薬がいつか、バイバイと言ってくれる日まで

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コラム
 うつ病罹患者の中でカウンセリングをしていると時折、自分の判断で薬の服用をやめた、とおっしゃる方がいます。
 ですが、お薬と、どうか優しく、そして「きちんとした気持ち」で向き合ってみてください。
 決して、自分の体力や、薬に対するその時々の感情を過信してはいけません。
 「もう大丈夫だろう」という根拠のない自信や「これ以上飲みたくない」という感情に流されず、医師の言葉に耳を傾けることが大切です。

 医師が「お薬を飲みましょう」と伝える背景には、確かな科学的根拠と、服薬をやめてしまったときのリスクへの深い理解があるからです。

 時に、主治医の判断によっては、お薬を自分の判断で中断してしまうと、「治療放棄」として、その後の診察を断られてしまうケースもあります。

 そのようなことになったら、薬の解脱症状によって、体が鉛のように重たくなる激しい症状に苦しみ、外出することさえままならない状況で、頼みの綱である主治医から診察を拒まれてしまう。
 これほど孤独で、不幸なことはありません。

 特に向精神薬において、自己判断での減薬や中断が禁物とされる最大の理由は、急激な変化によって心身に深刻なリスクがもたらされるからです。
 そこには、大きく分けて3つのリスクが潜んでいます。

心身を揺さぶる離脱症状:薬のある状態に慣れていた体から急に成分が消えると、脳のバランスが崩れてしまいます。めまい、吐き気、頭痛、しびれ、強い不安や不眠といった不快な症状が、数日から数ヶ月にわたって続くことがあります。

症状の再発と悪化:それまで薬によって穏やかにコントロールされていた本来の症状が、再び顔を出します。再発を繰り返すたびに病気はこじれ、以前よりも重症化しやすくなる傾向があります。

治療の長期化:自己中断によって体調を崩してしまうと、元の状態へと立て直すために、さらに多くの時間や強いお薬が必要になります。結果として、回復への道のりが遠のいてしまうのです。もしも「お薬を減らしたい」「やめたい」と感じたときは、自分の感覚だけで動かず、どうか次のような正しい手順を踏んでみてください。

主治医にありのままの気持ちを伝える:「副作用がつらい」「調子が良いから少し減らしてみたい」など、心にある理由をそのまま医師に相談します。

段階的な減薬計画を立てる:医師の管理のもとで、数週間から数ヶ月、場合によっては年単位の時間をかけます。脳と体を少しずつ慣らしながら、ゆっくりと量を減らしていきます。

日々の体調の変化を共有する:減薬の途中で、ほんの少しでも異変や違和感を覚えたら、すぐに医師へ相談してペースを調整してもらいます。

 私は現在、認知行動療法の訓練も兼ねて「投薬日記」をつけています。何時に薬を飲んだか。その時の効き具合はどうだったか。気になった変化はあるか。
 そんな日々の細かな断片を、静かに記録に残すのです。私はこれまで、そのようにしてお薬と付き合ってきました。
 だからでしょうか、「一生この薬を飲み続けなければならないのだろうか」というプレッシャーに押しつぶされることはありません。
 だって、このお薬があるからこそ、私は今、こうして「普通の生活」を穏やかに送ることができているのですから。
 それに、お薬が本当にいらなくなったときには、きっと「お薬の方から、バイバイ」と、そっと手を振って去ってくれるような気がしているのです。もちろん、これに科学的な根拠はありません。
 けれど、これは自分の心身を過信せず、お薬や病院の力を借りて正しく治療を続けていけば、人はきっと良くなっていける大切な存在なのだと、私は信じています。

                         沙門蒼俊  合掌
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