相撲観戦中に力士が土俵から落ち、まわしが取れてしまったら?法律上の問題を考える

相撲観戦中に力士が土俵から落ち、まわしが取れてしまったら?法律上の問題を考える

記事
コラム
相撲観戦は、土俵際の迫力を間近で感じられることが大きな魅力です。しかし、その迫力ゆえに、時には力士が勢いよく土俵下まで転落し、観客にぶつかることもあります。

では、もしその際にまわしが外れてしまったら、法律上どのような問題が考えられるのでしょうか。

まず、力士に責任はあるのか

結論からいうと、通常は**力士個人が法的責任を負う可能性は低い**と考えられます。

相撲は激しい身体接触を伴う競技であり、土俵際で転落すること自体は競技の性質上、ある程度予定された出来事です。また、まわしが緩んでしまうことも極めて稀ではあるものの、絶対に起こらないとは言い切れません。

故意にまわしを外したような特殊な事情でもない限り、力士本人に不法行為責任(民法709条)が認められることは考えにくいでしょう。

観客は「見えてしまった」ことについて慰謝料を請求できる?

では、観客が突然そのような場面を目撃した場合、精神的苦痛を理由として慰謝料を請求できるのでしょうか。

これも一般的には難しいでしょう。

日本の裁判実務では、慰謝料が認められるためには、法律上保護される利益が侵害されたと評価できる程度の違法性が必要になります。

もちろん、予期せぬ状況に驚いたり、不快に感じたりすることはあるでしょう。しかし、それだけで直ちに損害賠償請求が認められるわけではありません。

主催者側の責任は?

ここで問題となるのが、主催者側の安全管理です。

例えば、

* まわしの装着確認を全く行っていなかった
* 明らかに緩んでいることを認識しながら放置した
* 安全管理体制に重大な不備があった

といった事情があれば、主催者の管理責任が問題となる余地があります。

もっとも、通常は力士も行司も支度を整えた上で取組に臨みます。まわしが外れる事故自体が極めて例外的である以上、主催者の責任が認められるケースも限定的と考えられます。

写真や動画をSNSへ投稿したら?

現代では、こちらの方が法律問題として現実味があります。

偶然撮影した動画に、まわしが外れた場面が映っていたとして、それをそのままSNSへ投稿すると、

* 肖像権
* プライバシー
* 名誉・人格的利益

などとの関係が問題となる可能性があります。

スポーツ選手は一定程度撮影されることを受忍していますが、競技の通常の範囲を超えた極めて例外的な場面についてまで、無制限に拡散されることを承諾しているわけではありません。

特に、話題性だけを目的として拡散した場合には、削除請求や損害賠償が問題となる可能性も否定できません。

まとめ

相撲は日本の伝統文化であり、迫力ある競技です。その中で、力士が土俵外へ転落すること自体は珍しくありません。

しかし、万が一まわしが外れてしまうという極めて稀な事故が起きた場合でも、法律は直ちに誰かに責任を負わせるわけではありません。

一方で、その瞬間を面白半分に撮影・拡散する行為は、別の法律問題を生み出す可能性があります。

「珍しい出来事だから共有したい」という気持ちは理解できますが、その投稿が他人の人格的利益を侵害していないか、一度立ち止まって考えることも大切です。

法律は、事故そのものだけでなく、その後の人々の行動についても目を向けています。

南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本

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