ミクロ短編小説 ♯3

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── 恋に落ちる寸前で ──**

翌日。
ミクロは彼女の言いかけた言葉がどうしても忘れられなかった。

——「ほんまは、ずっと前から……」

あの続き。
あれを聞いたら、きっと関係は戻られへん。

そんな覚悟の匂いがして、胸がざわついて仕方ない。

夜、メッセージを送ろうとスマホを開いたその瞬間。
画面に、思ってもない名前が表示された。

『優斗(ゆうと)』

彼女が前に少しだけ話してた“昔の知り合い”。
ミクロが少し引っかかってた存在。

“久しぶり。近くまで来てるから顔見たくて”

嫌な予感しかしなかった。

その直後——

彼女からの着信。

出たミクロの耳に飛び込んできたのは、
少し震えた声。

「ミクロ……ごめん。今、——」

言葉が刺さる。
心臓がひやっと冷たくなる。

「誰?」
自分でも驚くほど低い声が出た。

「……優斗が急に来て。
 話したいことあるって言われて……」

玄関の前で、
彼女はあの日みたいに立っているんだろうか。

ミクロは一瞬、何も言えなくなった。

「行かん方がええ?」
冷静を装って聞く。

少し間をあけて、彼女は答えた。

「……うん。今は来ないでほしい。」

胸がきゅっと痛む。
その一言だけで、
昨夜の温度も、触れた指も、全部が遠のくみたいや。

そのとき、
電話の向こうで男の声がした。

「久しぶり。また会えてよかった。」

彼女のすぐそばから。

ミクロの喉が詰まる。
言葉が出てけえへん。

「ミクロ、あとで話したいことあるから……また電話する。」

通話が切れた。
部屋の静けさが、妙に残酷や。

ミクロはスマホを見つめたまま、拳をゆっくり握った。

——“あの言葉の続きは、俺のことやと思ってたのに。”

邪魔が入った。
しかも、正面から。

夜風がカーテンを揺らす音が、
いつもよりやけに耳に刺さる。

彼女が今、誰と話してるのか。
何を話してるのか。
どんな顔してるのか。

全部、気になって仕方ない。

胸が痛い理由を、ミクロはようやく理解した。
——これは、もう“恋”やってことを。

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