今夜の一頁。
あなたの呼吸に合わせて。
夜明け前、月は糸のように細くなり、暗さの中でこそ、輪郭をくっきりと描く。
少なくなる光は、見えないものを増やすためじゃない。
見えているものを 正しく並べるために、余白をひらく。
満ちていた頃に拾い集めた言葉が、ポケットの底で丸くなっている。
いまはほどいて、机に静かに置いてみる。
「守りたい」「いまは置いておく」
そんな二枚の紙を並べるだけで、胸の波はひとつ静まる。
薄明の余白は、判断を急がないための光。
眩しくは照らさないけれど、間違えたくない線を 淡く支えてくれる。
境界は、壁じゃない。
二人が安心して座れる 椅子の位置決め。
声は大きくなくていい。
朝の窓のように、 淡く、はっきり。
欠けゆく今は、消える前ぶれではなく、はじまり前の整え直し。
小さくなるほど、本当に残したい形が見える。
ここで、指先で波打ち際の線をなぞるように、今日と明日の間に 細いしるしを引いておこう。
今日のしるし—— 焦らない。
明日のしるし—— 明るい時間に、短く伝える。
それだけで、潮の行き来に合わせて、心の舟が揺れすぎなくなる。
薄い灯りの下で、 マグカップの温度がゆっくり冷めていく。
その間に、胸の中のことばは角を丸め、必要な重さだけを残す。
「ごめんね」よりも先に、「大切にしたい」を置く。
謝るためではなく、守るために、やわらかく線を引く。
もし迷いが戻ってきたら、窓の外の細い月を見る。
光は少ないのに、空は前より広い。
新月まで、あと少し。
影は薄く、意図は濃くなる。
書かない余白が、次の言葉を澄ませる。
薄い月が、空の端でうなずいている。
呼吸をひとつ。
波と波のあいだで、あなたの歩幅が定まる。
朝になったら、 今日の優先順位を一度だけ決めよう。
気持ちの余白は残して、 今の自分に合うペースに整えて。
ー月のリズムー
月詠 ☪︎ 心の羅針盤案内人