子どもが学校に行けなくなった。
どうして、うちの子が。
何かしてあげられることはないだろうか。
そう考えながら、毎日を過ごしている親御さんもいらっしゃると思います。
けれど、子どもの心について考えていると、もう一つ、気になることがあります。
**自分が親との関係のなかで身につけた生き方を、知らないうちに自分の子どもにも繰り返しているのではないか。**
## 子どもの頃に身につけた、人とのつながり方
精神科医・高橋和巳氏は、『子は親を救うために「心の病」になる』や『親は選べないが人生は選べる』などの著書で、親子の関係と、そこで身につける生き方について考察しています。
子どもは、親から教えられた言葉だけを学ぶわけではありません。
親がつらいとき、どう振る舞うのか。
自分の気持ちを、どのように扱っているのか。
人に頼ることができるのか。それとも、すべてを一人で抱え込んでしまうのか。
そうした日々の関わりのなかで、子どもは人とのつながり方や、自分の気持ちの扱い方を身につけていきます。
親に嫌われないように、いい子でいる。
期待に応えるために、頑張る。
自分が我慢すれば、周りはうまくいく。
そうした生き方が、その子にとって必要だった時期もあるのかもしれません。
## 「大人の愛着障害」という問題
愛着とは、簡単にいえば、人との間に安心できるつながりを築くことに関わるものです。
子どもの頃に身につけた人との関わり方は、大人になったら自動的に消えるわけではありません。
人に嫌われることが怖くて、いつも相手の顔色をうかがう。
本当は助けてほしいのに、誰にも頼れない。
相手に見捨てられないように、自分の気持ちを押し殺す。
親しい人との関係になると、かえって不安になったり、距離を取ってしまったりする。
こうした困難が続くとき、子どもの頃の愛着形成や、それ以降の人間関係を振り返ることが役立つ場合があります。
「大人の愛着障害」という言葉は、こうした問題を考える際に使われます。ただし、大切なのは、名前をつけることだけではなく、自分がどのような関係のパターンを身につけ、今も繰り返しているのかを理解することです。
## 大人になっても、親との関係を繰り返す
子どもの頃、親の期待に応えることで安心を得てきた人は、大人になってからも、周囲の期待に応えようと頑張り続けることがあります。
自分の気持ちよりも、相手の気持ちを優先する。
断りたいのに断れない。
つらくても、弱音を吐けない。
そして、自分が親になったときにも、知らず知らずのうちに、同じような関わり方をしてしまうことがあります。
もちろん、必ずそうなるわけではありません。
自分の過去を振り返り、違う関わり方を身につけていくこともできます。
ただ、本人にとっては長年の当たり前です。自分がどんなパターンを繰り返しているのか、気づかないこともあるでしょう。
## 子どもは、親を救うために苦しむのか
高橋氏の著書『子は親を救うために「心の病」になる』には、親子の心の問題を考えるうえで、印象的な視点が示されています。
親を大切に思う子どもが、親の苦しみや家庭の状況を感じ取り、自分の気持ちを抑えたり、無理をしたりすることがある。
その葛藤が、心身の不調や行動上の問題として表れる場合がある、という見方です。
もし親自身も、かつて自分の親との関係のなかで我慢を重ね、自分の気持ちを後回しにしてきたとしたら。
その生き方を身につけた親が、今度は自分の子どもとの関係のなかで、似たような葛藤に直面することがあるかもしれません。
そして子どももまた、親を大切に思うからこそ、何かを抱え込んでしまう。
こうして、似たパターンが世代を超えて繰り返されることがあります。
ただし、子どもが不登校になったことを、親の過去が原因だと決めつけたり、親だけに責任を負わせたりすることも、ここで伝えたいことではありません。
## この繰り返しを、どこかで終わらせることはできるのか
もし自分が親との関係のなかで身につけた生き方を、今も繰り返しているのだとしたら。
それは、本当にこれからも続けなければならないものなのでしょうか。
我慢することでしか、人とつながれないのでしょうか。
頑張り続けなければ、認めてもらえないのでしょうか。
自分の気持ちを抑えなければ、家族を守れないのでしょうか。
かつては、それが必要だったのかもしれません。
その生き方があったからこそ、乗り越えられたこともあったでしょう。
だから、過去の自分を否定する必要はありません。
けれど、今の自分には、別の選択肢があるかもしれない。
自分の気持ちを大切にしながら、人とつながること。
困ったときに、誰かを頼ること。
家族を大切にしながら、自分自身の人生も大切にすること。
そうした生き方を、これから身につけていくこともできるのではないでしょうか。
## 子どもの未来だけでなく、自分の未来も
子どもが学校に行けるようになってほしい。
元気になってほしい。
安心して暮らせるようになってほしい。
その願いは、簡単に手放せるものではないと思います。
けれど、子どもの未来を心配するあまり、自分自身の人生を置き去りにしていないでしょうか。
あなたが子どもの頃、本当は何を感じていたのでしょう。
どんなふうに生きたかったのでしょう。
そして今、どんな人生を生きたいのでしょう。
子どもを変えるために、自分を変えるのではありません。
親から受け取ったものを否定するためでもありません。
自分が受け取ってきたもののなかから、これからも大切にしたいものと、もう繰り返さなくてもよいものを見つけていく。
その選択は、今のあなたにもできます。
**親から子へと受け継がれてきた生き方は、気づいたときから、少しずつ選び直せるのかもしれません。**
子どものために頑張ってきたあなた自身にも、これからの人生があります。