「いいかげん」という言葉は、なぜか誤解されがちです。多くの場合、「無責任」「手抜き」といった否定的な意味で使われます。しかし本来の意味はまったく違います。字の通り、“良い加減”。強すぎず、弱すぎず、過不足のない、ちょうどよい状態のことです。
私たちはつい極端に走りがちです。やると決めたら徹底的にやる、休むなら何もしない。白か黒かで判断しようとする。しかし自然界はそうではありません。昼と夜のあいだには夕暮れがあり、満潮と干潮のあいだには緩やかな移ろいがある。すべては揺らぎの中で、絶妙なバランスを取りながら成り立っています。それが“いい加減”です。
仕事でも人間関係でも同じです。力を入れすぎれば疲弊し、抜きすぎれば形にならない。緊張し続ければ心は硬直し、緩みすぎれば集中できない。大切なのは、自分の状態を観察しながら調整することです。今は七割でいいのか、九割必要なのか。その都度、最適な出力を選ぶ柔軟さこそが成熟です。
「いい加減」というのは、投げやりになることではありません。むしろ、自分自身と自分を取り巻く状況を丁寧に観ているからこそできる在り方です。完璧を目指して自分を追い込むより、持続できるリズムを選ぶ。そうすることで、結果的に長く、深く、遠くまで進むことができます。
いい加減とは、妥協ではなく調和です。自分を雑に扱うことではなく、自分をよく知った上での選択です。力みすぎず、怠けすぎず。ちょうどよく在る。その感覚を取り戻すことが、実は一番難しく、そして一番大切なのかもしれません。