【日曜の夜22時、ノートを開いて固まる】
日曜の夜、22時。机の上にノートを開いて、3日前の木曜の店長会議のメモを見ている。手書きの箇条書きが20行くらい。半分は自分の字でも何が書いてあるか怪しい。
本部には「議事録は週明けまでにお送りします」と言ってある。月曜の朝までに送らないといけないから、いま書いている。
書き出して固まるのは、毎回同じ場面。最初の3行くらいは出る。日時、参加店舗、テーマ、までは書ける。そのあと、「今日の論点」を書こうとして、手が止まる。
3日前の自分が何を一番大事だと感じていたか、思い出せない。メモには出てくる単語があるが、その単語の前後で誰がどう言ったか、その時自分が何を考えたか、もう輪郭がぼやけている。
——こんな夜、ありませんか。
【書けないまま3日経つ理由】
書き始めるのが3日後になる理由は、会議直後の30分が空かないからではなく、その30分で書ける道具が手元にないから、というほうが近い。
これは月次の本部報告書でも同じだった。会議直後の30分で書ければ短時間で済むのに、白紙から組み立てる手作業に30分以上かかると分かっているから、後回しになる。後回しになると、記憶が薄れて、もっと時間がかかる。さらに後回しになる。週末を迎える頃には、書く側の罪悪感だけが積み上がっていて、書く時間そのものは1時間以上かかる作業になっている。
書けないのは怠惰ではなく、書ける速度の道具を持っていなかったから、という整理に落ち着いてから、自責よりも先に道具を揃えに行く動きが取れるようになった。21年この景色を踏み続けて、ようやくそこに行きついた。
【当日30分で書ける道具を手元に置く】
いま手元で運用しているのが、会議直後の30分で議事録を書き上げるための3つの道具。
ひとつ目。手書きメモから議事録を構造化する手作業を、AIに渡している。「以下の手書きメモから、議事録を作ってください。構成は、日時参加者、今日の論点3〜5項目、議論の流れ5〜8項目、合意事項3〜5項目、次回までの宿題(各店長と本部それぞれ)、次回の予定。事実中心、感情的な評価を含めず、淡々と」と頼む。短い時間で骨子が返ってくる。自分の役割は、AIが拾い切れていない細かいニュアンスを足して、自分の言葉で整える最後の数分だけになる。
ふたつ目。「あれもこれも」と要望が出た会議で、優先度を判断する手作業を、AIに渡している。「以下の要望リストを、優先度×緊急度のマトリクスで整理してください。本部視点での重要度、現場での実装難度、来月の影響度の3軸で判断」と頼む。マトリクスが返ってくると、次回の会議で「優先度高×緊急度高のここから動きましょう」と言える素材になる。各店長は「全部やる必要はない」が見えて、安心する。「全部やる」が一番現場を疲弊させる、というのは21年見てきて、いちばん身に染みている部分。
みっつ目。月次の議事録から、翌月の店長会議のアジェンダ案を作る手作業を、AIに渡している。「先月の議事録の宿題、未完了の論点、現場から上がっている要望を踏まえて、来月の店長会議のアジェンダを5項目で組んでください」と頼む。返ってくるアジェンダ案を、自分の頭で並び替えて、足したり削ったりする。白紙からアジェンダを組み立てる時間が、判断する時間に置き換わる。
3つとも、AIに考えてもらう、というよりは、自分の頭にあった内容をAIに構造化してもらう、という感覚に近い。
【テンプレ感のないフォロー連絡を、当日中に送る】
会議や面談の議事録を書き上げたあと、もう1つ運用しているのが、各店長へのフォロー連絡をAIに下書きさせること。
「以下の店長会議の内容から、A店長へのフォロー連絡を作ってください。今日A店長が特に熱を込めて話したテーマ、印象的な言葉を1つ引用する形で。テンプレ感のない、対話の続きとして読める文面」と頼む。
返ってくるドラフトに、「先ほどおっしゃっていた『来月の人員はもう少しだけ厚くしたい』という言葉が、終わってからも残っています」のような1文が入っている。これがあるかないかで、店長側の受け取り方が変わる、というのを店舗の振り返り連絡で何度か体感した。テンプレ感が消えると、ただの作業連絡が、対話の続きとして読まれる場面が増える。
会議直後の余韻のうちに、こうしたフォロー連絡を送れると、会議自体の温度が、会議が終わったあとも少し残る。次の会議までの2週間で、店長側の動きが変わる場面が、以前より増えた感触がある。
【これは20実例のうちの2つ】
上で書いたのは、ChatGPTを日々の業務に組み込んでいる実例のうちの、会議メモ・議事録まわりの2つ。
ほかにも、1on1の前後にChatGPTを開いて論点を整理する、月次の報告書をChatGPTに渡してドラフトを作る、毎朝の朝礼ネタを毎日違う角度で組ませる、半年分の面談メモから評価コメントの叩きを作る、新人のOJT進捗を観察ログから組み立てる、シフトの偏りから人員のメンタル兆候を拾う——こうした実例を、現役のマネージャーがいまどう使っているかという視点で20本まとめて、ココナラのコンテンツ市場で記事として出している。
「1on1・報告書・朝礼が半分の時間で動く 店舗運営20年マネージャーのAI実用例20選」
買い切りのテキスト記事で、20の実例と、そのまま使える日本語プロンプト10個が入っている。「自動化と言ってもどこから手をつければ」と感じている段階の人向け。
【入口】
日曜の夜22時、ノートを開いて固まる景色を知っている人へ。
仕組みを大きく変える必要はない。次の店長会議で、会議直後の30分を「議事録作成」という名前でカレンダーに入れておく。終わった瞬間に席に戻って、手書きメモをそのままAIに渡して、骨子を返してもらう。残りの時間で自分の言葉で整えて、フォロー連絡まで作って送る。
これが1回回ると、「会議直後の30分で全部終わる」という体験が手元に残る。1回回ると、次の会議からも同じ流れを作りたくなる。日曜の夜の22時に、3日前のメモを開いて固まる時間が、戻ってこなくなる。
書ける速度の道具を手元に持つかどうかで、3日寝かせる景色は、起きる頻度が変わる。20選の中の議事録の章で扱っているのは、ここから先の細かいプロンプトの組み方の話になる。