読み切り超短編小説「びしょ濡れになった花嫁」
「私、絶対許さないから!」新婦の姉は小声でそう言うとボクを睨みつけた。
名古屋市郊外の結婚式場、ボクはここでウエディングプランナーとして働いていた。
その日ボクは担当させていただいた新郎のハルオさんと新婦のアキコさんの結婚披露宴で司会をしていた。専門の司会者やアナウンサーなどが司会をするケースが多いが、まれにボク自身に司会もやってほしいと頼まれることもある。 新郎新婦は同い年でボクより3歳年下だった。二人ともとても礼儀正しく好感の持てるカップルでボクともとても気が合い、年齢も近いこともありぜひボクに司会をやってほしいと頼まれた。 何度かある事前打合せにアキコさんより2歳年上の姉が一度だけ一緒に来たことがあった。姉は独身で勉強のためついてきたと言っていた。姉妹はとても仲が良く、兄弟のいない一人っ子のボクはうらやましかった。
2回目のお色直しまでそろそろというころで事件は起こった。
「ガシャーン」という音とともにビール瓶が倒れ、新婦の純白のウエディングドレスがびしょ濡れになった。
女性スタッフが慌てて新婦の近くに駆け寄り、右往左往し始めた。
ボクは右手にマイクを握った。
「皆様、大変申し訳ございません。ただいま私の粗相で新婦のドレスを汚してしまいました。予定より少し早いですが、ここで新婦の2回目のお色直しをさせていただきます。誠に申し訳ございません」ボクは深々と頭を下げた。 新婦が女性スタッフと披露宴会場から退場した後、末席のテーブルに座っていた新婦の姉がボクに近寄り睨みつけながら小声で言った。
「私、絶対許さないから!」
10日後
新婚旅行から帰ってきたハルオさんとアキコさ
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