漢詩(絶句)の作り方(初心者向け)

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絶句の作り方を説明していきます。
 絶句とは起句・承句・転句・結句の四句からなる詩の型のことです(以下では五言絶句を「五絶」、七言絶句を「七絶」と略します)。
なお、絶句と律詩(全八句からなり対句を二組入れなければならない)とを合わせて近体詩または今体詩と言うということを頭の片隅に置いておいて下さい。
まず、「平仄をあわせる」と言う場合の「平仄」について。
 中国語には昔も今も声調(発音上の調子)というものがあり、それに基づいて全ての漢字は平字(ひょうじ)と仄字(そくじ)に分かれます。そして、漢詩には押韻の規則(後述)がありますが、大抵平字で韻を踏みます(仄字での押韻は例が少なく、また初心者には難しい技術です)。
 さらにその声調と平仄の分類についてですが、古代の中国人は声調を以下の4種類に分けました(現代中国語の「四声」と呼ばれる4つの声調とは内容が異なります)。
 平声(ひょうしょう)
 上声(じょうしょう)
 去声(きょしょう)
 入声(にっしょう)
この内の平声に属する漢字のみが平字であり、残りは全て仄字に属します。つまり平字で韻を踏む詩を作る場合は、平声に属する字を韻字として選ばなければならないわけです。
そして平字・仄字に共通していることですが、古代の中国人は無数にある漢字をいくつかのグループに分けて、その中から一つの字を選んでそのグループの代表としました。これを「韻目」といいます。
 初学者は平字押韻詩作りで練習するでしょうから、仄字の韻目は省略して平声字の韻目を記しておきます。全部で30字ですが、通常上下に分類して、「上平(声)」・「下平(声)」と呼んでいます(仄字の韻目には上下の分別はありません)。古来決まっている並び順に従って番号を漢数字で振っておきます。
 【上平】一「東」 二「冬」 三「江」 四「支」 五「微」 六「魚」 七「虞」 八「斉」 九「佳」 十「灰」 十一「真」 十二「文」 十三「元」 十四「寒」 十五「刪」
 【下平】一「先」 二「蕭」 三「肴」 四「豪」 五「歌」 六「麻」 七「陽」 八「庚」 九「青」 十「蒸」 十一「尤」 十二「侵」 十三「覃」 十四「塩」 十五「咸」
 因みに、この分類による韻目表を「平水韻」といいますが、今の中国人はこの平水韻に従って詩を作る人もいれば、現代中国語の声調に基づいた別の韻目表によって詩を作る人もいます。
しかし殆どの日本人は、昔も今もこの平水韻によって漢詩を作ります。また、大抵の漢詩入門書に書いてあることだと思いますが、前述の入声に属する字の発音は今の中国語(一部方言を除く)では失われており、日本漢字音の音読みによってかえって仄字であることが分かるというものがあります。従って、現代の中国人が平水韻によって詩を作ることは難しい側面があるわけです。
その入声ですが、音読みで末尾の読みが「フクツチキ」いずれかになる字がそれに当たります。いくつか例を挙げておきます。「フ」のみ歴史的仮名遣いの知識が必要ですので判別が少し厄介ですが、それ以外は日本語の音読みが分かれば区別がつきます。
 「フ」十(ジフ・シフ)合(カフ・ゴフ)、急(キフ)、蝶(テフ)、入(ジフ・ニフ)など
「ク」国、足、直、白、福、福など
「ツ」月、雪、説、律、立、発など
「チ」一、七、日、吉など
「キ」石、敵、的、笛、駅、益など
 この中で例えば漢数字の「十」や「石」などは現代中国語では平字に分類されてしまいますが、平水韻の中では入声で仄字に分類されます。この点の判別は日本人に有利です。
それで本題の押韻の仕方ですが、五絶の場合は偶数句すなわち第二句(承句)と第四句(結句)の句末で韻を踏み、七絶の場合は第一句(起句)と第二句(承句)と第四句(結句)の句末で韻を踏みます。
 五絶でも起句で韻を踏む場合があり、逆に七絶でも起句で韻を踏まない場合がありますが、まずは原則通りに詩作に励んだ方がいいと思います。

そして実際に漢詩を作る段で、前述上平声または下平声の韻目の中からどれか一つを選び、そこに属する字々を用いて韻が踏めるようにしなければなりません。この韻目選びはある程度作り慣れてきてもなかなか難しい場合があります。
ですから、押韻のために五言七言詩を問わず下に来る三字分の用例を集めた詩語集があった方が無難です。

