【シリーズ】あなた税理士でしょう? そのような発言はおやめなさい 第3話:新しい風と気づき
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コラム
「ちゃんと話を聞いてくれる人を、探そう」。心に決めたカフェオーナーの佐藤は、スマートフォンの画面に向き合った。「税理士 無料相談」「話しやすい 税理士 カフェ」… いくつかのキーワードで検索し、表示された税理士事務所のウェブサイトを一つ一つ見ていく。温かみのある写真、分かりやすい言葉で書かれた業務内容、利用者の声。高橋先生の事務所とは違う、柔らかな雰囲気を感じさせるサイトがいくつか見つかった。
思い切って、二つの事務所に無料相談を申し込んだ。一つは、同世代で親しみやすそうな女性税理士の鈴木先生。もう一つは、地域密着で評判の良い、少し年配の男性税理士、山田先生だ。
まず、鈴木先生とはオンラインで話した。画面越しの鈴木先生は、佐藤の話を「うん、うん」と頷きながら丁寧に聞いてくれた。「カフェ経営、本当に色々やることがあって大変ですよね。経費のこと、皆さん悩まれますよ」。専門用語も、「これはつまり、こういうことなんですけど…」と佐藤のレベルに合わせて噛み砕いてくれる。30分の相談が終わる頃には、佐藤の心は随分と軽くなっていた。
翌日、山田先生の事務所を訪ねた。経験豊富と聞いて少し身構えていたが、山田先生は穏やかな笑顔で迎えてくれた。「どんな小さなことでも、分からないままにしないでくださいね。税金のことって、やっぱり難しく感じますから」。佐藤が恐る恐る切り出した初歩的な質問にも、具体例を交えながら、根気強く説明してくれた。高橋先生の前では萎縮してしまったのが嘘のようだ。
二人の税理士と話して、佐藤ははっきりと気づいた。「税理士さんって、全然違うんだ…!」。高橋先生に感じていた「あなた税理士でしょう?」という不満は、先生の知識不足に対してではなく、一方的で、こちらの状況や気持ちを全く汲んでくれないコミュニケーションに対するものだったのだ。求めていたのは、専門知識だけじゃない。安心して頼れる、対等なパートナーだった。
「よし」。佐藤は深く息を吸った。残るは、高橋先生に契約を続けない意思を伝えることだ。少し気は重いけれど、自分のカフェを、自分の気持ちを守るためには必要なことだ。
さて、どうやって伝えようか…。佐藤は、新しい未来への期待と、少しの覚悟を胸に、言葉を選び始めた。
(第4話へ続く)