鼻の神経をぶった切ってきた話③

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コラム
みなみかわの恐怖

全身麻酔について、私にはひとつ懸念事項がありました。
それは「麻酔に対して本気で抵抗しようとすると、麻酔の効きが悪くなるのでは?」というもの。

入院前に暇だったとき、私はYoutubeで「麻酔ダイイングメッセージ」という動画を見ていました。
簡単に言うと麻酔科医の立ち会いのもと、本物の麻酔が芸人に投与され、芸人たちは意識が遠のく中でどれだけ抵抗できるかという企画です。ぶっ飛んでますね。

地上波では絶対に放送できないどころか、Youtubeでも賛否両論の迷企画です。麻酔学会がこの動画に苦言を呈する事態にもなりました。
ただ、一個人として率直な感想を言わせてもらえば、面白かったんですよね。麻酔に対する取り扱いの是非はしっかり議論されなければなりませんし、動画に否定的な人を批判するつもりもありません。ただ私個人としては、動画は楽しく拝見しました。

そして麻酔を投与された中、一番強く抵抗していたのが、みなみかわ。このあたりは動画を見てもらえればわかるのですが、意識を失ってなお目を見開き、声を上げ続けていました。本人にはそのときの記憶はないようですが。

私はゲラゲラ笑いながら見ていたのですが、見終わってからこう思いました。
「自分が麻酔受けるときに同じことになったらどうしよう?」と。

動画の中で医師の方は「抵抗しようとする強い意志があると、たまにこういうことも起こる」と話されていました。みなみかわはそれだけ意思が強かったのかもしれません。

この動画を見るまでは、私は「ちょっとくらい麻酔に抵抗してみようかな」なんて思っていました。
しかしこれを見たあとは気持ちを改め、できるだけ麻酔を受け入れる考えに切り替えたのでした。手術の直前は心の中で「俺は麻酔が効く…麻酔が効く…」と自己暗示しようと決心。

医療関係者の方が聞いたら笑いものかもしれませんけどね!
とにかくド素人の私は、余計なことはしないでおこうと決めたのです。

本番

当日の朝は食事抜き。
お腹に食べ物が詰まっていると全身麻酔下で逆流してしまい、誤嚥(ごえん…誤って気道に胃の内容物が入ってしまうこと)のおそれがあるから、とのことでした。

そのときの気持ちは不安3割、「やっと鼻詰まりの日々が終わる」という達成感のようなものが7割。とにかく早く済ませてしまいたい気持ちでした。

私の手術開始は11時。
その日は私と同じ手術を受ける人が他に2人おり、私はトップバッターです。一番最後だったら自分の時間までやきもきしていたでしょうし、最初で良かったと思います。

看護師さんに連れられて手術室があるフロアまで歩き、着いたところで本人確認。生年月日と氏名を告げ、手術室のベッドに横になりました。

執刀してくれる先生をはじめ、他にも4~5人の医師や看護師がいたように思います。
私が麻酔で意識を失うまで周囲は静かに待っているのかと思いきや、けっこう慌ただしい。聞き慣れない指示や単語、それに機材や道具の音がガチャガチャと飛び交っていました。

その間も私は酸素マスクを付けられて天井を見つめるだけ。この酸素マスクが、実は地味に息苦しかった。
これは私が意識を失ったあとで呼吸の代わりをしてくれるものですが、意識があるうちに付けられると、密封されているせいなのか自発的な呼吸が十分にできません。マスクと口の間にわずかにできたスキマから、かろうじて空気を吸いこんでいました。

「麻酔はもう入ってるのかな?さっきまで点滴の管の先には栄養剤がついてたはずだけど、もう麻酔に切り替わってるんか?そういえば『麻酔入れますね』って言われたっけ?聞き逃したかな…」

などと思っていると、急に麻酔が効いてきました。
ズーンとした重たいものが頭を襲い、意識が強制的にシャットダウンされるような感覚でした。眠気やアルコールとは全く規模が違い、自分の意志でどうこうできるものではありません。

