【18人の町工場社長が明かす、人手不足のリアルな現場】
はじめまして、高橋雅也です。
精密金属部品加工の会社で、従業員18名の二代目社長を務めています。
十代から油にまみれて育った現場叩き上げの人間ですが、今、人生で一番の壁にぶつかっています。
この記事を書いている今も、頭をよぎるのはあの「深夜の工場の静けさ」です。
シャッターを閉めた後の、もう一つの「シフト」
夜22時。
工場内の大型機械がすべて止まり、昼間の活気と金属音が嘘のように消え去った後。
私の「本当の地獄」が始まります。
事務所の薄暗い蛍光灯の下、デスクの上に積み上がっているのは、山のような伝票と未処理の請求書。
得意先ごとの納品書の突き合わせ
月末締めのお支払書類の作成
小口現金の計算と帳簿の記帳
どれも会社を回すためには1円のズレも許されない重要な作業です。
しかし、私の本業はあくまで現場の指揮と経営です。
画面の小さな数字と睨めっこし、慣れないExcelのセルと格闘しながら電卓を叩く。
ちょっとした入力ミスで数字が合わなくなり、原因を探すだけで1時間が吹き飛ぶ。
気がつけば時計の針は23時を回っています。
重い肩を回しながら、誰もいない工場を見渡して、思わず深いため息が漏れました。
「なんで社長の俺が、毎日こんな時間まで伝票をめくってるんだ…」
ベテラン事務員の退職が引き金だった
半年前まで、うちの会社には勤続15年のベテラン女性事務員・渡辺さん(仮名)がいました。
彼女は経理から総務、お茶出しから消耗品の補充まで、裏方のすべてを一人で完璧にこなしてくれていました。
私や職人たちがモノづくりだけに集中できたのは、間違いなく彼女のおかげでした。
ですが、ご家族の介護という理由で、突然の退職。
引き継ぎ期間はわずか1ヶ月でした。
「大丈夫ですよ社長、伝票の場所と手順さえメモしておけば、なんとかなりますから」
去り際にそう言ってくれた彼女の言葉を、私は甘く見ていました。
「まあ、パソコン入力と書類整理くらい、俺でも隙間時間にできるだろう」
そう高をくくっていた自分を、今すぐ殴り倒してやりたい気持ちです。
彼女が長年の経験でサラリとこなしていた作業は、素人の私にとっては膨大な時間と神経を削る「底なし沼」だったのです。
経営者が「作業員」になった会社の末路
事務作業に忙殺されるようになってから、私の日常は一変しました。
昼間は社長として客先との商談や現場の納期管理に追われ、夕方から事務作業に着手。
毎晩22時、23時まで残業をする日が続き、睡眠時間は削られ、常に頭が重い状態が続いています。
社長が本来やるべき「新しい取引先の開拓」や「将来の投資」について考える余裕なんて、1秒もありません。
目先の書類を処理することだけに追われ、精神的にも追い詰められていきました。
そしてこのワンオペ事務のシワ寄せは、次第に工場の「現場」へと飛び火していくことになります。