たとえば「手洗いを励行してください」と貼り紙をしても、「励行」が読めなければ、外国人のスタッフさんには伝わりません。やさしい日本語なら「かならず 手(て)を 洗(あら)って ください」です(かっこの中はふりがなです)。いつ洗うのかは、書いた人に聞いて足します。
仕事をラクに、しっかり確かに。ラクワーク工房の相楽です。私が下敷きにしているのは、出入国在留管理庁と文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」です。出入国在留管理庁のサイトで誰でも読めます。もとは、国や自治体が外国人に情報を伝えるために作った資料です。
この記事では、ガイドラインの概要にある「作成の3ステップ」に沿って、職場の手順書や貼り紙での使い方を書きます。私の書きかえは国の認定や監修を受けたものではなく、私は日本語教育の資格も持っていません。ここに書くのは、書きかえる側として気をつけていることです。
国がばらばらな職場なら、やさしい日本語は1枚で済み、日本人のスタッフも同じ紙を読めて、口で言うときも同じ言葉が使えます。スタッフさんの国が一つなら、その国の言葉に訳すほうが早いこともあります。
■ステップ1 日本人に分かりやすい文にする
最初の段階は、相手が外国人かどうかの前に、伝えたいことを整理して、いらない情報を削ることです。
たとえば、こんな手順書の一文があるとします。
「作業開始前には必ず手指消毒を実施し、適宜手袋を着用のうえ、異物混入防止に努めること。」
読む人がすることは「消毒する」「手袋をする」の2つです。「異物混入防止に努めること」は、何をすればいいのかが書かれていません。「適宜」も、いつ手袋をするのかが決まっていないので、人によって動きが変わります。ここは元の文を書いた人に聞いて、答えを文に入れます。
概要では、3つ以上のことを言うときは箇条書きにすること、外来語に気をつけることも、この段階に入っています。カタカナの言葉は、元の英語と意味がちがうこともあり、外国の人にもかえって分かりにくいことがあります。職場の文では、台ふきの「ダスター」、食器を下げる「バッシング」のような店の中だけの言葉に、何をする物・どんな作業かを一言添えます。
■ステップ2 外国人にも分かりやすい文にする
次に、文と言葉を直します。概要では、受身形や使役の言い方をできるだけ使わない、簡単な言葉を使う、漢字の量に気をつけてふりがなをつける、といった点が挙がっています。たとえば「手袋の着用が求められます」は「手袋(てぶくろ)を して ください」に、「新人に冷蔵庫の温度を確認させる」は、読むのが新人さん本人なら「冷蔵庫(れいぞうこ)の 温度(おんど)を 見て ください」にします。だれが何をするのかが、はっきりします。
さっきの文で、書いた人に聞いたら「消毒はアルコール」「肉や魚をさわるときは手袋」「キッチンにいるときは、髪の毛が入らないように帽子」という答えだったとします。たとえばこうなります。
1. 仕事(しごと)の 前(まえ)に、かならず 手(て)を 消毒(しょうどく)して ください。消毒(しょうどく)は、アルコールを 手(て)に つけて、よく こする ことです。
2. 肉(にく)や 魚(さかな)を さわる ときは、手袋(てぶくろ)を して ください。
3. キッチンに いる ときは、帽子(ぼうし)を かぶって ください。帽子(ぼうし)を かぶると、髪の毛(かみのけ)が 料理(りょうり)に 入(はい)りません。
番号1つに動作を1つにして、指示の文の終わりは「〜て ください」にそろえ、説明や理由は別の短い文にしました。同じ形がくり返されると、やることの文だとすぐ分かります。3だけは、理由があると守ってもらいやすいので、短い理由を足しました。元の文の「必ず」の意味も残しています(書き方はひらがなです)。
見た目では、「必ず」を「かならず」にしたように、ひらがなで足りる言葉は漢字を減らし、残した漢字には全部ふりがなを付け、「手を 洗って ください」のように、言葉のまとまりごとにすきまを入れています。漢字が読める国の人もいるので、ひらがなを増やしすぎず、ふりがなで補います。貼り紙なら、かっこより漢字の上に小さく書くほうが読みやすいです。手を洗う、手袋をするといった動作は、店で撮った写真やマークを横に置くと、さらに伝わります。
簡単な言葉に言いかえるのが基本ですが、「消毒」「キッチン」のように現場で毎日使う言葉は、そのまま残しています。覚えてもらったほうが早いからです。初めて出す所だけ、1のように短い説明を添えます。
数字・禁止・身を守る手順は、やさしくしても削りません。「さわらないでください」が「気をつけてください」に変わると、意味が弱くなります。
■ステップ3 分かりやすさを確かめる
最後の段階は、日本語教師や外国から来た人に、分かりやすいか、伝わるかを確かめてもらうことです。書いた本人には、どこが難しいのかが見えません。
職場なら、新しく入った外国人のスタッフさんに一度読んでもらい、「1番は何をしますか」と聞いてみてください。言葉で答えられなくても、手を動かして見せてもらえれば、まずは目安になります。ガイドラインには、3ステップとは別に、日本語の難しさを調べる道具(「やさにちチェッカー」など)を紹介する章もあります。
一人で書きかえるのが手間なときは、ココナラの出品「手順書・掲示を外国人に伝わるやさしい日本語にします」でお受けしています。元の文1,500字(A4の手順書1枚ほど)まで3,000円(2026年11月30日までにご購入の初めの3件の値段です)、お届けの目安は3日です。お受けするのはステップ1と2の書きかえまでで、ステップ3の確かめはお店のスタッフにお願いしています。ご購入のあと、トークルームでWordかPDFを送っていただければ、あいまいな所は質問にしてお返しします。直しは2回までです。それより長い文は、ご購入の前にココナラのメッセージでご相談ください。