TOEIC700点、800点、あるいは900点を取れる方でも、いざ英語の会議で発言する場面や、海外出張で現地の方と話す場面になると、言葉が出てこなくて困るという声をよくお聞きします。
これだけスコアを伸ばしたのに、なぜ会話で使えないのか。理由はシンプルで、TOEICで測れる力と、実際の会話で必要な力が別の能力だからです。
この記事では、両者の違いを整理した上で、TOEICのスコアアップと並行して取り組むべき会話学習の軸をご紹介します。
TOEICで測れる力と、会話で必要な力は別物です
TOEICで高得点を取っても話せるようにならない場合、努力の量ではなく学習対象の違いに原因があります。
TOEICで測れるのは「処理能力」です
TOEICのリスニング・リーディングセクションで測られているのは、以下のような力です。
・与えられた英文を、制限時間内に正確に読み解く力
・与えられた英語音声を、聞きながら正確に意味を取る力
・4択の中から正しい選択肢を選び取る力
いずれも、英語を「受け取って処理する」方向の能力です。インプットの精度と速度を測るテストだとお考えください。
会話で必要なのは「即時の発話能力」です
一方で、実際の会話で必要になる力は方向が逆です。
・自分の言いたいことを、その場で英文に組み立てる力
・組み立てた英文を、相手に通じる発音とリズムで口に出す力
・相手の予測できない応答に、数秒以内に反応する力
これらはアウトプットの能力であり、TOEICでは原則として測られていません。同じ「英語」というラベルがついていても、頭と口を使う方向が真逆です。
同じ英語でも、鍛え方は別です
英語を受け取って意味を取れることと、自分の中から英語を出せることは、別々のトレーニングで育てる必要があります。TOEIC学習を続ければ自然に会話できるようになるという考え方は、残念ながら現実と一致しません。
なぜTOEIC学習を続けても話せるようにならないのか
TOEIC学習が会話力につながらない構造的な理由は、主に2つあります。
1. インプット中心の学習だからです
TOEIC対策の中心は、問題集を解き、解説を読み、語彙を増やすことです。この過程で、英文を声に出して発話する時間はほとんどありません。
口を動かしていない以上、口は英語の動きに馴染みません。読めば理解できる単語や表現が増えても、実際に発話する場面ではその知識を呼び出して使うことができないままになります。
2. 制限時間内の「正解選び」に最適化されているからです
TOEIC対策で養われるのは、与えられた選択肢の中から最も適切なものを選ぶ判断力です。一方、会話では選択肢が与えられません。自分でゼロから英文を組み立てる必要があります。
選ぶ力と、生み出す力は別の能力です。TOEIC学習を積み重ねるほど、選ぶ力は鋭くなりますが、生み出す力は鍛えられないままになります。
会話力を伸ばすために必要な2つの学習
会話で英語を使えるようになるために必要なのは、特別な教材ではありません。基礎を固める軸は2つだけです。
1つ目:基礎文法を「使える」レベルまで固めます
中学・高校レベルの基礎文法を、知っているレベルではなく、自分で英文を組み立てる時に再現できるレベルまで落とし込みます。
TOEIC高得点者の多くは、文法を「読めば分かる」段階で止まっています。しかし、自分の言いたいことを英文に変換する段階では、その文法を瞬時に呼び出して文を組み立てる必要があります。
ここで重要になるのは難解な文法ではなく、中学・高校で学ぶ基礎文法です。基礎文法を使える形まで固めることが、会話で出てくる英語の土台になります。
2つ目:シャドーイングで音とリズムを体に入れます
シャドーイングは、聞いた英語を少し遅れて自分の口で追いかけて発声する練習です。
目的は意味の理解ではなく、英語の音とリズムを口の動きに馴染ませることにあります。継続することで、ネイティブの話す速さや抑揚に対する耳の感度と、口の追従性が同時に育ちます。
文法だけでは口の動きは育ちません。シャドーイングだけでは自分の言いたいことを組み立てる土台が育ちません。両方を並行することで、初めて会話で使える英語が積み上がります。
TOEIC学習と会話学習をどう両立させるか
TOEICのスコアアップと会話力を両立させるには、両者を別の学習として並行することが有効です。
・TOEICは「読み書きの到達度」を測るための指標として使う
・会話力は文法とシャドーイングの基礎学習で別途鍛える
・どちらか一方だけに偏らず、目的に応じて時間配分を決める
スコアを伸ばしたい時期はTOEIC対策の比重を上げ、会話を伸ばしたい時期は会話学習の比重を上げる、というように学習のフェーズを使い分けることもおすすめです。
まとめ
結論:TOEICで高得点を取っても会話で英語が出てこないのは、努力不足ではありません。TOEICで測れる「受け取って処理する力」と、会話で必要な「即時に発話する力」は別の能力だからです。会話力を伸ばすには、基礎文法を使える形まで固め、シャドーイングで音とリズムを体に入れる、という別の学習を並行する必要があります。
具体的にどの教材をどの順序で使い、どのくらいの時間配分で進めればよいかは、現在のTOEICスコアと到達したい英語のレベルによって最適な設計が変わります。コーチングの中でひとりずつに合わせてご案内しています。
私自身、TOEIC340点から海外駐在員として選抜されるところまで英語を伸ばす過程で、TOEIC対策と会話学習を別軸で進める方法を実証しました。気になる方はお気軽にメッセージをください。