【シリーズ】行政書士は胃が痛い 第2話:役所の壁と、小さな不備
記事
コラム
午後の日差しが差し込む中、高橋はあの気の短い社長から依頼された建設業許可の更新書類を手に、役所の担当窓口へと足を運んだ。朝の電話での剣幕を思い出すと、絶対に今日中に受理してもらわなければ、というプレッシャーが胃にかかる。
順番待ちの番号札を握りしめ、待合の硬い椅子に腰掛ける。周囲の喧騒とは裏腹に、高橋の心は妙に静かだった。いや、静かというより、嵐の前の静けさに近いのかもしれない。
ようやく番号が呼ばれ、窓口へ。用意した書類一式を、担当者に手渡す。相手は無表情のまま、慣れた手つきで書類をめくり始めた。その一分一秒が、やけに長く感じる。
「うーん、高橋さん…」
担当者が、ふと顔を上げた。その声色に、高橋の背筋がわずかにこわばる。
「この、工事経歴書なんですけどね。記載されている工期と、添付されている契約書の工期が、一日ずれてますね。」
一瞬、頭が真っ白になる。何度も確認したはずなのに。こんな単純なミスが?
「申し訳ありません、すぐに確認して…」
「ええ、会社さんに確認取って、訂正印で修正をお願いします。それから再提出ですね。」
淡々と告げられる言葉が、重くのしかかる。また事務所に戻って、社長に連絡して、訂正してもらって、そしてまたここに来る…。考えただけで、朝からくすぶっていた胃の痛みが、また主張し始めた。たった一日のズレ。されど、役所の壁はそれを許さない。この小さな石ころが、行政書士の心を、そして胃を容赦なく抉るのだ。
(第3話へ続く)