ニュースなどで重大事件が報道されると、「実際に手を下したのは別人なのに、なぜ指示役まで重い罪になるのか?」という疑問を持つ方も多いかもしれません。
特に近年は、SNSや匿名性の高いアプリを利用した「指示型犯罪」が社会問題化しています。
今回は、刑法上の重大犯罪である「強盗殺人」と、それに関与した「教唆犯(きょうさはん)」について解説します。
強盗殺人罪とは
まず、「強盗殺人罪」は、日本の刑法の中でも極めて重い犯罪です。
刑法上、強盗を行う際に人を死亡させた場合に成立します。
典型例としては、
金品を奪うために被害者を殺害した
抵抗されたため暴行を加え死亡させた
強盗の逃走中に被害者を死亡させた
などがあります。
法定刑は非常に重く、死刑または無期拘禁刑です。
つまり、「単なる窃盗」とは全く別次元の犯罪として扱われています。
「自分はやっていない」は通用するのか
ここで問題となるのが、「実際に殺したのは別人だ」というケースです。
例えば、
「あの家に金がある。脅してでも奪ってこい」
と指示した人物がいたとします。
その結果、実行役が被害者を死亡させた場合、指示した人物にも重大な刑事責任が発生する可能性があります。
ここで登場するのが「教唆犯」です。
教唆犯とは何か
教唆犯とは、簡単に言えば、
他人に犯罪をする決意をさせた者
を意味します。
つまり、自分で包丁を持って現場に行かなくても、
犯行を持ちかける
実行をそそのかす
犯罪意思を固めさせる
といった行為によって成立する可能性があります。
そして重要なのは、刑法では、
教唆犯は「正犯と同じ刑」で処罰される
という点です。
つまり、強盗殺人を教唆した場合、実行犯と同等レベルの責任を負う可能性があります。
「冗談だった」は通用するのか
実務上、よく争点になるのが、
本気で指示したのか
冗談だったのか
相手が勝手にやったのではないか
という点です。
しかし、裁判では単に言葉だけでなく、
SNSのやり取り
金銭の授受
犯行計画への関与
犯行後の行動
共犯者との関係性
など、様々な事情から総合的に判断されます。
特に近年は、チャット履歴や通話記録が重要証拠になるケースも少なくありません。
「俺はやれとは言っていない」
「脅す程度のつもりだった」
という弁解が、そのまま通るとは限らないのです。
闇バイト問題との関係
近年話題となっている「闇バイト事件」でも、この教唆犯・共犯の問題は極めて重要です。
SNS上で、
指示役
実行役
送迎役
監視役
名義貸し役
など、役割分担がされることがあります。
しかし、刑法上は「実際に殴っていないから無罪」という単純な話ではありません。
関与の態様によっては、重大犯罪の共犯として厳しく処罰される可能性があります。
最後に
刑事事件では、
「誰が手を下したか」
だけでなく、
「誰が犯罪を生み出したか」
も重視されます。
特に強盗殺人のような重大犯罪では、実行犯だけでなく、背後で指示・誘導した人物についても極めて重い責任が問われます。
SNSでの軽率な発言や、「簡単に稼げる仕事」への関与が、取り返しのつかない結果につながることもあります。
刑法は、「実際にやった人だけ」を処罰する法律ではありません。
犯罪を生み出した者にも、厳しい視線を向けているのです。
南本町行政書士事務所 代表 特定行政書士 西本