改めて、漢詩作成上の平仄その他規則について箇条書きで記します。
① 二四不同・二六対(五言絶句・五言律詩の場合は二四不同のみ)。
これは、一つの句の中の上から二番目と四番目の字の平仄を異なるようにし、二番目と六番目の字の平仄を同じにするということです。なお、後述する④の規則とも関わることですが、起句の二番目の字を平字にするか仄字にするかは作り手の自由です。
②下三連を避ける(五言・七言共通)。
これは一つの句の中の下三字を平字ばかりもしくは仄字ばかりにしてはいけないということです。
③孤平の禁止(五言詩の場合上から二字目、七言詩の場合は上から四字目)
「孤平」というのは、一つの句の中で、一つの平字の上と下に仄字が配置されることです。そして一般には七絶の場合は四番目の字を孤平にしてはならず、五絶の場合は二番目の字を孤平にしてはいけないということになっています。
④反法と粘法の原則。
(後述)
⑤同字重出・冒韻の問題(この二つは厳格ではない規則です)。
今体詩では一首の中で同じ字を用いないのが原則ですが(「蕭蕭」・「悠悠」・「茫茫」のような重言はこれに該当しません)、やり方によっては許される場合があり、実例も多いです(同一句内での同字重出については重言以外でも端から問題ないとするのが一般的です)。従って寛容な作詩指導者もいますが、初学者は同字重出を避けて練習した方がいいでしょう。
その他管見では概説書にはあまり記されていないことですが、「道」・「路」や「赤」・「紅」など同義異字の場合も、抱き合わせ使用は避けた方がいいでしょう。ただこれも、対句の場合は許されることがあります。また、「道路」のように同義異字を組み合わせた二字熟語として定着している表現も問題ありません(但し熟語の場合も似たような意味の語を一首内で重出させることは原則として避けた方が無難です)。
その他、「道」は「言う」の意味で用いられることがありますが、その場合は「路」と共に用いても問題ありません。つまり意味に注意して、それが異なる時は併せて使用しても構わないということです。

次に、「冒韻」というのは同じ韻目に属する字を押韻箇所以外で用いることですが、これの説明は④の次にいたします。

④の反法と粘法の原則ですが、先人の有名な作品を基に説明します。
      楓橋夜泊 (唐)張継
   (起)月落烏啼霜満天  月落ち烏啼いて霜天に満ち 
   (承)江楓漁火対愁眠  江楓 漁火 愁眠に対す
   (転)姑蘇城外寒山寺  姑蘇城外の寒山寺
   (結)夜半鐘声到客船  夜半の鐘声 客船に到る
 この詩の字ごとの平仄を〇(平字)と●(仄字)を用いて次に表してみます。押韻字は◎とします。因みにこの詩の韻目は「先」(下平の一)です。
    (起)●●〇〇〇●◎
  (承)〇〇〇●●〇◎
  (転)〇〇〇●〇〇●
  (結)●●〇〇●●◎
まず、上述した①~③の規則をこの詩は犯していないことはおわかりでしょうか。最初は目が慣れないかもしれませんが、起承転結各句の二字目と四字目・二字目と六字目を確認してみて下さい。①はクリアしています。
また、各句とも下三字は同じ平仄の字で連続させていません。②も問題ありません。
 加えて、起句と結句の第四字を見て下さい。起句は第三字が〇、第五字も〇で第四字は孤平になっていません。
 結句は第五字が●ですが、第三字が〇ですので、やはり孤平を免れています。もし第三字が●だったなら、結句は孤平ということになってしまいます。
そして④ですが、まず起句と承句の各第二字・第四字・第六字の〇●記号に注目して下さい。全て逆の記号になっていることが分かると思います。この形を反法(はんぽう)といいます。
 次に、承句と転句の第二字・第四字・第六字を見て下さい。全て同じ色の平仄記号になっています。この形を粘法(ねんぽう)といいます。
 最後に、転句と結句の第二字・第四字・第六字を比べて見て下さい。全て逆になっています。ここも反法になっています。
このように絶句の場合(律詩も基本的に同じですが)、起句と承句を反法、承句と転句を粘法、転句と結句を再び反法といったように構成しなければなりません。初学者はこの形を忘れずにいて下さい。
 実は、起句と承句を反法として、承句と転句・転句と結句も反法にする原則に外れる作り方もあるのですが(拗体といいます)、入門段階では覚えなくていいです。
 最後に⑤の冒韻の問題について触れておきます。
 冒韻を一切してはならないという人もいますが、恐らく超少数派だと思います。といっても、冒韻は構わないというのも程度問題としか言いようがありません。私もある程度は問題ないとする寛容派です。
ただ寛容派の中にも方法を巡って微妙な考え方の差があります。転句は構わないが、前半の二句は避けるべきで、結句はなるべく避けるべきといったことが市販の入門書に書かれている場合があります。その他、各句の第一字目は冒韻を避けるべきといったことを口にする人がいて、私は概ねこの意見に従っています。つまり押韻する字と同じ韻目に属する字を各句の冒頭には置かないということです。
なお、冒韻を一切してはならないという人は超少数派と前述しましたが、その超少数派であっても問題ないとするのが、押韻する字のすぐ上の字、すなわち下から二番目の字が押韻字と同じ韻目の字であっても構わないとするものです。
例えば、ある詩の押韻句下三字が「感幽憂(幽憂に感ず)」となっていたとします。「幽」も「憂」も同じ韻目(「尤」韻)ですが、これは冒韻とはみなされないということです。


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