〜肩書を失った後に見つける、本当の『自分の価値(マタリング)』〜
はじめに
「定年を迎えたら、これからは毎日が日曜日だ。好きなだけ趣味や旅行を楽しもう」
そんな風にリタイア後の生活を心待ちにしている方も少なくないかもしれません。しかし、実際にその日を迎えたとき、私たちの心にはどのような変化が訪れるのでしょうか。
2026年4月12日、米国の有力紙『USA TODAY』に興味深いエッセンスが詰まった一つの記事が寄稿されました。執筆したのは、キャリアや人生の転機(トランジション)研究の第一人者であるナンシー・K・シュロスバーグ先生です。その記事のタイトルはこうです。
“Retirement is not the problem. It’s the decades that follow.” (退職が問題なのではない。その後に続く『数十年』こそが問題なのだ。)
人生100年時代といわれる現代、60代で退職したとしても、その先にはさらに20年、30年といった長い月日が待っています。シュロスバーグ先生は、退職という一瞬のイベントよりも、その後に続く「圧倒的な日常」をどう生きるかこそが真の課題であると投げかけています。
今回は、この問いかけをヒントに、3回に分けて私たちがリタイア後の長い人生を自分らしく豊かに生きるためのヒントを、キャリアコンサルタントの視点から緩やかに紐解いていきたいと思います。
現代の社会情勢と、シニア層が直面するリアルな葛藤
近年、高年齢者雇用安定法の改正などにより、多くの企業で定年延長や再雇用制度が定着しつつあります。「働ける環境」が整う一方で、ビジネスの現場からはシニア層の新たな葛藤の声も聞こえてくるようになりました。
現役時代に管理職や専門職として第一線で活躍し、組織を牽引してきた方ほど、再雇用によって役割や待遇が変わった際、ある種の「不完全燃焼感」を抱くことがあるようです。
「周囲から、腫れ物を触るように扱われている気がする」
「自分の知識や経験が、今の組織のスピード感に求められていないのではないか」
単に「収入を得るための働く場」があるだけでは、どこか満たされない思いが生じてしまう。それは、それまで自分を定義づけていた「組織での肩書」や「明確な役割」が一瞬にして形を変え、社会の中での自分の存在が見えづらくなる(インビジブル化する)ような感覚から来ているのかもしれません。
お金や健康の計画は万全でも、「心の居場所」の計画はどうだろうか――そんな風に立ち止まる瞬間が、誰しもあるのではないでしょうか。
「マタリング・スパン」という第3の指標
ここで注目したいのが、シュロスバーグ先生が提唱する「マタリング(Mattering:自分は価値ある存在であるという感覚、自分が重要であるという実感)」という概念です。
私たちは健康に生きる期間を「健康寿命(ヘルススパン)」、資産が続く期間を「資産寿命(ウェルススパン)」と呼びますが、これからの時代は第3の指標として、「自分が社会や誰かにとって重要であると感じられる期間(マタリング・スパン)」を意識してみるのも一つの手です。
組織の肩書を脱いだ後も、この「マタリング(自分の重要性)」を維持・強化していくために、先生は以下の4つの要素(SAID)を緩やかな指針として提示しています。
・Significant(重要性): 周囲から一人の人間として、その存在を認識されていること
・Appreciated(感謝): 自分のこれまでの経験やちょっとした行動に、価値を認めてもらえること
I・nvested in(関心): 誰かから気にかけてもらい、気楽に声をかけてもらえる関係があること
・Depended on(依存・信頼): 「あなたにこれをお願いしたい」と、他者から頼りにされること
これらは決して、かつてのような「大きなビジネスを動かす」といった大層なものである必要はありません。「身近な誰かの役に立っている」という小さな実感が、明日を生きるエネルギー(目的意識)につながっていくのではないかと考えられています。
「セカンドキャリア」から「ライフキャリア」への視点の転換
これまで多くの場面で、退職後の人生は「セカンドキャリア(第2の職業人生)」という、仕事を中心とした文脈で語られがちでした。
もちろん、働き続けることも素晴らしい選択肢ですが、少し視野を広げて、人生全体をデザインする「ライフキャリア」の視点に立ってみてはいかがでしょうか。
仕事、地域活動、趣味のコミュニティ、あるいは家族との時間。これらすべての役割を含めたものが「ライフキャリア」です。
名刺の肩書に頼らない自分自身の強みや、組織外での人間関係を、現役時代のうちからスモールステップで少しずつ耕しておくこと。
たとえば、社外の勉強会に顔を出してみる、地域のボランティアに興味を持ってみる、あるいは家族や友人の「ちょっとした相談事」に耳を傾けてみる。そんな小さな試行錯誤が、リタイア後の「数十年」を支える強固な土台(マタリング)になっていくのかもしれません。
まとめ
退職は、何かの「終わり」ではなく、人生という物語の「新しい章の始まり」に過ぎません。急いで次の正解を見つけようとしなくても大丈夫です。まずは「自分にとって、誰かに認められたり頼られたりする瞬間とはどんな時だろう?」と、ご自身の心に問いかけてみることから始めてみませんか。
私たちキャリアコンサルタントは、あなたが組織の看板を外したときに見えてくる、あなただけの本当の輝きを一緒に見つける伴走者でありたいと願っています。
次回は、退職後に多くの人が通る「何者でもない自分」にモヤモヤする時期――トランジションにおける「ニュートラル・ゾーン」の過ごし方について、一緒に考えていきましょう。
*関連ブログ記事(シリーズ:「退職後の数十年を生きる」)
・第1回:「セカンドキャリア」から「ライフキャリア」へのパラダイムシフト(今回の記事)
・第2回:トランジション(転機)の「ニュートラル・ゾーン」を生き抜く
・第3回)「与える存在(What can I give?)」への変容
最後まで読んでいただき誠に有難うございました。
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*企画制作編集:ワイ・キャリアサポーターズ
*この記事の文章作成には、Google社の生成AI Gemini を活用して作成しています。
*作成日:2026/05/27(水)
*最終更新日時:2026/05/27(水) 11:35(関連記事リンク追加)
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