不登校のお子さんを見ていると、保護者の方は時々、不安になることがあります。
朝になっても起きてこない。
学校の話をすると黙り込む。
ゲームやスマホばかりしている。
勉強の話をすると不機嫌になる。
そんな姿を見ていると、つい思ってしまうかもしれません。
「この子は、本当にこのままでいいと思っているのだろうか」
「将来のことを、何も考えていないのではないか」
「親だけが焦っていて、本人は楽をしているのではないか」
でも、多くの場合、子どもは何も考えていないわけではありません。
むしろ、考えすぎていることがあります。
学校に行けない自分。
勉強が遅れていく不安。
友達との距離。
親を心配させている申し訳なさ。
この先どうなるのかわからない怖さ。
それらを言葉にできないまま、心の奥に抱えていることがあります。
大人から見ると、ゲームをしているように見える時間。
スマホを見ているだけに見える時間。
布団の中で何もしていないように見える時間。
その裏側で、子どもの心はずっと揺れているかもしれません。
「本当は学校に行った方がいいのはわかっている」
「でも、体が動かない」
「行こうと思うと苦しくなる」
「また失敗したらどうしよう」
「もう前みたいには戻れないかもしれない」
そういう思いを抱えている子もいます。
不登校の子どもは、決して「そのままでいい」と単純に思っているわけではありません。
ただ、「どうしたらいいかわからない」状態にいるのです。
ここで、保護者の方がつらくなるのは当然です。
子どもの将来を思えば、心配になります。
勉強の遅れも気になります。
進学も、友達関係も、生活リズムも、不安になることばかりです。
だから、つい声をかけたくなります。
「そろそろ学校のことを考えたら?」
「このままでいいの?」
「少しは勉強しなさい」
「ゲームばかりしていて大丈夫なの?」
その言葉は、子どもを責めたいから出てくるものではありません。
心配だからこそ出てくる言葉です。
親として当然の気持ちです。
けれど、子どもの心が弱っているとき、その言葉は「自分はダメだ」という確認のように響いてしまうことがあります。
本人も、どこかでわかっている。
でも、動けない。
その状態で正論を受け取ると、さらに苦しくなることがあるのです。
では、どう関わればいいのでしょうか。
まず大切なのは、子どもが「何も考えていない」と決めつけないことです。
表面上は平気そうに見えても、心の中では自分なりに葛藤している。
何もしていないように見える時間にも、回復のための時間が含まれている。
そう見方を変えるだけで、親子の空気は少し柔らかくなります。
声をかけるなら、問い詰める言葉よりも、安心を渡す言葉がいいかもしれません。
「今すぐ決めなくていいよ」
「でも、一人で抱えなくていいからね」
「困っていることがあったら、一緒に考えよう」
「学校に行くかどうかだけじゃなくて、あなたが少し楽になる方法を探そう」
このような言葉は、子どもを甘やかすためのものではありません。
子どもが再び動き出すための土台を作る言葉です。
人は、追い詰められているときほど動けなくなります。
逆に、「わかってもらえた」と感じたとき、少しずつ自分の気持ちを話せるようになります。
不登校の回復は、いきなり学校に戻ることだけではありません。
昼夜逆転が少し整う。
食卓に来る。
親と短い会話をする。
外の空気を吸う。
好きなことについて話す。
ほんの少し勉強に触れる。
そうした小さな変化も、回復の一部です。
保護者の方は、どうしても「学校に行けたかどうか」で判断してしまいがちです。
でも、子どもの心の中では、もっと小さな段階を一つひとつ上っていることがあります。
今日、少し顔が明るかった。
昨日より少し言葉が増えた。
自分から飲み物を取りに来た。
少しだけ予定の話ができた。
そんな小さな変化を見つけてもらえることは、子どもにとって大きな支えになります。
不登校の子どもは、本当に“そのままでいい”と思っているのでしょうか。
おそらく多くの子は、そう単純には思っていません。
変わりたい気持ちもある。
でも怖い。
進みたい気持ちもある。
でも動けない。
助けてほしい気持ちもある。
でも素直に言えない。
その複雑な心を、まずは大人が理解しようとすること。
そこから、回復は始まっていきます。
保護者の方も、どうか一人で抱え込まないでください。
焦ってしまう日があっても、怒ってしまう日があっても、親失格ではありません。
それだけ、お子さんのことを真剣に思っているということです。
ただ、少しだけ見方を変えてみてください。
「この子は何も考えていない」のではなく、
「考えすぎて、動けなくなっているのかもしれない」
「このままでいいと思っている」のではなく、
「どうしたらいいかわからず、立ち止まっているのかもしれない」
そう見つめ直したとき、親の言葉は少し優しくなります。
そして、その優しさは、子どもの心にゆっくり届いていきます。
子どもがまた歩き出すために必要なのは、正論で背中を押されることだけではありません。
安心して立ち止まれる場所があること。
失敗しても戻れる場所があること。
そして、自分の苦しさをわかろうとしてくれる大人がいることです。
その存在が、子どもにとって何よりの力になります。
一人で悩んでいる保護者の方に、この文章が届くことを願っています。
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