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単車にのって

仕事サボって君の街へ、 単車にのって会いに行くよ。 仕事をサボってきたなんて言ったら、 きっと君は怒るんだろうな。 でもね、 会いたいよ。 4月から君は大学生。 一人暮らしには慣れたのか? 楽しくやっているんだろうか? 変な虫はついていないんだろうか?笑 高校では野球部の補欠とマネージャー。 補欠のくせにマネージャーと付き合ってるなんて、 恥ずかしくて誰にも言えなかった。 最後の試合が終わった後に、君に告白したね。 周りにバレずに君を呼び出すのは、苦労したよ。 君が微笑みながら頷いてくれるなんて思ってなかったのもそうだけど、 野球は終わりでも、青春は終わらせたくなかったんだ。 だんだんと髪が伸びていく君は、 どんどん大人っぽくなっていった。 合格するまでは切らないって言ってたけど、 やっぱり今も伸ばしているなら、 その伸びている最中の君もずっと知っていたい。 俺は相も変わらず先輩たちにしごかれている。 みんないい人だけどね。 毎日体力勝負で、家に帰って寝るだけ。 こうして単車に乗るのも久しぶりなんだ。 高校の時は窮屈で、早く働いて自由になりてーなんて思っていたけど、今でも不自由さは変わらないんだろーな⁉︎ ふっと笑みがこぼれる。 国道とはいえ山々をすり抜けて走らなくてはいけない道は、はやる気持ちを冷静にさせてくれる。 ちょっと前ならたいして車も通らないだろうとタカをくくり、 スピードというスリルを味わっていただろう。 でも今はそんなことはしない。 君に会いたいから。 ふっと笑みがこぼれる。 こんなこと会ってから話せばいいのに。でもいざ目の前にしたら、 伝えたい言葉が出てくる自信
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under the U.K

ロマンチックが嫌いだから優しくできないんだ。 小さな街に似つかわしい、小さな国道沿いのタバコ屋の親父はシャッターを洗っていた。 左の足元にはアルミ製のボコボコのバケツ、右手にたわしを持ち、ゴシゴシこすっていた。 その顔はしかめっ面で、何度も舌打ちをしている。 昨晩、ここで大きな事故があった。 結果、3人の若者が命を失った。 酒飲み運転をしていた若者たちは、ハンドル操作を誤り、8トントラックに激突した。 シートベルトをしていなかった若者たちは、その衝撃で全員が外にはじき出され、即死だった。 タバコ屋の親父はシャッターに飛んだ血を、よそ様に迷惑かけるんじゃねーよとばかりに、洗っていた。 「タクヤたち、遅せーな」 ツヨシが苛立ちながら聞いてくる。「まぁ、そのうち来んだろ」 「ヒロにも連絡きてねーのかよ?」 俺も苛立ちを抑えきれず、タバコの火を消した。「来てねーよ。先に入ってべ」 俺たちはこの街にある『U.K』という小さくて年季の入ったライブハウスで待ち合わせをしていた。 今日は練習ではなく、他の仲の良いバンドのライブに遊びに来ていた。 結局、何の連絡もないままライブは終わった。 「おねーちゃん、ヒマしてんならオレらと遊ばねー?」 一杯ひっかけた酒が調子に乗らせているのか、俺は道を挟んだ向かい側の娼婦をからかっていた。 何も聞こえなかったかのように、女は下を向いたままケータイをいじっている。 「どうする、ツヨシ?どこ行くよ?」 ライブハウスを出てどこともなく歩いていると、ケータイが鳴った。 着信画面にはマコトと表示されている。 俺はいつも通り 「はいはーい。もしもーし。」と おちゃらけ
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啾啾ーしゅうしゅうー

