陽菜は、人を変えようとしない。
放課後の教室には、夕暮れの光がゆっくり流れていた。凪は席に座ったまま、陽菜たちの方を見ている。陽菜はまだ、クラスメイトの話を聞いていた。時々笑う。時々うなずく。でも、不思議なくらい自分の話をしない。相手の言葉を、大事そうに受け取っている。凪はその姿を見ながら思う。私だったら、どうするだろう。きっと、もっと何か言ってしまう。大丈夫だよ。気にしなくていいよ。こうした方がいいよ。そんな言葉を、次々に並べてしまうかもしれない。でも陽菜は違う。聞いている。ただ、聞いている。それなのに、相手は少しずつ元気になっていく。その様子が、凪には不思議だった。しばらくして、相談していた女子生徒が立ち上がる。「ありがとう」少し照れたように笑う。陽菜も笑った。「うん」それだけ。それだけなのに、女子生徒の表情は来た時より柔らかい。凪は思う。陽菜は、人を変えようとしない。だからなのかな。みんな安心して、話せるのは。その時だった。陽菜がこちらを見る。目が合う。凪は慌てて視線を逸らそうとする。でも、間に合わなかった。陽菜が笑う。「凪」呼ばれる。胸が少しだけ跳ねる。「帰る?」ただそれだけの言葉。なのに、なぜか嬉しい。凪は小さく頷く。「うん」陽菜は鞄を持つ。夕陽が髪を照らす。その光景を見ながら、凪はまた考えていた。私は、陽菜みたいになりたいのかな。それとも、陽菜の隣にいたいのかな。まだ分からない。でも、ひとつだけ分かることがある。陽菜と一緒に帰ると聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ温かくなった。その気持ちは、もうごまかせなくなり始めていた。二人は教室を出る。廊下には、長く伸びる夕陽の影。凪は、その影を見ながら思う。今日も
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