絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

1 件中 1 - 1 件表示
カバー画像

これからも、誰かを照らせる光でいたいな

文化祭の朝。校舎の廊下は、にぎやかな声とポスターの色で満ちていた。柚は照明機材を抱えながら、体育館のステージへと向かう。空は少し曇っていたけれど、不思議と心は晴れていた。「今日は、ちゃんと光を届けよう」そう小さくつぶやいて、胸の奥で深呼吸をした。リハーサルのときよりも、客席はずっと広く見えた。ざわめきの向こうで、新くんがピアノの前に座っている。彼の表情は落ち着いていて、それだけで心がすこし安心した。開演のベルが鳴る。幕が上がると、ステージの上の空気が変わった。演者の声、ピアノの音、観客の息づかい──そのすべてが、ひとつの世界を作り出していく。柚は手元のスイッチを握りしめた。光を送るタイミングを計りながら、“今、この瞬間”に自分が生きていることを感じていた。劇の終盤、ピアノの旋律が静かに流れ始めた。その音は、昨日新くんが言っていた「人を包む光」みたいだった。優しく、やわらかく、誰かの心に届くための音。柚は息を整え、スイッチを押した。天井から降り注ぐオレンジの光が、舞台を満たしていく。光が俳優たちの背中を照らし、舞台袖の空気まで金色に染めていく。――その瞬間、柚は確かに感じた。自分の中にあった“灯り”が、ステージの上に広がっていくのを。観客席から拍手が起こった。幕が下りても、しばらくその音は止まらなかった。柚は胸に手を当てて、静かに息を吐いた。「ちゃんと届いたんだ……」そのとき、舞台裏に新くんがやって来た。少し汗ばんだ額をぬぐいながら、にこっと笑う。「見たよ、君の光」「……気づいた?」「もちろん。あのオレンジ色、君らしいなって思った」その言葉に、柚の頬が少し熱くなった。でも、照れく
0
1 件中 1 - 1