今回はノワールちゃんの恋のお話のその後になります。
ノワールちゃんとMちゃん視点
勇気を出して地龍のMちゃんのもとへ会いに行ったノワールちゃん。
そんな彼を待っていたのは、彼女の盛大な涙でした。
「ノワールちゃんのばかぁ!
なんで、なんでずっと会いに来てくれなかったのっ!
私、ずっと会いたかったのに……っ!」
Mちゃんはそう叫ぶなり、溢れる想いをぶつけるように、
自分より小さなノワールちゃんを包み込むようにして
勢いよく抱きつきました。
そのまま彼の頭を自分の胸元にギュッと抱え込み、
堰を切ったように泣きじゃくっています。
「ごっ、ごめんね……。
僕も、僕もずっと、Mちゃんに会いたかったよ」
ノワールちゃんは、その時、
改めてリューさんの言葉を思い出しました。
「ノワール殿が怖がって立ち止まっている間、
彼女がどれほど寂しい思いをしているか、考えたことはありますか?」
その問いかけが、今になって鋭い痛みとともに胸に突き刺さります。
自分の自信のなさのせいで、
大好きな彼女をこんなにも悲しませ、不安にさせていた――。
その事実に、ノワールちゃんは消えてしまいたいほど情けなく、
申し訳なさで胸が押しつぶされそうでした。
彼は泣きじゃくるMちゃんの背中に手を回し、
ずっと独りで抱え込んできた「本当の理由」を話し始めました。
かつてMちゃんの(お兄ちゃん代わりの地龍の)
Yちゃんに「まだ小さい」とからかわれたこと。
Mちゃんが庇ってくれたけれど、
守られる自分の未熟さがたまらなく情けなかったこと……。
「僕、Mちゃんより背も低いし、成長も遅いから……。
Mちゃんの隣にいてもいいのかなって、不安で怖くなっちゃったんだ」
震える声で紡がれる告白を、
Mちゃんは何度も大きく頷きながら、最後まで静かに聞いてくれました。
話し終えた彼を前に、
Mちゃんはしばらくなにかを堪えるように俯いていましたが……
「……そっか。そんなふうに、ずっと一人で悩んでたんだね」
ぽつんとそう呟くと、Mちゃんはぱっと顔を上げ、
ノワールちゃんのおでこに「ぴんっ」と軽くデコピンをしました。
「あいたっ……!」
驚いておでこを両手で押さえるノワールちゃん。
驚く彼をぐいっと引き寄せ、
Mちゃんは真っ直ぐにその目を見つめました。
「私、怒っているの。勇気を出してくれたのは嬉しい。
でも、どうして一番に私を頼ってくれなかったの?
私、ノワールちゃんの力になりたかった。
一人きりでつらい思いをさせちゃったことが、本当に悲しいの」
目にあふれる涙を浮かべ、彼女は一気に想いを伝えました。
「私にとっては、背が高いとか低いとか関係ない。
私は、そのままのノワールちゃんが大好きなの。
こうしてまた会えるのを、ずっと信じて待っていたんだから……っ!」
寂しさ、不安、怒り、そして何より会えた喜び。
制御できないほど膨れ上がった感情に、
Mちゃんの心はもうぐちゃぐちゃでした。
けれど、今は何よりも「会えたこと」が嬉しくて、
彼女はたまらず、ノワールちゃんを再びギュッと抱きしめました。
自分より少し背の高い彼女の腕の中にすっぽりと収まり、
その温もりに包まれたノワールちゃんは、
抱えていた不安が溶けていくのを感じました。
ずっと寂しい思いをさせていたのに、
会いに来なかった自分を突き放すどころか、再会を心から喜び、
一緒に泣いてくれる。
自分以上に自分の心に寄り添い、
本音を話してくれたことを「嬉しい」と
言ってくれる彼女の真っ直ぐな愛が、
情けなさに震えていた
ノワールちゃんの心を温かく包み込んでいきました。
(……ああ、こんなにも僕のことを想ってくれている優しい子を、
僕は一人きりにさせていたんだ……)
そう思うと申し訳なさと共に、
今まで以上にMちゃんへの愛しさがこみ上げてきました。
言葉にできないほどの感謝を込めて、
ノワールちゃんは自分を抱きしめるMちゃんの背中にそっと手を回すと、
その温もりを確かめるように強く、優しく抱きしめ返しました。
「……ごめんね、Mちゃん。
Mちゃんを信じてなかったわけじゃないんだ。
ただ、僕が勝手に……Mちゃんに、カッコ悪いところを見せたくなくて……
ずっと、無理に背伸びをしていたんだと思う。
でも、もう二度と、Mちゃんをこんなふうに悲しませたりしないよ!
