「社長、もう限界です」現場の悲鳴と社内の亀裂

「社長、もう限界です」現場の悲鳴と社内の亀裂

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コラム

【事務作業を手伝わせた結果、現場に起きた最悪の化学反応】


前回の記事では、ベテラン事務員さんの退職により、私一人が深夜まで事務作業に追われる「ワンオペ地獄」に陥ったお話をしました。

今回は、その不満と焦りから私が犯してしまった「最大の愚策」と、それによって会社内に決定的な亀裂が入ってしまった日々の記録です。

「少しは現場も手伝え」焦りが生んだ最悪の指示

連日の深夜残業で精神的に限界を迎えていた私は、ある朝、朝礼で禁断の一言を口にしてしまいました。

「みんなも知っての通り、今事務員がいない。俺一人じゃどうにも回らないから、現場の作業が落ち着いている時に、伝票の整理や入力作業を交代で手伝ってほしい」

現場の職人たちの顔が一瞬で曇ったのを、今でも鮮明に覚えています。

うちの職人たちは、0.01ミリの精度を削り出すことにプライドを持っているプロフェッショナルです。
彼らにとって、デスクに座ってパソコンの画面と向き合う時間は、苦痛以外の何物でもありませんでした。

「社長、俺たちは図面を見て金属を削るのが仕事です」

「パソコンなんて触ったこともないのに、間違えたらどうするんですか」

職人たちのリーダー格であるベテランの工場長から、すぐに反発の声が上がりました。
ですが、余裕を失っていた私は、思わず強い言葉で言い返してしまったのです。

「会社を維持するための事務作業だろ!会社が潰れたら元も子もないんだぞ!」

重苦しい空気と、高まる社内のギスギス感

その日から、工場の雰囲気は一変しました。

現場の作業が終わった後、渋々事務所に入ってくる職人たち。
キーボードを叩く手つきはぎこちなく、溜息ばかりが部屋に響きます。

現場作業の疲れが残る中で不慣れな事務をやらせた結果、案の定、入力ミスや伝票の紛失が相次ぎました。

「入力したはずの数値が違っていて、月末の請求額が狂う」

「保管場所が変わり、必要な納品書が見つからない」

ミスが発生するたびに、事務所で私が咎め、職人が不満げに黙り込む。
昼休みの食堂からは会話が消え、工場内には常にピリピリとした重苦しい空気が漂うようになりました。

職人の一言が、私の胸を深く刺した

ある日の夕方、工場長が一人で社長室に入ってきました。
その手には、退職届…ではなく、固く握りしめられた拳がありました。

「社長、もう限界です。みんなイライラして、現場の集中力まで切れてます。このままだと、いつか現場ででかい怪我人か、重大な不良品が出ますよ」

工場長のその言葉は、冷や水のように私の頭を冷やしました。

会社の利益を生み出しているのは、間違いなく彼らの現場作業です。
その現場の安全と品質を脅かしてまで、自分の事務作業を押し付けていた。
社長として、一番やってはいけない失敗を犯していたことに、ようやく気づかされたのです。

「すまん…もう現場には手伝わせない。俺がなんとかする」

私は深々と頭を下げ、職人たちを事務作業から解放しました。
そして再び、私一人が深夜の工場で書類と向き合う日々に逆戻りしたのです。

「一刻も早く、新しい事務員を雇わなければ会社が壊れる」

強い危機感を抱いた私は、本格的な「求人募集」へと動くことを決意しました。
しかしそこには、さらに深い絶望が待ち受けていたのです。
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