トレーディングシステムの設計に当たり、EERを高めることが重要であることは以前述べました。では、具体的にどのようにして、そのようなシステムを構築していけばよいのでしょうか。
今回はその点について考えたいと思います。
株式トレーディングシステムの出発点は、通常、株価の時系列データです。これは、当然のことでしょう。
しかし、一口に時系列データと言っても、時間軸の採り方によって多くのデータが存在します。
デイトレシステムを開発する場合は、少なくとも5分足、可能ならばティックデータが必要となるでしょう。
一方で、長期投資型のシステムを開発する場合は、日足データや場合によっては週足や月足のデータだけで十分かもしれません。
いたずらにデータ数を増やせば、それだけ解析に不安定要素が入り込む可能性が出てきます。目的とするシステムに合った時間軸のデータを用いることが、適切なのではないかと思います。
ここでは、日足データを用いたシステムを前提に考えることにします。ただし、基本的な考え方は、どの時間軸を用いても同じです。
トレーディングシステム作成の基本は、資産カーブの最適化です。最も原始的な資産カーブとしては、BUY&HOLDの結果としての株価推移があります。これを、1次資産カーブと呼ぶことにします。
この状態では、Entry、Exit共にフリーではありません。すなわち、仕掛けとストップの条件が定まっていません。
基本的には、長期に渡る資産カーブのEERが十分に高ければ、いつ仕掛けてもその後の資産増加率はほとんど変わりません。したがって、そのようなシステムが得られたなら、十分な検証の後、速やかに運用を開始するべきであり、仕掛けは完全にフリーということになります。
ストップについては、EERが高いシステムであれば、標準誤差を用いることで合理的な水準でシステムの運用を停止することができるでしょう。
しかし、一般的には1次資産カーブの段階において、高いEERを得ることは困難です。そこで、様々な判定条件を加えることで、資産カーブのEERを高めることを考えます。
例えば、1次資産カーブにおいて、資産の大きな下落局面があったとしたら、どうすればその下落を食い止められるかを検討してみます。
ここで初めて、移動平均などのテクニカル指標の出番となります。
例えば、1次資産カーブとその25日移動平均線を用いて、資産カーブが移動平均線を下抜けたら売買を停止し、その後上抜けたら売買を再開するとします。その結果としての資産推移を新たな資産カーブとし、それを2次資産カーブと呼ぶことにします。
2次資産カーブのEERが1次資産カーブのEERより大きければ、このシステムはとりあえず第一関門を突破したことになります。売買の停止と再開によってEERが増加するのなら、停止の代わりにドテンを行えば、さらなるEERの増加が見込まれるでしょう。
こうして2次資産カーブが得られたら、もし可能ならば更なる判定や変換を行い、3次資産カーブ、4次資産カーブ等を作り上げていきます。もし、途中でEERが向上しなくなったらそこまでとなります。
それが、当面の最終資産カーブということになるわけです。
なお、この作業の過程で、過度な最適化によるカーブフィッティングが生じる可能性があります。カーブフィッティングの原因はいろいろ考えられますが、その多くは自由度の減少によるものだと考えています。
例えば、もともと日次データの終値しか用いていないシステムにおいて、同じく終値しか用いないテクニカル指標を複数用いることは、自由度を著しく減少させる行為となるでしょう。
終値とは独立したデータ、例えば始値や高値、安値、出来高等を含んだ指標を用いれば、自由度の減少を抑えることが可能かもしれません。また、時間軸も自由度の一つであり、使い方次第ではシステム全体の自由度の減少を食い止めることが出来るかもしれません。
最終的な資産カーブは、実際の資産運用結果となります。これは、設計の結果としての資産カーブとはやや異なったものになるでしょう。
実際の資産運用結果には手数料等が含まれますが、設計段階での最終資産カーブには、手数料やポジションサイズ等のマネーマネジメントに係わる部分は含めるべきではありません。
これらは、様々な投資環境に応じて異なるファクターであり、それを本来普遍的・客観的であるべきはずのシステムの設計因子に加えることは、好ましいことではないと考えるからです。
設計段階においては十分考慮されるべきではありますが、EntryやExitなどの重要判断の材料にしてはなりません。
マネーマネジメントは、トレーディングシステムと車の両輪をなす重要なものですが、これらは独立に運用されるべきものです。両者を統合してしまうと、システムの普遍性や客観性が損なわれることになります。
株価の動きは一意的であるにも拘らず、手数料や資金量の違いでEntryやExitのタイミングが異なってくる、などということは合理的とは言い難いのです。
もちろん、最終的な資産カーブに基づいて、そのシステムが発信するシグナルに応じたポジション調整を行うことを否定しているのではありません。
あくまでも、そのシグナルの出し方に資金量等が影響を与えることを問題としているのです。
すなわち、完成したトレーディングシステムがあったとして、マネーマネジメントはそのシステムに影響を与えてはならない、と考えることが重要なのです。
⇒Kフロー ブログ