単車にのって

単車にのって

記事
小説
仕事サボって君の街へ、
単車にのって会いに行くよ。

仕事をサボってきたなんて言ったら、
きっと君は怒るんだろうな。

でもね、

会いたいよ。

4月から君は大学生。
一人暮らしには慣れたのか?
楽しくやっているんだろうか?
変な虫はついていないんだろうか?笑

高校では野球部の補欠とマネージャー。
補欠のくせにマネージャーと付き合ってるなんて、
恥ずかしくて誰にも言えなかった。

最後の試合が終わった後に、君に告白したね。
周りにバレずに君を呼び出すのは、苦労したよ。
君が微笑みながら頷いてくれるなんて思ってなかったのもそうだけど、
野球は終わりでも、青春は終わらせたくなかったんだ。

だんだんと髪が伸びていく君は、
どんどん大人っぽくなっていった。
合格するまでは切らないって言ってたけど、
やっぱり今も伸ばしているなら、
その伸びている最中の君もずっと知っていたい。

俺は相も変わらず先輩たちにしごかれている。
みんないい人だけどね。
毎日体力勝負で、家に帰って寝るだけ。
こうして単車に乗るのも久しぶりなんだ。

高校の時は窮屈で、早く働いて自由になりてーなんて思っていたけど、今でも不自由さは変わらないんだろーな⁉︎

ふっと笑みがこぼれる。

国道とはいえ山々をすり抜けて走らなくてはいけない道は、はやる気持ちを冷静にさせてくれる。
ちょっと前ならたいして車も通らないだろうとタカをくくり、
スピードというスリルを味わっていただろう。

でも今はそんなことはしない。

君に会いたいから。

ふっと笑みがこぼれる。
こんなこと会ってから話せばいいのに。

でもいざ目の前にしたら、
伝えたい言葉が出てくる自信がない。

だからこそ電話じゃなくて、
直接君に会いたい。

言葉よりも、
直に魂が震えるだろうから。

いつか走った道は、君へと続く道。
楽しくて、嬉しくて、しょうがないんだ。

このオンボロバイク、
たとえエンジンが壊れても走り続けろ。

古い石垣。
藁葺き屋根。
山あいの小さな街を超え、
曲がりくねった道の続く狭い県道が見えてきた。
ここを下りきったら、君が暮らしている街に入る。

君のいる街。
僕の知らない君がいる街。

もっと早く。
風に乗ってくれ。

もっと強く。
エンジンが壊れても走れ。

たった1週間で仕事サボってたらクビになってもおかしくないよね?
それでもどうしても君に逢いたくて、、
買ったばかりの単車にまたがってしまった。

君の喜ぶ顔が見られる期待感。
もしかしたら俺よりもいいやつが目の前に現れてしまっていないか、
本当はちょっぴり怖い自分もいる。
僕らは違う世界を生きている。

その世界をつなぐものがあるとすれば、
会いたいと言う気持ちと
そこに連れて行ってくれるこの単車。

俺の心のようにエンジンは熱く、
俺の代わりにエンジン音はうなりを上げ、
振動と共鳴しながら、
風に乗って、
君のいる世界へ。

ちょっとだけでも君に触れたかった。
ちょっとだけでも君と同じ世界にいたいから。

なんでだろう?
君に会いたくてしょうがないのに、
君のことを想えば想うほど、
泣きたくなってしまう。
君の顔がぼんやりと滲んでしまう。

君に会えない明日なんかいらないんだ。
そんな明日は今日の続きになりえないから。

もし仮に今、この場で死んでしまっても、
俺の魂は残るだろう。

俺の心はいつまでも君に向かって
走り続ける。

アスファルトに張りついた桜の花びらが、
やけにきらきらと眩しい。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す