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彼の決意は壊せない -砕かれた【黄金比】-

 ――さあ、今日も『勉強』だ。  グラバールで、かつて『天才』と呼ばれた蒸気機関技師、アルトゥ・シャオンは、工具を手に取った。  青い空から暑い日差しが降り注ぐ。天気は快晴だった。  朝、アルトゥは家を出て、アルフライラ郵便公社へと向かっていた。カバンのなかには《手紙》ではなく、彼自身が愛用する工具が入っている。普段は特務局員(エージェント)の一員として局内を出入りしているアルトゥだが、今日の目的は別にあった。  本日は郵便配達(ポルタル)の仕事はお休みだ。特務局員の仕事は特殊だが、休日や福利厚生は、その辺の企業と比べても遜色ないほど、充分に保障されている。  しかしながら、アルトゥに限っては、特務局員としての『休日』がアルトゥ自身の『休み』には繋がらなかった。というのも、休日は彼にとって己の技術を磨くべき時間に充てられるからだった。  郵便公社に着くと、公社内にある蒸気科学ラボへの入室許可を得るため、アルトゥは受付の女性に話しかけた。 「……どうも」 「あら、アルトゥくん、おはよう。早いわね」  女性はにっこりと笑顔を向けた。アルトゥが受付に行くと、いつもこの女の人が対応してくれる。アルトゥより少し年上の彼女は、『お姉さん』という呼び方がしっくりくるような、大人びた優しい雰囲気をまとっている。そのお姉さんの笑顔が眩しくて、つい目をそらしたくなったところを、アルトゥは、ぐっとこらえた。 「手伝いに来たんだけど、今日もラボ、入っていい?」 「ええ、大丈夫よ」  お姉さんはそう言うと、慣れた様子で手続きをして、アルトゥを案内した。蒸気科学ラボへと向かう途中で、配達部を横切る。ちらり
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背景イラスト1点納品しました

SNOWLINKS様運営の同人PBW『アナザープレヱス リフレイン』のメイン背景を作成させていただきました!右半分は前作、『アナザープレヱス』の街並みの背景流用となりますが、左半分は新作に合わせて新規で作成させていただきました。↓全体図はこちら↓荒廃した街の雰囲気を禍々しく表現できたかなと思います。ご依頼ありがとうございました!
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【小説】安らぎの場所 -小さな故郷-

 大陸横断鉄道の列車から見える街並みの景色が、少しずつ東方系の色を帯びてきていた。  ――帰ってきたな。  ルーシン ウェイは故郷に近づくにつれ、顔の緊張がほぐれていくのを感じていた。普段は気づかないが、外の世界にいると、やはりどこか身体に力が入ってしまうものなのだということを、自覚させられた。  アルフライラ北東区、イェンルー老街。その近くの小路にある、小さな商店。ここが、ルーシンの実家だった。  ただいま、と暖簾をくぐると、両親と弟がそろって出迎えてくれた。東方人の父とアルフライラ生まれの母は、ここで出会い、結婚して、ルーシンと彼の弟を産んだ。  元気でやってるかと尋ねながら、ルーシンと自分たちの近況を明るく交換しあう母。わいわいと話している様子のそばで黙って茶を飲んでいる父。対照的な両親の性格は、ルーシンと弟のふたりにそれぞれ受け継がれている。自由で大らかな母親の性格はルーシンに、真面目な父親の性格はルーシンの弟によく似ている。  弟は、父親と一緒に商店を経営していた。小さな店ではあるが、真面目で堅実に商売をしているおかげで、評判も上々のようだった。  そろそろ子どもが生まれるんだ、と弟はルーシンに教えてくれた。ついこの間結婚をして身を固めるというのを耳にしたばかりだと思っていたルーシンは、この知らせを聞き、月日が経つのは早いな、と呟いた。男の子が生まれるのか、それとも女の子なのか気になるが、どちらにせよ、弟なら、きっと良い父親になるだろうことは、ルーシンにとっては容易に想像できた。  実家で一休みした後、ルーシンは散歩がてら外を出歩いた。懐かしい食べ物の匂いが漂ってくる
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【小説】記憶の波、揺らす蒼海(わだつみ)

 常夏の都市、アルフライラ。なかでも「南のリゾート地」とも称される、南東区。ナーディルは、特務局員エージェントの訓練兼、配達部の手伝いで、この地区の海岸近くにある邸宅へと訪れていた。 「ありが、とう」  《手紙》の受取人からサインを貰うと、まだ慣れない、たどたどしい公用語で、ナーディルはお礼の言葉を述べた。  一通り配達が済んだ後、仕事の報告をするために分局へと戻ろうとしたが、ふと、出発前の上司の言葉を思い出す。 「ナーディル、アルフライラの海は綺麗だぞ。ついでに見に行ってくるといい」  そう言うと配達場所から近い、おすすめのビーチの場所を教えてくれた。海を見たことがないことを知り、気を利かせてくれたのだろうか、戻らなければいけない時刻までにはまだ余裕があった。 (海、見てみたいな)  ナーディルは時間を確かめていた懐中時計を元の位置に収める。戦火で眠らせていた好奇心を目覚めさせ、ビーチの方角へと足を向けた。  蒼い空に、蒼い海。そして、白い砂浜。全てが眩しくて、ナーディルは目を細めた。海と砂の境界線では、波が寄せては引いていく。足だけでも浸してみたいと靴を脱ぎ、素足で乾いた砂地を踏むと、炎で炙られた鉄板の上にいるかのように熱かった。 「わっ……!」  あまりの灼熱に、水を求めて思わず走り出す。海の方へ駆け込むと、押し寄せてきた波がナーディルの足を癒した。肌に触れた冷たい水が、するすると熱を冷ましていく。  海の成す自然の色彩(グラデーション)に惹きつけられ、ナーディルは景色に魅入る。遠くの水はより蒼く、近くの水はより透けている……繰り返し押し寄せる波(透明な水)を不思議そうに
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