「生命倫理と死生学の現在⑪」 ~人は何のために生まれ、どこに向かっていくのか~
(4)「終末期医療」から発達した「死生学」の奥深さ
②「死」を直視せざるを得なくなった「終末期医療」
「終末期医療」(terminal care)~がんの末期など死期が近づいた人に苦痛や死の恐怖をやわらげる医療です。「死の受容」と「生の充実」が重要な要素となり、「する」治療(cure)の手段は尽きても患者を孤独にせず、最後までそばに「いる」看護(care)を心がけ、全人的アプローチを積極的に行う必要があるとされます。これに関連して死生学(タナトロジ-、thanatology)も1970年代から飛躍的に進歩を遂げ、「死」に対する多角的考察もなされるようになりました。これはギリシア語のthanatos(タナトス、死)とlogos(ロゴス、学問)の合成語で、今日では一般的に「死」と「死への過程」の諸問題を学問的に扱う研究を指します。具体的には、人間が如何によりよく生き、自己の生命の終わりを全うするかについて、医学・看護学・心理学・法律学・社会学・神学・哲学などから多角的に考察しようとするもので、エリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』などの著作を契機に、1970年代から飛躍的な進歩を遂げました。この中で自立した死生観の確立を目指した死への準備教育(death education)、末期患者の家族と遺族に対する悲嘆教育(grief education)といった観点は注目されます。
「ホスピス」(hospice)~末期患者のケア・システム、緩和ケア(palliative care)。その中心概念は「死にゆく患者と共に歩む」です。WHO(世界保健機構)方式で痛みのコントロールを行うと、
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