俺、中川啓太は、今日も汗びっしょりだった。。営業のワンボックスカーに大量の段ボールを詰め、取引先をくまなくめぐっていく。 取引先は主に飲食店だ。 食品会社の営業兼配送をしている。人手不足はどこも同じだから仕方がないが、うちのような小さな会社では営業も配送もほぼほぼくっついてしまった。上司からはこき使われ、 飲食店ではタイミングを間違うとドヤされる。 道路は常に渋滞し、 店先に車を寄せることもままならないところも多いから、常に神経を使って運転している。 背中に張り付いたワイシャツは乾くことなく、会社に戻る羽目になる。 昔から男なんだから汗をかけと言われ続けてきたが、終わりはあるのか? 会社に戻れば戻ったで、青春時代を忘れた上司から現実を突きつけられる。 報告、連絡、しても返ってこない相談。 そんなくせに、定時を過ぎれば飲みに行くぞと誘われる。 話すことなんて奥さんの愚痴と、娘との会話がなくなったと、ジャイアンツの試合結果だけ。 なんで俺なんか誘うんだよと嫌になるが、理由は簡単だ。 俺は多くをしゃべらないし、基本的に「そうですね」しか言わない。 4つ目の会社ともなれば当然だ。 以前の俺ならば、ちょっとでも納得いかないことがあればすぐに食ってかかっていた。 世界は自分を中心に回っていると思っていたし、俺についてこいとさえ思っていた。 あいつの時だってそうだった。 東京に出て音楽で食っていく、絶対有名なミュージシャンになってやるって置いてきた。 俺には才能があると思っていたし、それだけの未来があるものだと信じていた。 いつからこんな風になってしまったのだろう? いつになったら俺は東京に
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タクシードライバー

「どこまでだい?」 タクシードライバーはぶっきらぼうに聞いてきた。 過ぎ去っても過ぎ去っても灯りの中を進んでいく。 深夜だというのに眠らない街の中で、俺は眠るために小さなアパートに帰っていく。 「なんのために生きているんだろう?」 窓の外を眺めながらぼんやりとそんなことを考えていた時だった。 「お客さん、疲れてそうだね?」 まだ50歳位だろうか。 ちょっと強面な風貌。 ぶっちゃけあまりタクシードライバーぽくはない。 なんでこの人はタクシードライバーなんてやっているんだろうと、実は心の中で思っていた。 「ええ、ちょっと疲れています。」 取引先との接待ほど、気が滅入ることはない。 酒は嫌いじゃない。むしろ好きな方だし、強い方だと思う。 ただ、どうせ飲むなら楽しく飲みたい。 接待が無駄だとは思わない。 相手と打ち解けあって仕事につながることも確かにある。 けど決まって接待の後はこう思う。 好きな酒を飲んでいても酔っ払うことさえできないのかと。 隣でヨイショし続ける上司。 それを間に受ける取引先の部長。 場を壊さないために空気を読むつくり笑いの俺。 終電を逃すほどの時間ではないが、とにかくもう歩きたくなかった。 できる限りアパートのギリギリまで誰か運んでくれ。 そう思ってタクシーに乗った。 第三者に一発でわかられているほど疲れた顔をしていることが少し気恥ずかしかったが、疲れているからこそタクシーに乗っているんだよと心の中で反論した。 「仕事で疲れるってことは、いいことだよ。」 「えっ!?」 意外な言葉に俺はドキッとした。 同時にバカにしているのかと言いかけた次の言葉には余計に腹が立った
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がむしゃらのブルース

