いま、創業融資の相談に来られる方の多くが、事業計画書の下書きを生成AIで作っています。
先に申し上げておくと、それ自体はまったく悪いことではありません。白紙から書き始めるより、はるかに早く形になります。私も下ごしらえには使います。
問題は、そのまま出してしまうことです。審査する側は、AIで書いた文章をかなりの確率で見抜きます。どこで見抜かれるのかを整理しました。
■ 見抜かれるポイント
◆ 1. どの会社にも当てはまる文章になっている
「地域に密着し、お客様に寄り添ったサービスを提供します」
「高品質な商品を適正価格でご提供いたします」
AIが出す文章は、平均的で、破綻がなく、そして誰にでも当てはまります。審査する人は同じような書類を毎日読んでいるので、「これはこの人にしか書けない」という部分がないと、記憶に残りません。
会社名を別の会社に差し替えても成立する文章は、書かなかったのとほぼ同じです。
◆ 2. 数字と文章がつながっていない
これがいちばん多い失敗です。
本文には「初年度から黒字化を目指します」と書いてあるのに、数値計画では3ヶ月目まで赤字が続いている。「リピート率の高さが強み」と書いてあるのに、売上計画にリピート客の想定が一切入っていない。
AIは、あなたの数表を見ながら文章を書いているわけではありません。文章は文章として、数字は数字として、別々にきれいに作られます。審査で必ず突き合わせられるのは、この2つの整合性です。
◆ 3. 粒度が業界の実態と合っていない
飲食店なら原価率、美容室なら客単価と指名率、ジムなら継続率。その業界の人が必ず口にする数字があります。
AIは一般論としての数字は出せますが、「この立地でこの業態なら、この数字が現実的」という肌感覚は持っていません。結果として、もっともらしいけれど現場感のない数字が並びます。
面談で1つ突っ込まれると、そこから崩れます。
◆ 4. リスクが書かれていない
AIに計画書を書かせると、たいてい前向きな内容になります。うまくいく前提で、きれいに整った計画が出てきます。
しかし審査する側が見たいのは、「うまくいかなかったときに、この人はどうするつもりか」です。
想定より売上が出なかったらどうするのか。その場合でも返済は続けられるのか。ここが書かれていない計画書は、楽観的に見えます。
■ では、どう使えばいいか
使い方の順番を変えるだけで、かなり良くなります。
◆ 先に数字を作る
文章から書き始めないでください。売上の積み上げ、原価、人件費、家賃、返済額。数字を先に固めて、その数字を説明する文章として本文を書きます。
順番が逆だと、必ず2番目の不整合が起きます。
◆ AIには「削る側」をやらせる
書かせるのではなく、書いたものを点検させる使い方のほうが向いています。
・この文章で、具体的でない部分を指摘してください
・この売上計画の根拠として弱いところはどこですか
・審査する立場から、質問されそうな点を挙げてください
叩き台を作らせるより、自分が書いたものの穴を探させるほうが精度が出ます。
◆ 最後に、自分の言葉に書き直す
面談では、書いた内容を口頭で説明することになります。自分の言葉で書いていない文章は、聞かれたときに答えられません。
「ここ、もう少し詳しく教えてください」と言われて詰まる。これが、AIで書いたことが表に出る瞬間です。
■ 今日できること
いま手元に下書きがあるなら、1つだけ試してみてください。
会社名と業種を、まったく別のものに置き換えて読んでみる。それでも文章が成立してしまうなら、書き直しが必要です。
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