FTM当事者が就職先を探すとき、制服やトイレ、更衣室については気にしていても、健康診断のことまでは考えていない方もいると思います。
僕自身も、この記事を書くまで健康診断のことをほとんど思い出していませんでした。
しかし、戸籍変更前のことを振り返ると、健康診断も少し気まずい職場行事の一つでした。
健診バスでは女性として受けていた
以前勤めていた職場では、会社に健診バスが来ることがありました。
当時は戸籍変更前で、職場でも女性として働いていたため、当然、健康診断も女性として受けることになります。
ただ、見た目はかなり男性寄りでした。
受付で名前や性別を確認されると、スタッフの方が一瞬戸惑う。
言葉に出さなくても、
「君は……女?」
という空気になるわけです。
職場ではカミングアウトしていなかったため、その場で事情を説明することもできません。
そこで僕は、
「男と間違われちゃいました〜!」
と笑ってやり過ごしていました。
自分からネタにしたかったというより、それが一番早く、その場を収められる方法だったのだと思います。
## 本名と性別欄が一番気まずかった
健康診断で気になったのは、検査そのものだけではありません。
問診票に改名前の本名を書き、性別欄の「女性」に印をつける。
見た目と書類上の情報が一致しないことで、受付の方が戸惑う。
周囲に職場の人がいる場所で、本名を呼ばれる可能性もある。
大きなトラブルが起きたわけではありません。
それでも、毎回「また何か聞かれるかもしれない」と身構えることが、地味に面倒でした。
レントゲンや心電図はどうするのか
当時の僕は、胸を押さえるためのナベシャツを着ていました。
レントゲン撮影では、
「これは脱ぐのか」
「着たまま撮影できるのか」
と迷った記憶があります。
僕の場合は、金具のないナベシャツを着たまま撮影したと思います。心電図では脱いだ記憶があります。
ただし、検査内容や医療機関によって対応は異なります。
同じような状況の方は、SNS上の体験談だけで判断せず、受診する医療機関へ事前に確認するのが確実です。
ホルモン治療は医療機関へ伝えていた
血液検査を受ける頃には、僕は男性ホルモンの投与を始めていました。
見た目だけでは、ホルモン治療を受けていることまでは分からなかったと思います。
しかし、検査結果の確認に関係する可能性も考え、僕はできるだけ医療機関へ治療中であることを伝えていました。
職場に伝えることと、検査を担当する医療機関へ伝えることは別です。
会社には話したくないことでも、正確な検査や診察のために必要だと思う情報は、医療機関へ伝えるようにしていました。
一番楽だったのは、病院へ一人で行く方法
僕が一番気持ちを楽に受けられたのは、勤務時間中に指定された病院へ一人で行く方法でした。
健診バスの場合、職場の人たちと一緒に順番を待ちます。
どこに並ぶのか。
名前をどう呼ばれるのか。
周囲に何か聞かれないか。
検査とは直接関係のない部分まで気になってしまいます。
指定された病院へ一人で行く方法なら、職場の人に見られる可能性が低く、自分のペースで受診できます。
現在、僕は会社を経営していますが、自分の会社でも健診バスは利用せず、スタッフに指定した病院へ時間をずらして行ってもらっています。
FTM当事者への配慮だけが理由ではありません。
持病や体型、検査への不安など、健康に関することを職場の人に知られたくない方は、当事者でなくてもいるからです。
健康診断の方法も、応募前に確認できる
健康診断の受け方は、求人票にはほとんど書かれていません。
それでも、強い不安がある場合は、応募前や選考中に確認してもよい項目だと思います。
例えば、
・健診バスで一斉に受けるのか
・指定病院へ個別に行くのか
・受診時は戸籍名と通称名のどちらを使用するのか
・検査結果は社内の誰が確認するのか
・個別に相談できる担当者がいるのか
こうしたことが事前に分かるだけでも、働き始めてからの不安を減らせます。
ただし、詳しく質問することで、応募前からFTMであることを会社に知られる可能性もあります。
すべてを確認すればよいわけではなく、
「自分にとって応募前に確認しなければならないことは何か」
「面接が進んでからでも間に合うことは何か」
を整理することが大切です。
応募前の確認事項を一緒に整理します
僕はFTM当事者として働いてきた経験があり、現在は会社を経営し、採用する側として面接にも関わっています。
ココナラでは、FTM当事者の方を対象に、就職・転職に関する不安や、応募前に確認しておきたい内容を一緒に整理するサービスを出品しています。
制服、トイレ、更衣室、通称名、健康診断など、何をいつ確認すればよいのか分からない方もいると思います。
すべてを最初から会社へ話す必要はありません。
一方で、入社してから困らないために、先に確認した方がよいこともあります。
気になる求人があるのに、不安があって応募できない。
どこまで会社に伝えるべきか、一人では判断できない。
そんなときは、お気軽にご相談ください。