これからはどんなことでも、二人で話していこうね。……
僕も、世界で一番Mちゃんが大好きだよ」
ノワールちゃんの真っ直ぐな宣言に、
Mちゃんは涙をぬぐいながら何度も何度も
「うん、うん……!」と頷きました。
ようやく伝えられた本音と、自分をまるごと受け止めてくれた彼女の温もり。
その深い愛に触れて、ノワールちゃんの心にずっと刺さっていた鋭いトゲは、
跡形もなくきれいに消えていきました。
ちなみに、余計な一言で二人の仲をかき乱したYちゃんには、
手厳しい試練が待っていました。
ノワールちゃんから当時の悩みを聞かされたMちゃんは、
あの日彼を一生懸命にかばった自分の行動が、
まさか彼を「情けない」と追い詰め、
あんなにも深く傷つけていたなんて夢にも思っていませんでした。
心の隅に追いやっていたはずの古い記憶を引っ張り出して、
「お兄ちゃんがあんな意地悪を言うから、
ノワールちゃんが一人で悩んじゃったんじゃない!」と、
彼女は大激怒。
「ノワールちゃんを悲しませたお兄ちゃんなんて大っ嫌い!」と、
ヘソを曲げてしまったのです。
ノワールちゃんに想いをぶつけ、彼からの本音も聞くことができた。
けれど、一人で不安な日々を過ごしてきた
Mちゃんの胸の奥には、
再会できた喜びだけでは消化しきれない
「やり場のない気持ち」が
残っていました。
もちろん、勇気を出して話してくれたノワールちゃんを
責めるつもりなんて、
もうこれっぽっちもありません。
むしろ、これほど深く傷ついていた彼を目の当たりにした今、
あの日彼を苦しめた原因をわざわざ掘り起こして、
また辛い思いはさせたくないという、
彼女なりの優しさがありました。
だからこそ、そのやり場のない感情のすべてを、
きっかけを作ったお兄ちゃんへとぶつけることにしたのです。
「お兄ちゃんが意地悪したから
ノワールちゃんずっと悩んじゃったじゃない!」と、
とにかく「お兄ちゃんが悪い」という一点張りで押し通す。
それは、仲良しのお兄ちゃんなら受け止めてくれるはずという、
甘えに近い思いもあったのかもしれません。
一度座り込んだら山のごとく動かない、
「地龍の頑固さ」を発揮してしまった彼女。
Yちゃんが本当の意味で許してもらえるまでには、
これから山ほどのお菓子と、
それ以上の誠実な努力が必要になったのでした。
一方で、2人がうまくいったことを誰よりも喜んだのは、
すばるちゃんとリューさんでした。
早速、すばるちゃんとリューさんと、小龍ちゃん達や、
ひそかに呼ばれたプラムちゃんとこのかちゃん、
冬眠から起きてきた森の木の精霊さんと共に、
手作りの飾りをたくさん準備して、
『ノワールちゃんとMちゃん、よかったね!の会』を
盛大に開きました。
主役として招待されたノワールちゃんとMちゃんは、
みんなの温かい拍手に包まれ、
2人で恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらも、
そのお祝いを心から喜びました。
……Yちゃんがどうやって許しを請うたのか、
そして森のパーティーがどれほど賑やかだったのか。
それはまた、別のお話です。
それからのノワールちゃんとMちゃんは、
周りの誰もが当てられてしまうくらい、ラブラブな毎日を過ごしました。
一度は不安で苦しい日々を過ごした二人。
だからこそ、「もうあんな思いはしたくない」という共通の願いが、
二人をより素直にさせました。
今では、心の中に不安や不満が芽生えても、
溜め込まずに真っ先に話し合える、強い絆で結ばれています。