吐いた言葉を自分に突きつけ、 追い込むように走り続けてきた。 垢抜けた空は、俺への退職祝いだろうか? 光陰矢のごとし。 昨日で会社員生活は終わった。 がむしゃらに走ってきた分、 あっという間の時間は、 思い出の引き出しも少ない。 今日くらいゆっくりとお昼まで寝ているんだろうなと思っていたが、 朝から玄関を開けてしまう。 まばゆい日差しは、 今日から何をしていいのだろう?という 俺の気持ちとは裏腹だ。 会社のために、 家族のために、 必死で駆け抜けたこの道は 一体どこにつながっているのだろう。 おもえば人生そこそこだった。 ごくごく平凡な人生と言ってよい。裕福ではないが貧乏でもなく、 人に迷惑をかけることもあまりなく、 たまに行ける旅行が趣味といえる程度。 それも子供たちが大きくなってからは、 だんだんと足が遠のいていった。 人生100年時代に突入したというが、 ひとえに喜んでばかりはいられない。 現にこうして立ち尽くしているのだから。 行き場のない心と会話をしていると、 遠くから子供たちのにぎやかな声が聞こえてくる。 その声はだんだんと大きくなり、 目の前をぶかぶかのランドセルを背負った 子供たちが歩いて行く。 そうか、登校の時間か。 そういえばうちの子たちにも こんなキラキラしてかわいい時期があったんだよな。 こいつらのためならどんなことでもできる。 誰が相手でも戦ってやる。 世界中が敵にまわっても。 なんて、 物語の主人公になった気でいたっけな。 大人になるにつれ、 できることが増えていって、 責任感が増していった彼らに対して、 俺はまだ同じ気持ちだといえるのか? いや、待
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雨にも負けず 風にも負けず 凛と咲く花を眺めていた。 羨ましくもあり、 切なくもあり、 不器用でもある。 ありのままの自分でいる あなたは美しい。 世界が壊れてしまいそうな音が響く。 そんな中でもあなただけは孤独を味方につけ、 誰かと比べることもせず、 生きてゆこうと歌ってる。 こんな時代だからこそ、 何者にも染まらずにゆく。飾り立てた言葉なんて欲しくない。 不必要な褒め言葉もいらない。 激しく揺れている空気の中、 時には諦めそうにもなるけれど、 やっぱりあなたはここにいる。 この世に綺麗なものなんて 存在してないのかと錯覚することもあるけれど、 あなたがいてくれるから 僕はまた前を向ける。 たった今のこの瞬間だけ 輝くものを離さないないように、 雨の日も、 風の日も、 雪が降っても、 突風が吹き荒れても。 あなたが咲き続けることで、 あなたの周りに 新しい花が咲く。 そう、 あなたはわかっている。 自分自身を愛せないで、 誰もあなたを愛してはくれないことを。 愛されることは、 癒しも苦しさも 全て受け入れるということを。 あなたが僕を産んでくれたから、 僕もいつか花を咲かせるでしょう。
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少年時代の葛藤を思い出すショートストーリー『sixteen』

『sixteen』街の外れにある河原に面した公園。 人目につかない日陰を選んで腰を下ろす。 ポケットからくしゃくしゃになったタバコを取り出し、 空に向かって煙を吐き出す。 人目につかないところを選んだのは、 見つかって停学や退学になることが怖いんじゃない。 つまんないことをいちいちうるさく言う大人とはしゃべるのも面倒だし、 誰かに何かを話したところで、 俺の思いを分かってくれる人がいるとは思えないからだ。 まあ、俺自身もうまく言葉にできないからこうしてるんだけど。 高校生になれば幾ばくかの自由を得られると思っていた。 もちろん中学生のときよりは自由だ。 金を持って登校していいということは、 帰りは自由に遊んで帰っていいわけだ。 義務教育から外れたということは、 遅刻も早退も、行くも行かぬも自分の判断。 部活に青春をかけることも選べれば、 いい大学目指して勉強に励むことも選べる。 仲間とつるむことも選べれば、 ひとりを選択することもできる。 でも結局俺は、どれでもない。 何かを選んだわけでも、 自由になれたわけでもない。 きらめく水面に石を投げ込みたくなったが、 それすら面倒くさい。 そう。 きっとこーゆーことなんだ。頭で何かしたらおもしろいかもと思っても、 行動におこすことはめんどくさい。 実際石を投げてみれば、 もっとあっちを狙ったのにとか、 思ったより遠くに飛んだぜとか、 楽しめることはあるはずだ。 でもきっとすぐ飽きる。 誰かと何かをしゃべっているときも、 誰かと何かで遊んでいても、 いつもどこかで距離を感じてしまう。 楽しく感じたはずなのに。 俺だって昔からこうだったわ
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野良犬ー月の酔う夜ー