完全に意識を失うまでのほんの数秒のことだったのでしょうが、その刹那で私は「これは絶対に抵抗とかムリなやつ」と直感しました。どう考えたって人が気合で耐えられるものではなかったのです。
そうなると逆にみなみかわが凄いことになるのですが、それはさておき。

そのとき私は、ちょっと安堵していました。
「この強烈な感覚なら大丈夫、絶対に目が覚めることなんてない。俺はみなみかわと同じにはならない…」

そう思って意識を失った次の瞬間、手術は終わっていました。

ぐったり

「あかつきさーん、終わりましたよー!」
という看護師さんの呼びかけで目を覚ました私。

まだこの時点では手術が終わったことを理解しておらず、呼びかけに反応して上半身をガバッと起こそうとしました。
そこを看護師さんに肩を掴まれて静止され、少しずつ状況を理解していくことに。

酸素マスクを付けられ、手にはまだ点滴が刺さっているけれど、ここは自分のいた病室。
今は13時くらいで、手術から2時間ほど経っている。

…終わったー。

術後の3時間はベッドの上で絶対安静だったのですが、テレビを点けたりスマホを見たりといったことは自由です。麻酔の影響なのか意識は朦朧としていましたが、家族には無事に終わったことを連絡しておきました。

書きそびれていましたが、手術から退院まで付き添いやお見舞いは無し。最初から最後まで全部一人です。なんとなく自分の都合で家族を呼ぶのも嫌だったので…。
あと、家族から「大丈夫!?しっかりね!?」とか言われるところを想像したら、なんかうっとうしかった(直球)。1時間の手術だし、これくらい一人で十分と考えていました。

意識はボヤけていましたが、とにかく息苦しかった。
まず、鼻は手術の出血やら、それを抑えるために詰めたガーゼやらで、完全に密封されています。ほんの少しも空気の通り道はありません。

そのため完全に口呼吸なのですが、普段慣れていないせいか、麻酔が残っているせいなのか、どれだけ息を吸っても吸った気がしない。
酸素マスクのおかげで酸素はしっかり供給されているはずなのですが、その実感がない。それどころかマスクが呼吸の邪魔にさえ思えてしまう。勝手に外して歩き回ることもできない。

この絶対安静の3時間が一番キツイ時間でした。
もちろん昔のえげつない方法に比べたら、これくらい可愛いものなのですが…。

朦朧とした意識の中で「この安静の3時間も麻酔で意識を飛ばしてくれんかな…あ、でも結局麻酔を使っちゃったら、その後にまた絶対安静の時間が発生するか…堂々巡りやん…」などと考えていました。

その後、私が横になっていると、看護師さんが私のお腹に聴診器を当てていました。内臓の活発さをチェックし、その後で食事の時間なのだとか。

あんまり気分が良くなかったし食事なんてもってのほかだったのですが、聴診器を当てた看護師さんは「あ、お腹めっちゃ動いてるね笑、元気元気!おかゆ持ってくるね」とのこと。
どうやら私の気分とは裏腹に、内臓は調子を取り戻していたようです。確かに、お腹はグーグー鳴っていました。前日の夜から何も食べていませんしね。

運ばれた食事を見ても全く食欲は沸かなかったのですが、「食は力」。食べなければ体力は復活しないと思い、気合いで完食しました。その後に食器を取りに来てくれた看護師さんによると、「手術直後で完食する人は珍しい」とのこと。そうなの…?

食事を済ませたあとは、またベッドでぐったり。
ただ、ウマ娘のログインボーナスを切らすのが嫌だったので、こんなときでもアプリを起動。我ながら取り憑かれてるなと思います。

そして夜は処方してもらった睡眠導入剤を飲み、無理やり睡眠。
私の人生の中で間違いなく、一番長くベッドにいた日になりました。
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