会いたい時にはいつでも会いに行き、
一緒に穏やかな時間を過ごす二人。
どうしても離れていなければならない時も、
すばるお兄ちゃんが作ってくれた特製スマホが大活躍しました。
二人は画面越しに毎日楽しそうに、いつまでも途切れることのない
おしゃべりを楽しんでいるのでした。
その後、プラムちゃんはこのかちゃんと結婚し、
今では二人の間に水青龍の娘、澄麗(すみれ)ちゃんがいます。
家族三人で、毎日元気に、
そして仲睦まじく幸せに暮らしているようです😊
一方、すばるちゃんやリューさんと共に
猫妖精マキさんの事務所へと引っ越したノワールちゃんは、
今でも遠距離恋愛を楽しんでいるようです。
最近の彼の密かな悩みは、同居している「お兄ちゃん」のこと。
すばるちゃんに一向に浮いた話がないため、
「お兄ちゃんを差し置いて、先に結婚してしまってもいいものか……」と、
持ち前の真面目さで真剣に考え込んでしまっているようです(笑)
あと実はノワールちゃんはYちゃんが苦手です。
「小さい」と言われたトラウマで
会うことを考えると「また何か言われるかも……」と
萎縮してしまうのです。
けれど、今のYちゃんには、
もうノワールちゃんに余計なことを言う余裕なんてありません。
元々は「可愛い妹に虫がつくのは許さん!」と
兄貴風を吹かせて牽制していたのが騒動の引き金でしたが、
結果として
「本気で怒らせた妹分(Mちゃん)がどれほど恐ろしいか」を
身をもって知ることになったからです。
すっかり懲りた彼は、
(もう二度と余計な口出しはしない)と心に決めています。
もっとも、そんなYちゃんの内心を
ノワールちゃんは知る由もありません。
遠距離恋愛中なのもあり、
今の彼らには、三人が顔を合わせる機会など
全然ないからです。
遠距離恋愛中のMちゃんとノワールちゃんにとって、
次に三人が揃うのはいつになることか。
けれど、再び顔を会わせる時もきっと、
彼女はノワールちゃんの隣を陣取って、
お兄ちゃんには少しだけ厳しい視線を向けているはずです。
中心にいる「実は一番強い」彼女を介して、
縮こまるノワールちゃんと冷や汗をかくYちゃん……
そんな絶妙な距離感の三つ巴は、
これから会うたびに繰り返されるのかも知れません。
以上です。
ここからは
特に印象的だった二つのカップルの象徴的な行動の
意味も載せますね。
プラムちゃんとこのかちゃんの
「目をつぶって開いた行為」は魂の共鳴を意味します。
(内なる静寂でリズムを合わせ、ひとつの命として目覚める儀式)
◎ 「龍の目」を閉じ、心眼をひらく
告白の返事をするこのかちゃんも、それを受けるプラムちゃんも、
溢れそうな緊張と高揚感に耐えきれず、思わず瞳を閉じました。
龍にとって視覚は外側の敵を捉えるための力。
あえてその外界を捉える力を捨て、龍としての本能(心眼)で
相手を感じようとしたからです。
視界の暗闇は、二人の魂が溶け合う「繭(まゆ)」のような役割を果たし
世界から二人を優しく隔絶しました。
◎ 鼓動(龍動)で交わす命の契約
激しく波打つ鼓動は、幼き龍たちが互いの存在を必死に求めて刻む
「命のリズム」です。
不確かな言葉に頼るのではなく、触れ合う肌から伝わる「トクトク」という
柔らかな響き。不安で早まっていた二人の鼓動が、
やがて一つの安らぎへと重なり合ったとき、魂の源流が同じ波長で溶け合い、決して解けぬ「深いつがいの契約」が結ばれました。
◎ 脱皮を経て、天へ昇る光の絆
「怖くて目を閉じる」という幼い自分たちの怯えは、
