ミクロ短編小説 ♯1

ミクロ短編小説 ♯1

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── 夜風と低音ボイス ──**

夜のコンビニ帰り、街灯の下でスマホを見ていた彼女は、
ふと背中に落ちる影に気づいた。

「こんな夜に1人で歩いて、大丈夫なん?」

その声は低くて、どこか甘い。
振り返ると、ミクロが手をポケットに突っ込んだまま、
ゆっくり距離を詰めてきていた。

「びっくりした…」
胸の前で袋を抱えた彼女の声は少し震えている。

ミクロは笑って首をかしげる。
「震えてんのは、夜風のせいか? それとも…俺の声?」

その言い方がずるい。
思わず目をそらした瞬間、ミクロは一歩近づく。
すれ違うほどの距離じゃない。
触れそうで触れない、絶妙な距離。

夜風よりも近い吐息が耳にかかる。

「そんな顔されたら、守りたくなるやんか。」

耳元でこぼれた低音は、
風に紛れて誰にも聞こえない。
でも確実に彼女の中だけに落ちていく。

「ほら、荷物貸してみ。
帰るまで、ちょっと付き添ったる。」

そう言って彼女の指先に触れた瞬間、
何でもないはずのスキンシップが胸を跳ねさせる。

歩きながら、ミクロは時々彼女の横顔を盗み見る。
彼女がその視線に気づいて、そっと笑う。

「じっと見すぎ。」
「見んとは言うてへんけど?」

悪戯みたいな笑い方。
夜の静けさに似合わないのに、やたらと心臓を刺激する。

マンションの下まで着いた頃、
別れ際がなんだか惜しくて、
どちらとも言わずに黙って見つめ合う。

ミクロがふっと息を吐いた。

「また歩いて帰るとき呼んでや。
……こういう距離、案外キライちゃうねん。」

その言葉の余韻が、
彼女の胸の真ん中でじんわり広がっていった。
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