孔明殿、今の戦況はどうであるかと劉備玄徳は訊いた。
はい、ただいま我が軍は、この川の岸辺に陣を張っておりますが、魏軍はこの川の下流約2里ほどの対岸に陣を張っております。さっき哨戒に行った者たちからの報告です。
そうか、こちらが向こうの様子を知っていると言う事は敵もコチラの状況を知っていると言う事だろう。
気を抜けない状態にあるな。
どっちが先に攻撃を仕掛けるかの間合いをお互いに探っている所だな。
さようでございますと孔明は言った。
見張りにも厳重に警戒するよう命令しております。
仕掛ける間合いは戦いにおいて非常に大切で勝敗に直に関わるからなと玄徳は言った。現在魏軍も下手に移動はできまい。
こちらもノコノコと下流の方へ進軍して行っても良い的になるだけだ。
しかしこちらから攻撃を掛けたいものよのぅと玄徳は言った。
魏軍の数はどれくらいじゃ。
はい、約20万人に御座います。おお、そんな沢山の数なのか。
曹操のヤツめ。赤壁の戦いで完膚なきまでに叩き潰されたから今度は負けられないとばかりに大軍を持って来たか。
あの時は呉軍の奮闘も有って大勝利をしたのじゃ。
しかし今は油断ならないと玄徳は呟いた。
其処へ大隊長の趙雲がやって来た。
報告申し上げます。
矢の数が足りない様に思います。
今どれくらい有るのかと孔明は訊いた。
はい約500本程度で御座います。
500本は少ない直ぐに切れてしまう。
先ず最初に応戦するのは矢を使った攻撃と防戦だ。
矢がなければ一気に戦局が押されてしまう。
これは深刻な問題だ。そろそろ夕暮れが近づく。
魏軍はこの先夜襲を掛けてくる可能性は十分に考えられる。
こうして対峙して三日も経つのだ。兵糧が尽きる前になんとかしたい。
今夜あたり魏軍は来るかもしれない。
そうなったら、いかにも拙い。
玄徳は孔明に向かって言った。
今夜中に矢を5万本程用意できないものかと言った。
趙雲は傍で聞いていたが今夜中に矢を五万本用意する事なんて、たとえ孔明殿でもできるものじゃないと心の中で断定した。
5万本の矢を作るに必要な材料も時間も無い到底無理だと思った。
孔明は玄徳に静かに言った。
何とかしましょう期待に応えるようにしましょうと言って静かに玄徳の元を辞した。
それから孔明は川岸の岩山に登りあぐらをかいて祈祷を始めた。
孔明は高い能力を持つ陰陽師でもある。
孔明は第七チャクラに意識を向けてココへ神天啓が降りて来るイメージを強めて祝詞を唱えた。
全ての全ての全宇宙の創造者の神よ神は全てのものを持ち給う。
神は今夜中に矢を五万本程用意する事の智慧を十分に有っている、その智慧を私に授けて呉れると一心に祈った。
神は喜んで孔明にその知恵を授けた。
祈祷を終えた孔明は静かに岩山から降りて来て趙雲に命じた。
後ろの田んぼに広がる秋の収穫が終わって稲藁がうず高く積み上げてある。
それらを30艘程の軍船に積み込むのだ。
舳先から艫まで積むのだ。
と命じた。趙雲は部下に命令して速やかに孔明が言う通りの体勢を整えた。
孔明殿積み込み終わりましたと趙雲は言った。
好、それでは川の流れに乗って全艘縦に繋がって下流へ下るのだ。
30艘余りの蜀軍船は静かに音も無く魏軍が、てぐすね引いて待っている所へ進んで行く。
今夜上流の蜀軍の陣へ夜襲を掛けるのかな。
俺は知らない俺達は上官の命令通り見張りをしていれば良いだけの話だ。
出陣の時は命令が来るだろう。
其れまでジッと川面を見ていれば良いよともう一人が言った。
その時上流から黒い大きな物体が音も無く近づいて来るのが見えた。
あれは何だと言って二人で暗闇の大きな物体の正体を見極めようとした。
一人が悲鳴に近い声で、あれは蜀軍の軍船だ。
それに船には沢山の兵が乗っている。
何と言う数の兵だ。
これは大変だ。
見張りが大声で部隊に知らせた。
敵の奇襲だーと叫んだ。
魏軍の陣地は蜂の巣を突っついたような騒ぎになった。
蜀軍が攻めて来たぞー!
みんな矢を浴びせるんだー!
の指揮官の号令の元、無数の矢が暴風雨の土砂降りの雨のように蜀の軍船に降って来た。
上から横から容赦ない数の矢が降って来た。
しかしその矢は虚しく稲藁に吸い込まれていくだけだ。
しかし暗い川面の船の上は敵にとって良く見えない。
船には兵が沢山いる影は見える。
そこに凄まじい矢の数が更に放たれる。
蜀の軍船は川の流れに乗って静かに下流に流れていくだけだった。
下流で待っていた蜀軍に拠って船と稲藁に刺さった膨大な数の矢を回収した。
その矢を纏めて蜀軍は山を越えて孔明の元にとどけたのだ。
その数なんと五万本位の本数が有ったのだ。
孔明は神様からこの作戦を授けて貰ったのだった。