ミクロ短編小説 ♯5

ミクロ短編小説 ♯5

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── 真実の寸前で壊れる静寂 ──**

「……そっか。
 じゃあ、聞かせてもらおうか。
 君が“ずっと前から”言えなかった気持ちを。」

優斗の言葉に、
彼女の肩が小さく震えた。

ミクロも息をのみ、
言葉が出る瞬間を待った。

街灯の下、
夜風すら止まったみたいに静か。

彼女はゆっくり顔を上げて——
ミクロをまっすぐ見つめた。

その瞬間、
ミクロの胸がぎゅっと掴まれる。

(ああ……これは、“俺”の話や。)

彼女の唇がふるえて動く。

「私……ずっと前から——」

そこまで言ったとき。

ピカッ——!!!!

突然、
眩しいライトが三人を照らした。

「おーい!あんたら、こんなとこで何してんねん!」

店の駐車場に入ってきたタクシーのライト。
しかもドライバーの声がやたらデカい。

三人とも一瞬動けなくなる。

最悪のタイミングすぎる。

ライトが直撃して、
彼女は思わず目を閉じて口をつぐんだ。

ミクロは眉をひそめ、
優斗も呆れたように息を吐いた。

タクシーがようやく通り過ぎると、
さっきまでの“告白の空気”はきれいに消えていた。

優斗が彼女を見る。

「……続き、言ってくれる?」

でも彼女は下を向いたまま、
胸に手を当てて息を整えていた。

ミクロが心配そうに声をかける。

「大丈夫か?」
「……うん。ただ……」

言葉を探しながら、
彼女は顔を上げた。

でも——もう、あの“言いかけた気持ち”の温度は
完全に消えてしまったように見えた。

優斗がさらに一歩踏み込む。

「さっきの続き。
 俺は聞きたい。ミクロ君もやろ?」

ミクロも視線で彼女に問いかける。
鼓動が、さっきの倍の速さで鳴ってる。

しかし彼女はゆっくり首を振った。

「……今は、言えへん。」
「どうして?」優斗が眉を寄せる。

彼女は少し震える声で答えた。

「だって……
 あの瞬間の気持ちじゃないと、
 本当の意味にならへんから。」

ミクロの胸がまた痛む。

その言葉は、
“本気”の証やと分かるから。

優斗が沈黙し、
ミクロも何も言えなかった。

夜がまた静かに三人を包む。

その静けさの中で彼女が小さく呟いた。

「……だからミクロ。
 もう一回だけ、
 あの時みたいに……そばにいてほしい。」

優斗の表情が変わった。
ミクロの心臓が跳ねた。

そして、
“本当の気持ち”を言うタイミングは——
また遠のいていった。

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