ミクロ短編小説 ♯2

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── 触れた鼓動の先に ──**

「もっと落ち着ける場所で会おか。」

ミクロがそう言った瞬間、
彼女の指先がきゅっと強く絡んだ。
返事はもう聞かなくても分かる。
歩幅までミクロに合わせて寄り添ってくる。

夜道は静かやのに、
二人の鼓動だけが妙にうるさい。

「ミクロさ。」
ふいに彼女が口を開いた。

「ん?」
「次、会ったとき……言いたいことある。」

その言い方が妙に真剣で、
ミクロは無意識に彼女の横顔を見る。

「なんや、それ。」
「言ったら……ミクロ、どうするかなって。」

「内容によるやろ。」
「たぶん、ちょっと困らせると思う。」

困らせる?
その言葉が引っかかって、
ミクロの歩みが少しだけ遅くなる。

「ヒントぐらいほしいな。」
「……言ったら、離れられへんくなるかも。」

その瞬間、
ミクロの胸がゆっくりと熱くなる。

けど——聞いたら戻れへん気もした。

「それ……ええ意味?」
「ミクロ次第かな。」

曖昧で、でも確実に深い。
彼女はいつもより素直で、いつもより大胆や。

玄関に戻る頃、
彼女はミクロの手をそっと離した。

「今日はここまで。」
「意地悪やな。」
「だって……次のほうが、もっとドキドキするから。」

ミクロが何か返そうとしたその瞬間——
彼女がドアに手をかけたまま、振り返った。

「ねぇミクロ。
次、ちゃんと受け止めてくれる?」

その目は迷ってへん。
覚悟した人の目。

ドアの向こうに消える直前、
彼女の唇が動いた。

——「ほんまは、ずっと前から……」

最後の言葉だけ、
わざと聞こえへんくらい小さく消えていった。

ミクロはその場に立ち尽くす。
あの続きを、聞きそびれたまま。

そして夜だけが静かに、ふたりの距離の変化を見ていた。
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