教師時代の体験談 ~愛理ちゃん~

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コラム
今回は、嘘が上手な愛理(偽名)ちゃんのお話です。
愛理ちゃんはお母さんの手一つで育てられており、お家でお留守番で、寂しい想いをすることが多い3年生の女の子です。
4月、私は、この子の担任になりました。

5月、家庭訪問をする時、
「先生方向音痴だから、時間になったらお外に出て手を振ってくれると助かるな。」
と皆に話します。
愛理ちゃんは、自分の家庭訪問の日、ずっと私を自転車で追いかけてくれて、誰々の家はあっちだよ。って教えてくれました。
先生お家に来てくれるの、子供たちは嬉し恥ずかしなんですよね。

しかし、問題はその後に起こります。
なんと、嬉しそうに私を追いかけてきてくれたその自転車が、盗難自転車だったのです。
ショックでした。あんなに無邪気に追いかけてきてくれたのに。
どうも、私のクラスの香織ちゃん(偽名)の新品の自転車が盗まれたようなんですね。
色んな子から事情を聞くと、愛理ちゃんの乗ってた自転車が香織ちゃんの自転車にそっくりだったと。
香織ちゃんのお母さんにも事情を聞き、
裏を固めてから、
愛理ちゃんを呼び出して個室で話をします。

何しろ嘘が大人並みに上手な愛理ちゃんですから、嘘だらけのストーリーを語ってくれました。
途中何点かの矛盾点があるのを捉えましたが、まずは愛理ちゃんの好きなように話させました。
その後、一つ一つ矛盾点について質問していき、それ、さっきの話と違うよ。とじわじわ追い込んでいきます。
教師は、警察の事情徴収のような仕事も得意です。

ついに、
「なんで嘘つくの?先生は愛理ちゃんのこと信じてたのに。」
と言うと、彼女は号泣です。
本当のことを話してくれました。
もちろん、嘘をついたこと、人の自転車を盗んだことについては、厳しく指導しました。
叱る私も本気です。本気でないと、子供には伝わりません。

その後、彼女は特に悪いことをすることはなく元気に過ごしていたのですが、
下校中に友達と戯れてた時に、足を怪我してしまいました。
見守り隊たいの方から連絡を受け、私たちはすぐに車で向かい、保健室に連れて帰って応急措置をし、自宅の部屋まで連れて行って。
彼女のお母さんの携帯と職場に何度か電話をかけたけど、出なかったので、
「様子を見てあげてください。」
と留守電を入れたのですが、お母さんが、
学校で入ってる保険が降りるのに、シングルマザーの保険も両方使用したい、戯れてた相手側から、毎日のタクシー代がほしいと、喧嘩を売ってきたのです。

もともと、家庭訪問に行った時も、子供の話ではなく、自分の昔の写真を持ってきて、自分のお話をするお母さん、夜になって子供が寝付くと、男の元に出かけて行く、お母さん自身が精神的に支えられてなくて不安定なところが多々ありました。
学校からも、相手側のお子さんからもお金を出すことはできないので、私と、教頭先生の車で、2ヶ月間、毎日、雨が降ろうと槍が降ろうと、通学も下校も面倒を見ました。
それが学校側(学校側には落ち度も責任もない)がしてあげられる誠意でした。

3月末、あと少しでクラス替えです。
お母さんには、響かなかったのです。お金が貰えなかったから。
お礼の一言もいただけませんでした。
だけど、愛理ちゃんから、お手紙をもらったのです。
「先生、私のせいで本当にご迷惑をおかけしました。ごめんなさい。毎日送ってくれてありがとうございました。」
と。
これは、母親が子供に書かせたわけではない、愛理ちゃん自身の言葉です。
1年前、彼女は自転車を盗んで、嘘を突き通そうとしました。
1年後、彼女は、きちんと、自分の言葉でお礼を言うことができました。
この成長に、私は涙が溢れました。

思いやりという愛情を受けた子供は、きっとこれからも思いやりをもった生き方ができると、私は信じています。

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