めずらしいな、お前がそんな顔してるのは。 何度目だろう? 口を開きかけて、 でも結局出るのはため息で、 またグラスを口元に持っていく。何度目のときだったろう? お前から話すまで、俺からは聞かないって決めたよ。 どこにでもあるチェーンの安い居酒屋。 お前と飲むときは大抵こういうところ。 どうせ飲み潰れるんだから、安い方がいいだろって。 いつも馬鹿話しで笑わせてくれる。 好きな子に振られた話し、 会社でやらかした話し、 酔っ払って立ちションしておまわりさんに注意された話し。 いつも懐かしい話で盛り上がる。 そんなお前が黙ってるんだから、よっぽどのことなんだろう。 オッケー、今日はとことんまで付き合うぜ。 今日はとことん馬鹿な話しを俺がしてやる。 やらかした馬鹿話を続けてると、 お前はだんだん苦笑いから、 少しずつ声を出して笑い出す。 それが嬉しくて、 俺は恥ずかしさも忘れて 必死で自虐ネタを思い起こす。 俺の話が尽きることを分かったのか、 お前は 「もう一軒行くか?」 と席を立つ。 人知れず悲しみ抱いた 眠らない都会の夜。 次の店に向かう途中、 足元に転がってる空き缶を踏み潰し、 お前は 「雀の涙ほどやる気が湧いてきた」 って。 「ありがとう」ってニヤリと微笑んで その空き缶を蹴飛ばした。 遠くで野良犬が吠えている。 俺たちはその野良犬と変わらない。 ここにいるんだよと吠えながら、 誰に向けて吠えているのか、 何のために吠えているのかわからない。 でも負け犬じゃないんだ。 俺もお前も負け犬じゃないよ。 今はまだ届かない叫びでも、 吠えなかったら誰にも届かないから。 きっと俺たちの存
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夏の日の少年

飛行場が近くにある以外は、 のどかでなにもない街。 ゆったりと流れる時間にやきもきする。 もうすぐ夏休みも終わり。 だいたいの子供が憂鬱を感じているだろう。 でも僕はそんなことよりも、 早く明日になって欲しい。 太陽の日差しがまだ優しくなっていく少し前、 通りから緩やかな坂道を下っていく。 車の音が聞こえなくなり、 静かに流れる風の音が気持ちよくなった頃、 いつもの公園が顔を出す。 今日は日曜日。 木漏れ日が揺れて遊ぶ中、 寄り添ってるカップルがたくさんいる。 夢中でボールを追いかけている同級生や近所の子らに声をかけ、 僕は抱えていた子犬のペスを放す。 ペスもボールを追いかけるように、僕らの仲間に入る。 この地域はサッカーが盛んだ。 野球よりも断然人気があるし、多くの子供たちは小さな頃から サッカーボールに慣れ親しんでいる。 強いクラブチームや、強豪の高校は僕たちの誇りだ。 だからこそ、強いクラブチームには4年生にならないと入れない。 小さいうちから入れるクラブももちろんあるが、 一旦入ってしまうと他のクラブにはいそいそと移籍できない。 ここにいる連中は、憧れのあのクラブに入りたいやつばっかだ。 なにも考えずにボールを追いかけているのは、楽しい。 いや、その瞬間は楽しさを感じている余裕さえない。 タイムマシーンにでも乗ったかのように、 あっという間に時間が過ぎる。 僕はこの感覚が好きだ。 もしも時間がゆっくりとしか過ぎないのであれば、 一番の楽しみが来るのを待ちぼうけする時間も長くなってしまうから。 夕焼けが終わる頃、みんな 「腹減ったー」って言いながら走って帰る。 早く夕飯が
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