【連載小説】第14話 海を見下ろす決意
櫻木の顧問弁護士が帰った後、
雅子は全身の力が抜けたようになり立ち上がることも出来なくなった。
萌が幼稚園に通うようになってからお手伝いの恒さんは辞めることになり
雅子と萌の二人暮らしだったので家事一切を雅子がしていたが
その日は何をする気力も残っていなかった。
『ママ、ママ!お腹空いた』
といきなり萌が抱きついてきた。
『ん、何?えっ!こんな時間、何も用意してないわ、
萌ごめんね、今日は何か出前お願いしようか?』
『わぁーい!萌はね、ハンバーグとオムライシュが食べたい!』
『まあそんなに食べられるの?それからオムライシュじゃなくてオムライスでしょ』
『萌、オムライス全部食べれるもん、いっぱい食べて大きくなってママに熊さん買ってあげるの』
『熊さんかぁ、いいわね、でもどうして熊さんなの』
『だって熊さんがママを守ってくれるから。
ねえママ知ってる?森で一番強いのは熊さんだよ』
雅子はもう我慢しきれなくなっていきなり萌の体を抱きしめた。
『萌ごめんね。ごめんね。こんなママで』
『ママ痛いよ』
『ねえ萌、この家を出てもっと違うところに住もうか』
『お引越しするの?たーちゃんちもこの前お引越しして海が見えるお家なんだって』
『そう隆君ね。萌とは仲良かったわね』
『うん、萌も海の見えるお家がいい』
『そうね、そうしようね』
『わーい!海!海!』
萌はまだ治りかけた足をぎくしゃくさせながら走り回った。
何も言わず消えることが櫻木への償いだと思った。
幸い櫻木からはこの家を出て行くようにと勧告されただけで
それ以上のことはなかった。
毎月、櫻木から貰っていた生活費の中から
僅かばかりの蓄え
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