営業職だったサラリーマン時代のお話しです。
ある取引先と大トラブルになり、
その取引先会社担当の私、営業主任、
そしてAさんの三人でクレーム対応に行きました。
Aさんは会社きってのクレーム対応の達人。
今回は、もめにもめているという事で
助っ人として同行してくれました。
私が、その取引先の担当という事ですが、
今回、その会社に行くのが初めてです。
何故なら、今回のトラブルで
急遽私に担当を押し付けたのですから。
トラブっている会社に行くのは、
なんとも憂鬱で嫌なモノですが、
実は、かねてよりAさんのクレーム対応の噂を聞いていました。
どんなトラブル、クレームでも
悉く解決してきたと言われるAさんの
クレーム達人ぶりが見られると思うと、
少し楽しみな面もありました。
取引先に着き、別室に案内され、
先方の担当を待っておりました。
三人は無言で待っておりました。
ドキ、ドキ、ドキ・・・
静寂な緊張感が走ります。
その時、ドアが勢いよく開き、
先方の担当の人が現われました。
その表情を見れば一目瞭然。
怒り狂っています。
そして、間髪入れずに
「今更、何をしに来たのだー!」
「おたくは何回言えばわかるのだー!」
「対応が酷過ぎる!」
ボクシングで例えれば、
試合開始ゴングから、
ラッシュ、ラッシュ、ラッシュで
ボコボコにされている状態でしょうか。
開始早々、まさにこのままでは、
ノックダウン寸前。
しかし、ここでAさんが悠然と立ち向かう。
流石!クレームの達人。
だが、この圧倒的な不利な状況で、
Aさんはどう立ち向かうのか?
立て板に水のような論調でこの強敵を説得するのか?
それとも、絶妙な交渉力で相手を手玉に取るのか?
Aさんはどう出るのか?
その時、Aさんは相手の前に立ち、
深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
そしたら、その相手は
「謝ってすむ問題ではない。俺の立場がなくなった」
Aさんは、深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
相手
「俺がこの間、どんな気持ちでいたと思っているのだー!」
Aさんは、深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
相手
「お前は、それしか言う事ないのかー!」
Aさんは、深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
相手
「もういい。座って今後の事を話そう」
Aさんは、深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
結局、Aさんの尽力で事なきを得て、
先方とは、取引が継続する事となりました。
Aさんのクレーム対応の極意は実にシンプルでした。
深々と頭を下げ
「申し訳ございませんでした」
をひたすら繰り返すだけ。
もっとも、Aさんは別部門の人で、
今回の問題について、よく知らないのであった。
よく知らなくても、このような問題を解決出来るという
良き見本を私に提示してくれました。
極意は常にシンプルです。
問題は、それをやるかどうかです。
極意を知っていても実行するのは難しい。
その難しさが相手もわかるので、
相手の心も氷解するのです。