって」
彼女は穏やかな笑顔を見せた。
クライエント「それに、気づいたことがあるんです」
ダイキ「どんなことですか?」
クライエント「私、一人でも大丈夫なんだなって。誰かを世話しなくても、私には価値があるんだって。そう思えるようになりました」
ダイキ「それは、素晴らしい気づきですね」
クライエント「ありがとうございます。これからは、自分を大切にしながら、本当に対等な関係を築ける人と出会えたらいいなって思ってます」
ダイキ「きっと、出会えますよ。あなたは、もう自分のパターンに気づいているから」
彼女は力強く頷いた。
カウンセリングを終えた彼女の背中は、以前よりもずっと軽やかで、前を向いているように見えた。
心理学的知見の補足
このケースで登場した心理学の概念について、少し補足します。
愛着理論(Attachment Theory)
イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱した理論で、幼少期の養育者との関係が、大人になってからの人間関係のパターンに影響を与えるというものです。
愛着スタイルには主に3つのタイプがあります:
安全型(Secure):幼少期に安定した愛情を受けて育った人。大人になっても安心して人と関わることができる。
不安型(Anxious):幼少期に不安定な養育を受けた人。相手に見捨てられる不安が強く、過度に愛情を求めたり、世話を焼いたりする。
回避型(Avoidant):幼少期に拒絶された経験がある人。親密な関係を避け、一人でいることを好む。
今回のクライエントは、不安型の愛着スタイルを持っていたと考えられます。
世話システム(Caregiving System)の過活性化
人間には、誰かを世話したいという本能的な欲求があります。これは特に、親が子どもを育てるときに強く働きます。しかし、この世話システムが過剰に働いてしまうと、相手が実際には助けを必要としていないのに、過度に世話を焼いてしまうことがあります。
これを心理学では「世話システムの過活性化(Hyperactivation of Caregiving System)」と呼びます。特に不安型愛着を持つ人は、相手をつなぎ止めるために、過剰に世話を焼いてしまう傾向があります。
共依存(Codependency)
今回のケースは、いわゆる「共依存」の関係でもあります。共依存とは、お互いが不健康な形で依存し合っている関係のことです。
クライエントは、「世話をすること」で自分の存在価値を感じていた
彼は、「世話をされること」でクライエントにつながれていた
このような関係では、どちらも本当の意味で満たされることはありません。
パターンを変えるには
長年続けてきたパターンを変えるのは簡単ではありません。しかし、以下のステップを踏むことで、少しずつ変化を起こすことができます。
気づくこと:自分のパターンに気づくことが第一歩
自分の気持ちに目を向けること:行動する前に、「私は今、どう感じている?」と自分に問いかける
小さな変化を積み重ねること:一度に全てを変えようとせず、小さなことから始める
失敗を受け入れること:失敗しても自分を責めず、「気づけたこと」を評価する
大切なのは、焦らず、自分を責めず、少しずつ進んでいくことです。
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🙋 このブログを書いている人について
だいき|産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
会社員時代、職場の人間関係でメンタルが限界に。「このままではまずい」と一念発起し、コミュニケーションを学び直した経験が、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントの資格取得につながりました。
恋愛・婚活でも7年間で88人とデートを重ねながら、うまくいかない時期が長く続きました。その苦しさを知っているからこそ、脳科学・進化心理学・愛着理論といった知識を「自分ごと」として学び続けてきました。
キャリアブレイクコミュニティでは160回以上のワークショップを主催。さまざまな悩みや状況を持つ方と向き合い続けてきた経験が、相談の土台になっています。
「記事を読んで、もう少し深く話してみたい」と感じたら、ぜひココナラのサービスをのぞいてみてください。