互いの温もりを感じることで「確かな喜び」へと変わっていきました。
暗闇の中で手探りだった絆が、光となって弾ける瞬間。
喜びの中で再び目を見開くプロセスは、龍における「精神的な脱皮」です。
再び光を捉えた二人の瞳には、もはや地上に縛られる迷いはありません。
その絆はより高次な次元へと昇り、天を駆ける光の強さを手に入れました。
総括すると、
「互いに瞳を閉じ、重なる鼓動を道標にして、真実の絆という高天(たかま)へ共鳴し舞い上がる、静寂の儀式」と、いえます。
龍の魂の覚醒:デコピンが刻む「一生のつがい」の契約
◎ 命の次に大切な「聖域」への許し
龍にとって、尻尾は生命の源であり、角が宿る頭頂部は誇りの象徴です。
兄であるすばるちゃんや神様ですら、
そこを優しく撫で、慈しみ守るに留まります。
しかし「額(ひたい)」は、自らの意志が宿る最も不可侵な聖域です。
魂を分かち合った唯一無二の存在でなければ、
指一本触れることさえ許されない場所。
ノワールちゃんがMちゃんのデコピンを受け入れたのは、
「自分のすべてをさらけ出し、運命を委ねた」という究極の
信頼の証なんです。
◎ 「独りで飛ぼうとする頑なな鱗」を剥がす一撃
Mちゃんに守られる自分を「情けない」と攻め、
独りで立とうと必死だったノワールちゃん。
その強がりは、自分を守るために固めてしまった
分厚い鱗のようなものでした。
Mちゃんの愛がこもったデコピンは、その頑なな鱗を一撃で
弾き飛ばしました。
それは、孤独という霧を払い、
「隣にいる唯一の理解者」と「共に翔けるべき高い空」を
同時に見極める眼をひらかせる、
選ばれた者同士にしか成し得ない儀式です。
◎ 「つがい」として共に天を翔ける誓い
「どうして頼ってくれなかったの?」というMちゃんの怒りは、
彼を弱者として見ているのではなく、
「魂の対等なパートナー」として信頼している証です。
デコピンという衝撃は、独りで飛ぼうとする彼を引き止め、
「二人でひとつの風を起こして飛ぶのだ」という龍のつがいの絆を、
その魂に深く刻み込みました。
総括すると
「閉ざされた目を強引に『天』へと向け、
足元の闇を砕いて『一生のつがい』と共に翔ける光を指し示す、
魂の覚醒儀式」と、言えます。
物語を繋ぐ「画竜点睛」の真実:静と動のコントラスト
龍の「額」が魂の入り口なら、「目」はその魂が世界と繋がるための光。
二組のペアは、対照的なアプローチでその瞳を完成させました。
静の共鳴(プラムちゃんとこのかちゃん)
二人は一度目を閉じ、外界を消し去ることで過去の恐怖を脱ぎ捨てました。
再び開かれたその瞳は、「つがいと共にある未来」だけを映す
清らかな鏡へと生まれ変わりました。
動の覚醒(ノワールちゃんとMちゃん)
額を叩かれた衝撃が、足元の闇(劣等感)に囚われていた意識を
強引に引き剥がしました。
Mちゃんの指先によって「最後の瞳」を書き入れられた龍のごとく、
ハッと顔を上げたノワールちゃんの瞳は、隣にいる一生のつがいと、
共に翔けるべき果てしない天を捉えています。
「画竜点睛(がりゅうてんせい)」——
それは、最後に瞳を描き入れることで龍に真の命を宿し、天へと放つ儀式。
独りでは完成し得なかった龍の瞳に、
つがいの指先が「最後の一撃」を加えたとき。
二組の絆は、迷いのない光を宿し、共鳴しながら果てしない高天(たかま)へと舞い上がるのです。
以上です。
プラムちゃん、このかちゃん、ノワールちゃんの恋の話は
これで終了です。
また機会がありましたら違う小龍ちゃんたちの恋の話を
載せさせていただきますね☆