睡眠不足が招く脳のSOS
学級崩壊のクラスで子どもが「キレる・はしゃぐ」本当の理由。
学年別の急激な人間関係の変化や小さなトラブルの頻発。
先生が1人で抱え込み、気づけば授業が成立しなくなる「学級崩壊」。
クラス全体に不平不満が飛び交い、誰が主犯というわけでもなく、誰もが「自分は被害者だ」「このクラスで生き抜くには強くなくてはならない」と防衛本能を働かせるような過酷な環境。そこでは、ちょっとした相手の言動に敏感に反応し、手を上げたり追いかけ回したりといった行動に出る子どもが表れることがあります。
学級崩壊の保護者会の一幕
あるケースで起きた、保護者会での一幕をご紹介します。
1. 矛先が向かった先と、大人の実態
担任の長期休暇が決まり、代理の先生が決まるまでの保護者説明会でのこと。
「なるべくしてなったのではないか」と現状への意見を述べた途端、大半の保護者の矛先が、一人の児童の親に向かって一斉に向けられました。
全く事実無根のことも言われ、顔も合わせたことのない保護者から罵声を浴びせられる。
子どもが「このクラスは一言意見を言うといっせいに攻撃される。一人一人対応するなんて無理だ」と漏らしていた過酷さを、親自身がその場で体感することになりました。
しかし、その後、クレームをつけてきた保護者一人ひとりと個別に向き合っていくと、驚くべき実態が見えてきました。
「みんな怒っていたから、私ものっかっただけ。気にしないで」
「保護者会で爪痕を残して来いと家族に言われて……本当は別の親に言いたかったけど、その人が発言しなかったからあなたにしただけ。謝りに来られても困る」
誰もが不安や不満のはけ口を求めていただけであり、中には「あのとき代弁してくれて助かった」と声をかけてくれる保護者もいました。外部の攻撃や同調圧力の正体がこうした「曖昧なもの」だと分かったとき、親として注力すべきなのは他者との争いではなく、「親子が向き合う時間」でした。
2. 心療内科の受診と、驚きの「睡眠検査」結果
当時、保護者が医療現場(睡眠検査に特化した診療所)の知見があったこともあり、子どもを心療内科に受診させました。
担当医の言葉は非常に穏やかなものでした。「学校にいるとイライラするの? イライラするなら家にいればいいの。自分はそうしてた」
その言葉に、子どもの張り詰めていた糸がふっと緩みました。
医師から指摘されたのは、子どもが慢性的な睡眠不足に陥ると、以下の状態がコントロールできなくなるという事実でした。
キレる(些細な刺激への過剰反応)
はしゃぐ(疲労の裏返しにある興奮状態)
無関心(エネルギー切れによる防衛反応)
実際に睡眠検査を行った結果、驚くべきデータが出ました。夜間8時間の睡眠中に、なんと約40回も覚醒(脳が起きてしまっている状態)していたのです。
本人は「寝ている」つもりでも、脳は一晩中休まる暇がなく、慢性的な不眠状態にあったのでした。
3. 環境と睡眠を整えることで取り戻した日常
原因が「睡眠の質」と「脳の過緊張」にあると分かってからは、根本的なアプローチが進められました。
微量の眠剤の処方。
何より、「今日、何時間目までならイライラせずに耐えられると思う?」と子どもの感覚を尊重し、スモールステップで登校時間を調整する(1時間目で限界なら早退し、家でしっかりと心を落ち着かせる)。
スモールステップを始めた当初は、子どもを巻き込んで好き勝手やってると保護者の方に思われていましたが。その後、子どもがいない時間帯にクラスの様子(椅子が飛び交うなどの惨状)が他の保護者にも知れ渡るにつれ、「子どもが原因だったわけではない」という現実が共有され、周囲の声も収まっていきました。
そうするうちに、子どもの表情は驚くほど穏やかになり、数か月後には問題なく過ごせるまでに回復していきました。
「頑張っているね。」と親御さんが声をかけると、「学校に行くの当たり前でしょ。」と、答えるまでになりました。
最後に
学級崩壊のような過酷な環境に置かれた子どもたちは、外からのストレスだけでなく、「知らぬうちに睡眠の質が奪われ、脳が慢性的な不眠に陥っている」というケースが少なくありません。
「キレる」「はしゃぐ」「無関心」といった行動の裏側には、本人の性格や家庭環境だけでなく、睡眠不足による脳のSOSが隠れていることがあります。
もし、子どもが過酷な環境の中でコントロールを失っているように感じたら、「睡眠」という身体の土台から見つめ直してみることも、大きな突破口になるかもしれません。
ちなみに、大人のケースでは、熟睡感がない、日中の強い眠気、寝つきが悪い、何度も目が覚めるなど、睡眠障害が2週間以上続く場合は、早めに睡眠について見直されてください。 by 元メンタルヘルスケア講師
最後まで、読んでいただきありがとうございます。